3被告人に死刑判決
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「大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件」の記事における「3被告人に死刑判決」の解説
2005年10月14日に控訴審判決公判が開かれ、名古屋高裁刑事第2部(川原誠裁判長)は第一審判決(被告人KMを死刑、KA・HM両被告人を無期懲役)を破棄し、KM・KA・HMの3被告人全員をいずれも検察側の求刑通り死刑に処す判決を言い渡した。少年事件で高裁が死刑を宣告した事例は1996年の東京高裁判決(市川一家4人殺害事件の控訴審判決 / 2001年に死刑確定)以来で、最高裁に資料が残る1966年以降では同一事件で事件当時少年だった複数の被告人に死刑が宣告された事例は初だった。 名古屋高裁は判決理由で、木曽川事件について「被害者Bの死因は厳密には断定できないが、硬膜下血腫による脳圧迫である可能性が最も高い。暴行により意識が低下し、外からの刺激に対しても緩慢・微弱な反応しかできないほど重篤な状態に陥っていた被害者Bを被告人らが堤防から約10 m以上下の河川敷まで落とし、さらに体を約10 m以上引きずって河川敷に放置した行為は明らかにその死期を一層早めるもので、その行為が殺人の実行行為性を有することは明らかだ」と認定し「検察官の『木曽川事件では3被告人全員に対し、作為犯としての殺人罪が成立する』とする事実誤認の論旨は理由があり、原判決はその点で全部の破棄を免れない」と結論付けた。その上で、各被告人の役割について以下のように事実認定した上で、「『永山基準』に照らしても3被告人の刑事責任はいずれもこの上なく重大で、死刑を選択することも誠にやむを得ないと言わざるを得ない」と結論付けた。 被告人KM - 「重大な結果を導く発端を作るなど終始主導的立場で、他の共犯者らを被害者4人の殺害に向かわせた。自らも積極的に激しい攻撃を執拗に加えるなどして犯行を強力に推進し、最も中心的で際立って重要な役割を果たしている」 被告人KA - 「3人の中では所属暴力団の中で最上位であった。その影響力を行使して被告人KMとともに主導的立場で犯行を推進するとともに、被害者らに激しい暴行を加えるなど実行行為にも積極的に加わった。木曽川・長良川事件においても事件全体を通じて極めて重要な役割を果たしており、その点ではKM・HM両被告人との間にはさほどの差異はない」 被告人HM - 「3人の中では所属暴力団における序列は最下位ではあったが、殺害の動機を形成するに至った暴行には自ら積極的に関与した。そしてKM・KA両被告人から被害者の殺害を暗に促されると躊躇うことなく賛成し、進んで殺害に着手したり、凶器を準備したりして殺害の早期実行を決め、率先して被害者への攻撃に出るなど犯行を強力に推進し、重要な役割を果たした」 土本武司・白鷗大学法科大学院教授(刑事法)は本判決について「少年法は18歳未満への死刑適用を禁じているが『18歳になったばかりだから死刑適用を控える』という判断は誤り。家裁が『刑事処分相当』として検察官へ逆送した以上は成人と同様に扱うべきで、本判決は妥当だ。本事件のように複数人が一体となって犯行に及んだ少年事件においては今後、本判決が量刑判断のモデルになるだろう」と評した一方、沢登俊雄・國學院大學名誉教授(刑事法)は「日本は1994年に少年への死刑適用を禁じた『北京規則』を前文に含む『児童の権利に関する条約』を批准しており、少年事件への死刑はこの精神に著しく反する。今後は(被告人側が上告した場合に)最高裁が北京規則の精神を尊重して死刑適用を縮減する方向を打ち出すことが望ましい』と指摘した。また『中日新聞』は判決翌日(2005年10月15日)の朝刊にて「少年犯罪への死刑適用や矯正の可能性、被害者遺族の心情などをめぐり国民一人一人が問いかけられる判決だ。犯罪の発生・矯正の実情や国民感情を踏まえて死刑や少年犯罪に対し、きめ細かい論議を続けたい」とする社説を掲載した。 3被告人は死刑を宣告されると動揺を見せた一方、被告人HMは退廷時に被害者遺族へ頭を下げた。一方で長良川事件で殺害された被害者Cの両親は判決後に「裁判所は実態をちゃんと見分けてくれた」と述べた一方、同様に犠牲になった被害者Dの兄は「極刑が下っても弟は帰ってこない。自分たちの苦しみ・悲しみは一生癒やされない。被告人らは『生きて償いたい』というが、殺された弟たちはもっと『生きたい』という思いが強かったはずだ」と話した。
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