高崎 - 長野間先行開業時の呼称
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「長野新幹線」の記事における「高崎 - 長野間先行開業時の呼称」の解説
1972年7月に公示された全国新幹線鉄道整備法(全幹法)第4条第1項に基づく「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」(昭和47年7月3日 運輸省告示第243号)において、東京都から長野市、富山市付近を経由して大阪市に至る新幹線の路線名が「北陸新幹線」と定められると、翌1973年11月に運輸大臣により決定された整備計画でも同じ名称が規定され、「北陸新幹線」が法令上の根拠を持つ名称となっていた。 その後、1989年に高崎 - 軽井沢間、次いで1991年に軽井沢 - 長野間がいずれもフル規格(標準軌新線)で着工され、1998年の長野オリンピックに向けて1997年秋の高崎 - 長野間の先行(部分)開業の方針が固まると、開業前年の1996年ごろから長野県内の経済界において、北陸地方まで行かず長野止まりで開業する北陸新幹線について「長野へ向かう新幹線と分かる通称の使用を(関係機関へ)働き掛ける」といった動きが見られた。 開業を半年後に控えた1997年4月、高崎 - 長野間の運行主体となるJR東日本の松田昌士社長は、同年3月の北越急行ほくほく線開業で東京から北陸地方への最短ルートが上越新幹線(越後湯沢駅)経由となったことを踏まえ、「(『北陸新幹線』の名称を使用すると)北陸方面に行きたい乗客には紛らわしくなる。『北陸新幹線』という正式名称は使えないのではないか」との認識を示し、原山清己JR東日本副社長も「北陸方面へ行くルートは別にあり(『北陸新幹線』の名称使用は)不適当だ」と述べ、JR東日本として「北陸新幹線」とは別の営業用の通称使用を検討していることを明らかにした。 これらのJR東日本の動向に対し、吉村午良長野県知事は「(乗客の)紛らわしさをなくすため、何らかの工夫は必要ではないか」としつつ、北陸各県と協力して新幹線建設を目指してきたこれまでの経緯を念頭に、「長野止まりを印象づけるような名前は困る」と述べ、JR東日本が言及する通称の使用には消極的な意向を示した。また北陸地方の沿線自治体からも、長野以北のフル規格での着工が決まっていない中で「北陸」の名称を外してしまうと、「『北陸新幹線は長野止まりでいい』という空気が広がり、新幹線の建設が長野で止まってしまう事態にもつながりかねない」として、「北陸」の名称を残すことを求める声が上がった。 こうした反応がある中、1997年7月25日にJR東日本は、新幹線「あさま」のダイヤ発表と同時に、路線名や案内呼称を以下のように扱うことを発表した。 北陸方面に向かう乗客の誤乗車防止のため、東京駅や上野駅、大宮駅など首都圏の駅構内掲示や列車時刻表では「長野行新幹線」の案内名称で表示し、原則として「北陸新幹線」の名称は使用しない。 駅構内放送および車内放送では「長野新幹線」を使用する。 安中榛名駅、軽井沢駅、佐久平駅、上田駅、長野駅の駅構内掲示では単に「新幹線」とする。 こうして1997年10月1日の開業を迎えたが、「長野行新幹線」の表記は、長野駅を含めた長野県内の複数駅の券売機の画面でも使用されたため、ほどなく長野県内の利用者から「(券売機の画面で、東京 - 高崎間で線路を共用する「上越新幹線」の表示もある中)東京へ行くきっぷを買うにはどこを触れればいいか分からない」などの不満の声が上がり、「長野行」表記の評判は芳しいものではなかった。そうした事情もあり、マスメディアでは車内放送等で用いられた「長野新幹線」の使用が広がり、定着していった。 そして翌1998年6月、JR東日本はマスメディアなどで「長野新幹線」の呼称が定着した状況を追認する形で、1998年6月号の時刻表から「長野行新幹線」の表記を「長野新幹線」に変更し、JRグループが出資する弘済出版社(現交通新聞社)の『JR時刻表』や日本交通公社出版事業局(現JTBパブリッシング)の『JTB時刻表』も、同年6月号から目次や索引地図で「長野行新幹線(北陸新幹線)」としていたのを「長野新幹線(北陸新幹線)」へ、ダイヤ部分の表記も「長野行新幹線」から「長野新幹線」に変更した。 その後、東京駅など首都圏の一部駅の構内掲示の「長野行新幹線」も徐々に姿を消し、構内掲示も含めて全面的に「長野新幹線」が用いられるようになった。また、時刻表の索引地図等で「長野新幹線(北陸新幹線)」と併記されていたのも、2002年ごろから「(北陸新幹線)」の表記がなくなり、「長野新幹線」単独で表記されるようになった。
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