電気料金をめぐる政策議論
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「電気料金」の記事における「電気料金をめぐる政策議論」の解説
電気料金をめぐる議論では、近年の急激な電気料金の上昇がほとんど中心的な地位を占めている。その原因は、多くの場合、再エネ法(ドイツ語版)による再生可能エネルギーの促進にあると見られている。再エネ賦課金は、今のところ電気料金の14.2%を占める。近年の料金上昇は、発電・送配電コスト、企業の利益、それと同様に電気税や売上税によって生じている(図表「ドイツにおける3人世帯の平均的電気料金」を参照)。他方では、再生可能エネルギーは、電気取引市場におけるいわゆるメリットオーダー効果によって、価格が減少するという結果も生じている。フラウンホーファー・システム・イノベーション研究所(ドイツ語版)の研究によると、再生エネルギーからの電力は、2010年には取引市場価格でおよそ5 ct/kWhの価格抑制が生じた。これは合計で28億ユーロの減額に相当する。電力を使う産業部門は、再エネ賦課金(ドイツ語版)をほとんど払っていないが、取引市場の価格が低下すると利益になるので、エネルギー転換(ドイツ語版)によって経済的な利益を得ている。産業分野の電気料金は、2011年には4年前と同じ水準にまで下落した。 この議論では、以下のような様々な意見が見られる。 そもそも電気料金は、それほど上昇していない。連邦政府のモニタリングポストの専門委員会は2012年に次のことを確認している。「2011年までの電気料金の上昇は、収集した見地のなかでは、世間でよく言われているほど劇的には進まなかった。名目上の国内総生産に使う電気代の割合は、2011年には2.5%であり、これは1991年と同水準である」。 料金が上昇したのは、再エネの促進が原因ではなく、政策、取引市場の仕組み、現行の再エネ法が原因である。ドイツ再生可能エネルギー連盟(ドイツ語版)によると、再生可能エネルギーの推進によって上昇したコストのほとんどは、再エネの促進によって直接起こったのではなく、産業界への例外規定が拡大していること、取引市場価格の低下(取引市場で再生可能エネルギーが価格を下げた瞬間に、自動的に再エネ賦課金は上昇する。なぜなら、再エネ電力に必要な支出と再エネ電力の売却で設けた収入との差を埋めなければならないからである)、ならびに市場の新たなプレミアム価格(オプション価格)と流動性準備金が原因である。再エネ部門の代表者たちは、再生可能エネルギーがもつ取引市場での価格抑制効果を指摘すると同時に、再生可能エネルギーは、特に産業用では電力価格を顕著に上げることはないであろうことを論じている。正味産業部門は、メリットオーダー効果と再エネ促進の例外規定によって著しく軽減されている。さらに、電力集約型の産業は、2011年の初めに遡って、電線使用料金を免除されており、それによって2013年にはおよそ8億ユーロを他の消費者が支払わなければならなくなる。 料金上昇は、大電力会社が家庭の消費者に押し付けたため。同盟90/緑の党の統一会派は、電力コンツェルンの価格上昇は、発電コストや再エネ促進費用を正確に後追いできない顧客たちに負担を押し付けて得た不当な収入であるとして批判している。他にも同盟90/緑の党は専門家の判定をあげている。緑の党は、一般消費者の負担を押しつけていることを批判し、再生可能エネルギー法(ドイツ語版)の改正を要求している。 電気料金をあげているのは電力事業者ではなく、国家(税や賦課金)である。ドイツ連邦エネルギー・水道事業連盟(ドイツ語版)の説明によると、電力事業者は、顧客獲得の厳しい競争にさらされており、「勝手に高すぎる料金を請求することなどできない」。BDEW(ドイツ語版)は再生可能エネルギーを目指して国家の負担が増大していることについて責任をもつような政策を求めている。BDEWの主張によると、2013年の初めに家庭の電気料金に含まれる税と賦課金・課徴金の割合は50%増大する。その根拠は、特に再エネ賦課金が上昇すること、および電線使用料が国家の決定で増大することにある 産業空洞化は起こるか、起こらないか。シンクタンクの新しい社会的市場経済のイニシアチブ(ドイツ語版)は「ドイツの産業空洞化」を懸念しており、特にアルミニウム産業や紙産業のように電力集約型の部門が海外に移転する可能性があると指摘している。NGO団体のコンパクト(ドイツ語版)は、対抗キャンペーンを行い、工業企業の膨大な例外規定や取引市場での電気料金の低下を考慮するように指摘している。例えばアルミニウム製造業者のノルスクハイドロは、ドイツの発電コストが安いので、生産量を3倍にすると発表した。 再エネによる料金上昇というのは誇張。ドイツ経済研究所(ドイツ語版)(DIW)は、2012年春季に行った研究で、価格の上昇と低下には様々な要因があるので、エネルギー転換で電気料金が上昇しているという警告は誇張されているとしている。 電気料金上昇で多くの家庭が困っている。消費センター(ドイツ語版)は、電気料金の上昇にさらされているのは、いつも貧しい家庭であると批判している。2010年には300万人以上もの人が支払の催促を受けた。34万世帯は、電気を止められそうになり、6万2千人の顧客が電気を本当に電気を止められた。平均15%の電気とガスの価格上昇は、多くの家庭にとって、エネルギーを「支払えない商品にさせている」。 マーケットの料金は下がっているのに、実際の電気料金は上がっている。ドイツの環境大臣であるペーター・アルトマイヤーは、2012年11月に、ドイツでおよそ12%の価格上昇が予定されていることには、正当化できない部分があると批判している。「多くの電力供給者は、明らかに再エネ賦課金の上昇以上に、料金をあげています。[...]この上昇を理解するのは難しいでしょう。なぜなら、去年から取引市場での価格は広範囲にわたって低下しているからです」。
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