開発・量産・調達
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 07:08 UTC 版)
兵器の開発や製造は、兵器企業や軍需企業などと呼ばれる企業が行う。 「軍需産業」および「世界の軍事企業の売上高ランキング」も参照 運営形態としては国営企業の場合も、民間企業の場合も、それらの中間的な性質の企業の場合もありうる。兵器を開発・生産する企業といっても、兵器ばかりを開発・製造している企業もありはするが、一方で、民生品を開発・製造している会社がその一部門で兵器製造を行っている場合もある(生産の品目数では民生品が多いが、利益の大部分は兵器製造で得ている、という企業もある)。 まず大前提として、自国生産するか、輸入するか、中間的な方法を選ぶか、という選択肢がある。求める兵器の開発が自国単独の技術力で可能か否かが重要な要素であり、自国単独で開発できない場合は、そもそも他の選択肢を選ばざるを得ない。また自国で開発・生産できる場合でも、それで得られる兵器の性能も考慮される。兵器を自国生産できることは他国への依存度を減らし政治的な強みにはなるが、その自国生産の兵器の性能が低いのなら、軍事力が低下することになる。仮想敵国の兵器よりも強力な兵器を得るためには、自国生産をあきらめ、性能の良い兵器を輸入せざるを得ない場合もある。兵器を輸入する場合は、その輸入先の国や企業に依存することになるのでそれの負の面も考慮されることになるが、輸入によって二国間の経済関係が強化される政治面なども含めて、総合的に判断されることは多い。また近年の兵器はシステム化されているので、システム全体の整合性や相性なども考慮しなければならない。 国内での独自開発が難しい場合、次のような選択肢がある。 外国から兵器そのもの(完成品)を購入 他国との共同開発 製造技術の購入 ノックダウン生産やライセンス生産 他国の技術を購入してこれを改良 外国製兵器の模造(一部の国) 国内メーカーの技術育成を重視する場合、兵器そのもの(完成品)の購入を避け、他の選択肢を選ぶ努力をすることになる。 兵器を他国から購入する場合、その国に依存する立場になる、ということも考慮しなければならない。兵器の主要部品を他国から輸入する場合、何らかの事情でその入手が困難になった場合に、製造不能になってしまったり、保守整備や修理などに支障が出るリスクの大きさを見積もる必要がある。近年では集積回路を多用しており、ひとつひとつの兵器に焦点を当てるとその部品として使われる特定の(特定の型番の)集積回路が入手不能になるだけで、その兵器が製造不能、保守・整備不能 という状況に陥りかねず、安全保障上の大きな懸念材料になっている。 総コスト削減のための工夫 近年は電子機器類の多用などから、兵器の開発・製造コストが高騰する傾向にある。この為、F-35の開発の様に、ほぼ同一の機体構造を用いながら様々な派生タイプの機体を開発する統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画や、NATOのように軍事同盟を結び、一国では賄いきれない兵器コストを相互に補完しあう ことで削減する試みも行なわれている。陸軍・海軍・空軍に分かれていた兵器も、20世紀末からはミサイルやレーダーといった技術から相互の共通化が顕著になり、21世紀には当初から2軍で共通する兵器開発が行なわれることが珍しくなくなっている。 たとえば、戦闘機のユーロファイター タイフーンはイギリス、ドイツ(計画開始当時は西ドイツ)、イタリア、スペインの4ヶ国が共同開発し、組み立てについても各国の分業体制で行っている。 たとえばF-35は、アメリカ合衆国の航空機メーカー、ロッキード・マーティンが中心となって開発されたが、その後統合打撃戦闘機計画に基づき、アメリカやイギリスなどが共同でF-35ライトニングを開発。F/A-18ホーネットの後継として、基本型の通常離着陸機(CTOL)、艦載機(CV)、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)という3つの派生型を開発、製造を目指している。 たとえば大韓民国陸軍のK1戦車については、戦車開発の経験が無かったため、クライスラー・ディフェンス社(後のジェネラル・ダイナミクス社)が設計・開発を担当し、生産を韓国の現代車輌社(現代精密、後の現代ロテム)が担当した。
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