開発過程・構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 03:55 UTC 版)
「ブレダM30軽機関銃」の記事における「開発過程・構造」の解説
イタリア軍の機関銃やその他の兵器の開発で有名になったブレダ社は、兵士が携帯できる軽機関銃の開発を進め、ブレダ9Cという試作銃で競作に勝利した。そして、9Cの改良型として本銃を1930年に完成させた。本銃の主な特徴としては、アンバランスな外見・小さな銃身交換用ハンドル・クローズドボルト状態から射撃が行われる・反動利用ショートリコイル方式・機関部右側に固定弾倉を有するなど。 本銃の機関部右側にはフレーム形状の固定弾倉を着脱でき、弾倉は運搬・保管の際には銃から取り外される。弾倉の入り口には弾薬を整列させるためのマガジンリップが設けられておらず、銃の給弾口内部にマガジンリップの機能を果たす加工が施されている。銃側の弾倉ガイドは、弾倉を取り外した際に給弾口を塞ぐ防塵カバーを兼用している。給弾口(弾倉)の後ろにはコッキングハンドルが設けられ、後退させた位置で手動固定するホールドオープン機能を持つ。このホールドオープン機能は銃身交換のほか、射撃直後の銃身内腔に空気を通して冷却するのにも用いられる。機関部の左下には排莢口があり、手動で前後にスライドさせて開閉できる防塵カバーを備えている。 機関部の左前方には銃身固定用のピンがある。遊底を引いて後退位置で固定しておき、板バネで保持されている銃身固定ピンを外して固定を解いた状態で、銃身の小ハンドルをつかんでやや反時計方向に回転させれば、銃身を抜き取ることができる。新しい銃身を装着するためには、この逆の手順で組み付けを行う。 給弾要領は、まず銃に装着した弾倉側面のマガジンフォロワーのレバーを装填位置にまで引き、フォロワーのスプリングを圧縮する。弾倉を前方に半回転させて開いて、銃右側面にラッチで固定する。20発の弾薬を収めた挿弾子(真鍮ないし鉄製)を弾倉に挿入して引き抜くと、弾薬だけが弾倉内に保持される。そして、固定ラッチを外して弾倉を元に戻せばフォロワーのストッパーが外れて弾を送れる状態になる、という手間のかかる仕組みだった。次いでコッキングハンドルを後端まで引き、前端まで戻せば、遊底が初弾を薬室へ送り込んで全装填状態となり、撃針が後退位置で保持され射撃準備が完了する。マガジンフォロワーのレバーを引かずに弾倉を開こうとすると、フォロワーのスプリングが変形して給弾不良の原因になり、ひどい場合はフォロワー自体が破損して使用不能になるおそれがあったが、それを防ぐための安全装置はなく、対策は手順を必ず遵守させるべく猛訓練を行うこと以外になかった。 作動は基本的にブローバックだが、通常と異なり銃身は固定されていない。銃身の後端は別部品のスリーブに挿入されている。スリーブは前方で銃身後端のラグ、同じく後方で遊底前端のラグとそれぞれ噛み合い、銃身と前進した遊底とを結合させる役割を果たす。ブローバックでは反動に耐えられなかったためと思われるが、最初は銃身・スリーブ・遊底を一体となった状態で後退させ、スリーブが銃側ガイドの働きで小回転して遊底ラグとの結合を解き、遊底が銃身・スリーブから離れて排莢・再装填を行うという、少々乱暴な遅延機構を持つ。この過程で回転するのはスリーブだけで、銃身と遊底は前後に直線運動を行う。一見してショートリコイルに類似するが、ロッキングが行われていないことからブローバックに分類される。この作動方式はフィアット レベリM1914重機関銃と同じものであるが、本銃固有の欠点として、銃身とレシーバーの組み付け寸法公差を構造上大きくせざるを得ないことが挙げられる。このため、前後動に伴って銃身がぶれてしまい、銃手が銃を正しく保持していたとしても、また、低い発射速度で銃自体のコントロールは容易であったにもかかわらず、集弾性能は非常に悪かった。さらに照準器をいったん調整した状態であっても、銃身を交換すると弾道が変わってしまうため、照準規正をやり直す必要があった。 作動方式そのものはいいかげんなりにシンプルであるが、部品点数は多く、部品の強度や耐久性も不足気味で、開口部や溝が多いこともあいまって砂や埃を巻き込みやすく、機関部の故障が多かった。射撃後の空薬莢を薬室から引き出しやすくするため、機関部のカバーには弾薬に塗油する機構が備わっていた。当時の機関銃は一般的であった弾薬への注油機構は、第二次世界大戦におけるイタリア軍の主戦場だった砂漠で砂塵を機関部に巻き込む原因となり動作不良を引き起こした。 発射速度も当時の他国の軽機関銃に比べると非常に遅いうえ、空冷式機関銃の常として、ある程度使用すると銃身を交換する必要があるが、材質が劣っていたために耐久性が低く、交換の頻度は他国の軽機関銃に比べて多いものだった。銃身交換のための小さな取っ手が装着されているが、銃自体にはキャリングハンドルと呼べるようなものは付属せず、特に射撃直後の熱くなっている銃を携行するのは不便であった。予備銃身は本銃1挺当たり2ないし3本が支給された。
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