逃亡・D事件で逮捕
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 03:12 UTC 版)
「広島タクシー運転手連続殺人事件」の記事における「逃亡・D事件で逮捕」の解説
Hは犯行を重ねるにつれて次第に金を奪うことよりも殺人への快楽に惹かれるようになり、一連の連続殺人は事件を重ねるごとに間隔が短くなっていたが、4人目の被害者(女性D)の遺体発見が事件解決のきっかけになった。Dの遺体が確認された直後に「14日1時ごろ、被害者Dが遺体発見現場付近(かつHの自宅付近)でHと一緒にいた」という目撃証言が捜査本部に提供されたほか、ホテルへの聞き込み捜査の結果により「被害者Dは14日未明に(事件2, 3年前から親しくしていた知人である)Hとともに佐伯区内のホテルに投宿していたこと」「2人はその後、Hのタクシーでホテルを出ていたこと」が判明した。広島県警廿日市署捜査本部は以下の点からD殺害を被疑者Hの犯行と断定し、1996年9月18日に殺人・死体遺棄容疑で被疑者Hの逮捕状を請求した。 「被害者Dの死亡推定時刻(4時ごろ) - 遺体発見時刻(7時ごろ)が近接しており、遺体発見現場はH宅から直線距離約5 kmにある。また遺体は服装の乱れが少なかったため『被害者Dは土地勘のある人物により、発見現場付近の車内で殺害された』と推測できる点」 「被害者Dが行方不明になる直前に知人のHに会っていた点」 「被疑者Hは遺体発見現場周辺の状況に詳しいとみられる一方、事件後に行方が分からなくなっている点」 一方でHはD事件発覚翌日(1996年9月15日)にも広島市内などで乗務していたが、捜査が間近に迫ったことを察知し、1996年9月16日には九州方面への逃走を開始した。Hはその後帰宅せず勤務先のタクシー会社にも連絡を入れなくなり、逃亡翌日(1996年9月17日)にはタクシー会社から解雇された。 一方で捜査本部はD事件発覚から1週間となる1996年9月20日までに「(県外を含め)被疑者Hが立ち回る可能性のある場所」の特定を急ぐとともに、被害者DがHと接触するまでの行動や「D・Hには互いに面識があったか否か」などの点について詰めの捜査を行っていた。Hは出身地の九州各地を転々とした後、20日にいったん広島市内の自宅へ帰ろうとしたが、そこで警察官が張り込みをしていたために断念して再び九州への逃亡を目論み、同日夜に広島市中区幟町の路上で盗んだ乗用車により逃亡しようとした。しかし1996年9月21日早朝4時30分ごろに山口県防府市富海の国道2号で乗用車を運転していたところ、山口県警察が実施していた交通検問を無視して強行突破しようとしたため、検問に当たっていた防府警察署員から約10 km追跡され、行き止まりまで追い詰められた末に防府署まで任意同行させられた。その後、車が同日未明に盗まれた盗難車であることが判明したため、被疑者Hは5時25分ごろに窃盗容疑で防府署に逮捕された。この逮捕後、被疑者Hは妻と離婚した。 1996年9月21日、被疑者Hが広島県警廿日市署捜査本部によるD事件の取り調べに対し「被害者Dとは2, 3年前から知り合いだった。金銭上トラブルから遺体遺棄現場付近で首を絞めて殺した」と供述したため、捜査本部は同日11時過ぎに被疑者Hを被害者D殺害事件における殺人・死体遺棄容疑で逮捕し、身柄を廿日市署へ移送した。廿日市署は同月23日に被疑者Hを殺人・死体遺棄容疑で広島地方検察庁へ送検したまた前述のようにHはD事件後(9月15日)にタクシー後部座席の乗客用シーツを外して自宅に持ち帰っていたほか、Dの遺体の顔には血液の付着した傷があったため、捜査本部は「Hは後部座席でDを絞殺したが、その際にシーツに血痕が付着したため、それを隠そうとした」と推測した。 一方でHはD事件の取り調べを受けていたところ、捜査員に対し自ら「D事件とは関係ない地名・日時」を口に出したため、捜査員がその言葉について追及すると次第に話の辻褄が合わなくなり、さらにその点を追及されたHは新たに別の被害者女性3人の殺害を自供した。この点について捜査本部は「Hは短期間に犯行を重ねたため、場所・時間の記憶が混乱して証言に矛盾をきたした」と推測したほか、Hは後に検察官から取り調べを受けた際に(この時点でまだ遺体が発見されていなかった)B・C両被害者の遺体遺棄現場などを自供した理由について「刑事から『他に隠していることはないか?』と訊かれたので『警察は既に遺体の在処を把握している。自分の情状のために自分から言うのを待っているのだろう』と思ったが、(被害者が)4人になることを話すのはあまりにもセンセーショナルなので、自分なりに自供する時期について迷った」と供述していた。被告人Hの供述が結果的に早期の事件解決のきっかけとなったが、本事件を取材した作家・祝康成(現:永瀬隼介)は「この動機は被告人Hの何ともお粗末な勘違いだ。被告人Hの『卑しい自己本位の性根』が透けて見える言葉だ」と非難している。
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