近世参詣記とは? わかりやすく解説

近世参詣記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 04:39 UTC 版)

小辺路」の記事における「近世参詣記」の解説

17世紀後半以降近世になると畿内近国町人たちによる参詣記見られ小辺路の詳しい様子を知ることができるようになるまた、東国からの参詣者たちも伊勢熊野への参詣の後、高野山畿内へ向かう短絡経路として小辺路をしばしば通行した。小辺路要所設けられ宿屋茶店道標といった交通遺跡設けられたのも近世のことであり、重要な交通路であったことがわかる。 河内国丹北郡向井村大阪府松原市)の庄屋談林派俳人でもあった寺内 は『熊野案内記』(以下、『案内記』)と題する紀行文残している。安天和2年1682年)、友人3、4とともに高野山から小辺路経て熊野三山参詣し那智からは大辺路経由西国三十三所札所紀三井寺から葛井寺まで)を巡拝して帰郷している。『案内記』は俳句狂歌挿絵交えた案内記となっている。松尾芭蕉門人である河合曾良元禄4年1691年)の3月から7月下旬まで4か月近くわたって近畿各地巡遊した際に、小辺路通行し高野山から本宮参詣果たしている。曾良旅行記近畿巡遊日記によれば4月9日高野山上り大又大股)・長井永井)に宿をとり、翌々日4月11日には本宮到達している。 18世紀以降には、大坂高麗橋付近に住む氏名不詳商人による元文3年1738年)の『熊野めぐり』(以下、『めぐり』と略記)、伊丹酒造家、八尾八佐衛門家人 による延享4年1747年)の『三熊野参詣道中日記』(以下、『道中日記』と略記)などが見られる。『めぐり』の商人たち5月14日大坂出立し高野山から小辺路をへて熊野入り本宮新宮那智巡拝し中辺路通って大坂帰着している。『めぐり』の著者道中風物について詳しく行き届いた記述残しており、沿道事物有り様あざやかに浮かび上がらせている。『道中日記』の著者3月29日友人2人駕籠屋2人一行伊丹発ち、『めぐり』と同じルートたどっている。4月3日高野山着き4日後の7日本宮次いで新宮那智立ち寄った後、11日に再び本宮13日紀伊田辺19日伊丹戻っている。『道中日記』は、「内容豊富で、異色富み、とくに民俗関係資料見るべきものが少なくない」 点で際立ったもので、その人学的な視線向けよう興味深い東国からの参詣者による参詣記の例として、会津南山上小屋(福島県南会津郡南会津町)の木地屋大和屋一行による『伊勢参宮道中記』がある。大和屋一行嘉永3年1850年正月会津発ち伊勢参宮経て2月9日新宮着いて熊野速玉大社参詣し、翌10日には熊野那智大社参詣してすぐに大雲取越え越えて小口に宿をとり、11日本宮着いている。翌日熊野本宮大社参詣したのち果無峠越え矢倉大股に宿をとって、14日午前中に高野山着いている。 東国からの参詣者はその言葉遣い服装特色があることから、熊野を含む紀南地方では「関東ベエ」「奥州ベエ」と呼ばれた。彼らのほとんどにとっては一生に一度の旅であり、大坂京都・奈良などを訪ねて各地名所旧跡を巡るため、しばしば小辺路北上して旅程短縮図ったのである関東ベエ奥州ベエたちは、秋の収穫済ませてから旅立ったため小辺路通行する頃にはすっかり厳冬期にはいっており、しばしば「三尺積もった峠を平気で越えて小屋大股水ヶ峯宿屋泊まった」。大和屋参詣記に、新宮那智牛王宝印授かり本宮熊野講もちをついた とあるように、こうした参詣風俗関東ベエ奥州ベエ特徴的なものだった。彼らは牛王宝印を「御札もじばん」と呼び護符として珍重したため、熊野参詣の際には欠かせないものであったまた、熊野講もちとは宿や宿坊使って数人もちをつく習俗をいい、関東ベエ奥州ベエ故郷組織していた熊野講の習慣持ち込まれたものである考えられている。

※この「近世参詣記」の解説は、「小辺路」の解説の一部です。
「近世参詣記」を含む「小辺路」の記事については、「小辺路」の概要を参照ください。

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