起源と定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 03:12 UTC 版)
ウーズルは、A・A・ミルンの1926年の著書『クマのプーさん』の第3章「プーとピグレットがウーズルをつかまえそうになる」に登場するキャラクターである。この物語は、雪についた足跡を、空想上の動物「ウーズル」のものであると信じたプーとピグレットが、その跡をたどり始め、最終的には、クリストファー・ロビンが木の周囲を旋回する自分たちの足跡を辿っていると指摘するまで、増え続ける痕跡を追い続けるという内容である。 現象の潜在的な研究は「ウーズル効果」という名称が導入される60年以上前に遡る。ウィリアム・ベヴァンは1953年の著書で「科学的ウーズル狩り (scientific woozle hunters) 」という言葉を用いて、心理学分野における科学的方法論と研究の誤りについて記している。ヨアヒム・ヴォールヴィルは、1963年の論文で社会科学研究における「ウーズル狩り」について言及し、ジョーン・スティーブンスは、1971年の論文で、間違って引用された手紙の研究において、読者に対しウーズルへの注意を促している。 リチャード・ゲレス(英語版)は、ウーズル効果という用語は、1979年のビバリー・ホートンの研究レビューに起源があるとしているが、1980年のゲレスの論文や、1988年のゲレスとマレー・ストラウス(英語版)の共著書に帰属させる研究者もいる。ゲレスとストラウスは、ウーズル効果は、社会科学に見られるバイアスの一種であり、個人や世間一般の認識、アカデミー、政策立案、または政府に、複合的な誤りを生じさせる要因であると述べている。また、ウーズルは、証拠の裏付けのない研究についての主張にも影響する。ドナルド・ダットンは、ウーズル効果、または、ウーズルは、証拠のない発表済の文献が、頻繁に引用されることにより、個人、団体、または社会一般において根拠があると誤解させた場合に発生し、事実でないことが都市伝説やファクトイドに変容すると述べている。また、ウーズル効果の多くは、限定的な表現(…の可能性がある、ひょっとすると…あり得る、確証は全くないが…かもしれない)を断定的な表現(…である)に変化させ、言葉を強化し、原著作者や証拠による裏付けを取らないままに、自らの意見や見解を取り入れることと関連して起こると主張している。 ダットンは、ウーズル効果を確証バイアスの一例であるとの見解を示し、信念固執(英語版)と集団思考に関連させている。社会科学においては、実証研究は、客観的な測定ではなく、経験に基づいた報告を根拠に行う可能性もあることから、研究者が予測に合わせるよう証拠を調整することも考えられる。ダットンは、社会科学の研究は、現代の見識や社会的正義に基づく理想と合致することもあることから、その理想を支持するようなバイアスが発生する可能性があると論じている。アイリーン・ギャンブリルは、2012年の著書でウーズル効果を疑似科学の発生プロセスに関連させている。また、ギャンブリルは、2011年のアマンダ・ライマンとの共著論文で、巧妙なプロパガンダ手法とも関連させており、「誰もが知っている」「明白な」「疑いようのない」「皆が認めている」という導入フレーズを特定して、ウーズルの論法が使われる可能性に警鐘を鳴らした。
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