議員としての功績
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「オリバー・エルスワース」の記事における「議員としての功績」の解説
エルスワースは、ウィリアム・サミュエル・ジョンソンと共に、新しい連邦政府でコネチカット州選出の初代アメリカ合衆国上院議員を務め、その任期は1789年から1796年までだった。この期間の上院で、その後の数十年間における多数派指導者の役割に匹敵する大きな役割を演じた。ジョン・アダムズに拠れば、エルスワースは「ワシントンの全任期中、上院における確固たる柱」だった。アーロン・バーは、もしエルスワースが名前に「d」が2つあるスペルを誤ったならば、「この上院議員は余分な文字を消すために3週間かかるだろう」とぼやいた。ペンシルベニア州選出の民主共和党上院議員ウィリアム・マクレーは、さらに敵対的な評価をして「彼は何事も絶対的に話す。彼の作文に原則のかけらがあるとは信じられない」し、「私が以前からそのような能力を持っていると知っている男の中で最も不誠実なものだと真実言い切ることができる」と言った。マクレーを最も煩わせたと考えられることは、エルスワースが公的な議論よりも暗黙の了解のために個人的な交渉を強調したことだった。重要なことは、上院が開設されて最初の5年間、公式の上院議事録が無いことであり、傍聴人を置くという規定もなかった。このような手配は1787年の憲法制定会議と基本的に同じであり、下院の公開された議事とはよい対照だった。 エルスワースの最初の提出法案が司法権法であり、上院法案第1号ともなり、州と連邦の裁判所を階層的に配置することで憲法第3条を実質的に補った。数年後にマディソンは「立法府を組織化するこの法案がエルスワースの草稿に発するものであり、実質的にその成立で法になっても、何も変わっていないことは確実とみてよい」と言った。エルスワース自身は司法権法の最も重要な要素である第25節を書いたと考えられる。このことで連邦最高裁判所に、州の最高裁判所がアメリカ合衆国憲法と矛盾する法を支持する判決を下したとしても、これを拒否する権限を与えた。州の最高裁判所で認められたあらゆる州や地方の法律は、連邦最高裁判所に上訴することができ、連邦最高裁判所が選択すれば、違憲だとしてそれを否定できる権限を与えられた。州の最高裁判所で認められなかった州や地方の法律は、この方法で上訴することはできず、これら裁判所で認められた法律のみが上訴することができた。この一見謙虚な規定は、当時としては州政府に対して連邦政府に唯一の実質的優越権を与えた。実際に司法審査権は、マディソンが連邦主権を保証するために憲法制定会議で4度提案してすべて失敗した議会審査権に取って代わった。連邦政府にこの大きな権限を認めることは、その潜在的な悪用が後に州における批准会議で合衆国憲法の否決理由になりうるために、明白に否決されていた。前年にこれら州の批准会議が終わっていたので、エルスワースは、議会審査権の代わりに司法審査権を通じて連邦政府の主権を防衛できる立場にいた。 司法権法が上院で可決されると、下院でマディソンが推進した権利章典の上院における承認を推進した。重要なことは、これと同時にマディソンが下院で司法権法を提案したことだった。司法権法と権利章典を組み合わせることで、合衆国憲法は連合規約から抜け落ちていた「歯」を備えた。司法審査権は連邦政府の主権を保証し、一方権利章典は連邦政府によるこの主権の悪用から州と市民の保護を保証した。司法権法と権利章典は互いにバランスを取り合い、互いの行き過ぎを戒めることを保証した。しかし、75年後の1865年、憲法修正第14条の成立により、権利章典はあらゆるレベルの政府において最高裁に最終上訴することで司法府によって解釈されると理解されるようになった。言わずもがなのことであるが、このことはマディソンやエルスワースが当初から意図したことでは無かった。 エルスワースは上院におけるハミルトンの経済計画の主要推進者であり、少なくとも予算問題を扱う4つの委員会に出席した。これらの問題にはハミルトンが立案した国債の予算化、合衆国第1銀行の設立、および州債が南部に首都(今日のコロンビア特別区)を移すことの見返りだという取引が含まれていた。エルスワースの他の功績には、ノースカロライナ州を合衆国に加盟させる手段を案じたこと、ロードアイランド州を合衆国に加盟させた通商停止法案の案出、および領事職を規制する法案の作成がある。またジョージ・ワシントン大統領を説得してジョン・ジェイをイギリスに派遣し、1794年のジェイ条約交渉を行わせることで主要な役割を演じた。ジェイ条約はイギリスとの戦争を避け、2国間の負債問題を片付け、アメリカ人開拓者が中西部に進出する道を開いた。
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