神話の直解主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/29 04:36 UTC 版)
「ゼカリア・シッチン」の記事における「神話の直解主義」の解説
歴史家のピーター・ジェームズ(Peter James)は、シッチンがメソポタミア外の世界を無視しており、さらにはバビロニアの文学を誤解しているとして、以下のように彼を批判している。 「 彼は、創世記叙事詩エヌマ・エリシュを彼自身の宇宙創成論(cosmogony)の基礎として用いている。その中でマルドゥク神は、知られざる第12番目の惑星そのものとして描かれており、古い神々の秩序を覆し地球を創造したとされている。この説明とするため彼は、バビロニアの神々の系譜は、他の11の惑星誕生の事実を説明しているものであると、曲解して翻訳している。なかでも、惑星を表すバビロニア語の名前の解釈のしかたは、「疑いがある」といったレベルを通り越している。ネルガルは火星、そしてマルドゥクは木星というように。そして何百もの天文学・占星術の表、粘土板の論文、ヘレニズム時代のパピルス写本が「確認」されている。 シッチンは私の指摘点を都合よく無視し、神話に示された神の名前を、認められてもいないような惑星に対応させている。例えば、アプスーは原初の水を司る神を示すが、シッチンは太陽と言っている。エンキは海王星に対応させられ、時には宇宙人にもなっている。 また、女神イシュタルが金星を表すのはメソポタミアの信仰の核心といえるが、シッチンの書物にはどこにも出てこない。それどころかエヌマ・エリシュに登場する他の神を恣意的に金星に対応させ、イシュタルは女性宇宙飛行士の役割となっている。 」 また、ウィリアム・アーウィン・トンプソン(William Irwin Thompson)は、シッチンの字義解釈について、次のようにコメントしている。 シッチンは、自分自身の理論で必要なものを見ているにすぎない。だから42ページの図15は放射線治療であり、136ページの図71はロケットの形をしている部屋の中の神となる。 これらの図像が神々というならば、なぜその神々はロケット、マイク、宇宙服、放射線治療といったB級映画の科学技術レベルにとどまっているのだろうか。なぜ神々は、次元間のワームホール移動、反重力、恒星光のロケット推進力への変換、ブラックホールのエネルギーの再物質化といった、真に神的な技術を持てないのだろうか。 シッチンは一見もっともらしい議論を構築しているかに見える。しかし実のところ、ようやく苦心して古代の石板の一つの図像にたどり着いても、「これは神々がロケットの中にいる図だ」というような直解的な解釈によって、正味の知識としては逆戻りしてしまっているのだ。これでは、古代シュメールも、突然「月世界征服」のような映画のセットとなったようなものだ。同様な問題は、スイスのエーリッヒ・フォン・デニケンの映画「未来の記憶」にもある。ペルーのナスカの地上絵が第二次世界大戦期の滑走路になるのだ。 神々は銀河間を往来することができるが、ペルーにやってきた時には、その宇宙船は、広大な滑走路を必要とする第二次世界大戦期のプロペラ飛行機のようなものだと想像されていた。このような解釈はバカげているが、シッチンのような人物が「これらは疑い無く…である」と言う時には別のようである。
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