磨製石斧とは? わかりやすく解説

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磨製石斧

読み方:マセイセキフ(maseisekifu)

打製石斧大し全面磨きあげた片刃両刀石斧総称


磨製石斧

主名称: 磨製石斧
指定番号 435
枝番 00
指定年月日 1988.06.06(昭和63.06.06)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 考古資料
ト書 秋田県雄勝郡東成瀬村田子内字上掵出土
員数 4箇
時代区分 縄文
年代
検索年代
解説文: 遺品は、昭和四十年、農道工事の際に出土した一括である。出土地最上川の一支流成瀬川面した南向き段丘上で石斧地表下約五〇センチのところから四箇がほぼ一箇所まとまった状態で発見されたと伝えられている。
 四箇石斧は、いずれも良質な緑色凝灰岩素材とし、いわゆる擦切技法作られるが、既存の擦切磨製石斧に比べて群を抜く大形品であること、しかもそれらが一括埋納の可能性を持つことに特徴がある。伴出遺物等を欠く今、本石斧の所属時期明確に決め難いが、出土地周辺には縄文時代前期中心とした遺物広く散布し、また石斧の製作技法通常の擦切磨製石斧と成形研磨技法共通することから、おおむね縄文時代前期前葉から中葉考えることができる。
 このような大形石斧類例は、韓国新石器時代に、集団墓への副葬品として埋納された二〇三〇センチ内外の磨製石斧が知られこの中には五〇センチを超す大形品も含まれている。しかし、これらはいずれ通常の利器としての実用性離れたいわゆる宝器性格が強いものであり、一括出土の本遺品性格考え上で示唆される点が大きい。特に本遺品中の3は、全長六〇センチを超す唯一の例であり、これまで知られる最大級の磨製石斧として注目される縄文時代石器製作技術や、その性格一端を示すものとして、学術的価値は高い。

磨製石器

(磨製石斧 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/15 13:11 UTC 版)

様々な磨製石器
磨製石斧

磨製石器(ませいせっき、: polished stone tool)とは、石材を砂と擦り合わせたり、他の石と擦り合わせたりする方法で、表面を滑らかに研磨加工した石器である[1]

概要

通常、石器は原料となる石材を他の石材や獣骨などで敲打(こうだ)したり剥離(はくり)したりして製作する(打製石器)。磨製石器はこのように製作した石器を、さらに砂や他の石で研磨することにより凹凸を極力なくした石器をさす。母材の石が緻密なほど表面はなめらかで鋭利となり、樹木伐採などに使用する場合でも何度も繰り返して使用できる[1]

種類

主な磨製石器(および磨製技法で製作される石製品)には、石皿磨石石斧(磨製石斧)・石錐石包丁石棒縄文時代石刀・石剣弥生時代石剣(弥生時代)などがある[1]

  • 石皿・磨石:調理の道具として利用された[1]
  • 石斧:樹木の伐採や土掘りの道具として利用された[1]
  • 石錐:木材や獣皮に穴をあけるドリルとして利用された[1]
  • 石包丁:調理用ではなく農耕用で刈り取りに利用された[1]
  • 石棒または石刀・石剣:縄文時代石棒や、石刀・石剣の用途はよくわかっていないが呪術の道具あるいは宝器として利用されたと考えられている[1]。またこれとは別に弥生時代には、朝鮮半島から伝来し、武器として実戦で使用された石剣磨製石剣)が存在する。

使用時期

磨製石器は新石器時代を代表する道具で、世界では一般的には約1万年前から使用されるようになる[2]

日本列島では、約4万~3万年前の後期旧石器時代初期に、打製技法で成形したのちに刃部(刃先)にのみ研磨をかけた局部磨製石斧が出現しており、これは磨製技法が使用された石器としては世界最古級のものとされている[3]

2000年時点で、これらは長野県上水内郡信濃町野尻湖遺跡群(貫ノ木遺跡・日向林B遺跡など)から多数出土[4]したほか、北海道から九州、奄美大島まで約135カ所の遺跡で約400点出土している[5]

また「旧石器時代には打製石器のみが使用され、磨製石器は出現していない」とするこの時代の定義に見直しを迫る遺物として注目された[4]。日本で発見された斧形石器の刃部の磨製は名実共に「磨製石斧」と呼べる形態を示す器種であった。世界の旧石器時代遺跡からの磨製石斧の発見例は少なく、オーストラリアにやや集中して発見されているが特殊で楕円形の扁平自然礫をそのまま打調を行わずに着柄部に溝が走り自然礫面と研磨痕は明瞭でなく、年代は2万年代を最古に、かなり新しい時期にも存続している。日本の旧石器文化の磨製石斧は3~4万年前に集中し、その後はいったん断絶したのか縄文草創期まで現れない[5]。なお、この日本の旧石器時代である約4万年前から1万6千年前までは氷期で、約3万5千年ほど前は海水面は今より60mほど低く朝鮮海峡の幅は狭く、3万年ほど前にはさらに気温が一気に下がり海水面は現在より最高120m下がったとされ、1万9千年前から気温が回復したとされている[6]。青森県大平山元遺跡で発掘された石鏃は縄文草創期の16,500-15,500年前のもので、これが石鏃としては世界最古(2017年時点)とされる[7]

技術

研磨の技法には擦切技法などがある。磨製石器の製作技術は非常に高いもので現代のシリコンウェハーや光学部品の研磨技術の基礎となっている[1]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i 海野 2010, p. 14.
  2. ^ 世界最古の磨製石斧と栗原遺跡”. 小田静夫. 2024年10月15日閲覧。
  3. ^ 小田 2017, pp. 1–15.
  4. ^ a b 堤 2009, pp. 48–51.
  5. ^ a b 旧石器時代の磨製石斧”. 小田静夫. 2024年10月15日閲覧。
  6. ^ 立切遺跡・横峯遺跡国指定記念シンポジウム ライブ 〜世界最古、3万5000年前の落とし穴と礫群〜”. 中種子町. 2024年10月15日閲覧。
  7. ^ 寒冷気候が卓越する北日本での最寒期の世界最古級の土器と石鏃の発明”. 東京大学大気海洋研究所. 2024年10月15日閲覧。

参考文献

  • 堤, 隆『ビジュアル版・旧石器時代ガイドブック』新泉社〈シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊第2巻〉、2009年8月25日。ISBN 9784787709301 
  • 海野, 邦昭『トコトンやさしい切削加工の本』日刊工業新聞社〈B&Tブックス-今日からモノ知りシリーズ〉、2010年10月1日、14頁。ISBN 9784526065392 
  • 国立科学博物館・毎日新聞社・TBSテレビ 編『世界遺産ラスコー展』国立科学博物館、2016年11月1日。ISBN 9784909027016 

関連項目



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