真核生物との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 07:57 UTC 版)
真核生物と古細菌は基本的な遺伝の仕組みを共有しており、この2つの生物は細菌よりも密接に関係している。16S rRNAによる分析では、古細菌が多様化するよりもはるか以前に古細菌と真核生物は分岐したため、特に真核生物に近い古細菌はいないという系統樹を描き出したが、EF-1/EF-2(伸長因子)を使った解析では、クレン古細菌と真核生物が単系統となる系統樹を描き出した。 ウーズによる3ドメイン説では、真核生物と古細菌はそれぞれが単系統であり、互いに姉妹群であるとする。3つの各ドメインが分かれる以前の共通祖先は遺伝の仕組みが成立していない生物であったとしており(プロゲノート説)、古細菌(または古細菌に近い生物)から真核生物が進化したわけでは無いとしていた。 もう一つの有力な説は、クレン古細菌に近い生物から真核生物が進化したとする2分岐説(2ドメイン説)である。これは1984年にレイクが提唱したエオサイト説を原型とし、3ドメイン説よりも古いものである。山岸らも系統樹がどちらであるにせよ、地球上の生物を細菌とアーキア(Crenarchaeota、Euryarchaeota及びUrkaryotes)の2つに分けるべきと主張した。2010年以降、クレン古細菌や近縁な古細菌からアクチンやESCRT、ユビキチン、チューブリンなど真核生物様の遺伝子が発見され、更に2015年以降、クレン古細菌以上に真核生物に近縁なアスガルド古細菌が発見されたことで、2ドメイン説が有力になりつつある。ただし、真核生物のゲノム全体を見た場合、真核生物は細菌および古細菌由来のどちらの遺伝子も併せ持っており、それが真核生物の起源の解明を複雑なものにしている(真核生物の起源の項を参照)。 この他にも、前述(#細菌との関係)の「ネオムラ説」、RNAを基盤とするクロノサイトという生物に古細菌と細菌が合体した「ABC仮説」、古細菌にウイルスが感染して真核生物になった「細胞核ウイルス起源説」などが提案されている。
※この「真核生物との関係」の解説は、「古細菌」の解説の一部です。
「真核生物との関係」を含む「古細菌」の記事については、「古細菌」の概要を参照ください。
真核生物との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 05:43 UTC 版)
「アスガルド古細菌」の記事における「真核生物との関係」の解説
ESCRT-IIIサブユニット(Vps20/32/60, Vps2/24/46)やVps4(CdvCとも呼ばれている)、ATPaseの系統解析から、アスガルド古細菌と真核生物の間には他の古細菌を排除した明確な親和性があり、加えてESCRT-IIIサブユニットの2つのグループの分岐は、アスガルド古細菌の祖先ではすでに発生していたことが示された。このことから、真核生物のESCRT複合体はアスガルド古細菌の祖先から直接受け継いだものと示唆された。実際にアスガルド古細菌が真核生物のESCRT複合体と進化的にも機能的にも類似点が多いことが実験的に判明している。アスガルド古細菌の一門、オーディン古細菌の一種Odinarchaeceae Tengchongは、ESCRTシリーズの酵素群が全て揃っていて、ESCRTに必要であるVps28が真核生物特有なC末端ドメインを保有している、唯一の原核生物として報告されている。さらにユビキチン結合ドメインタンパク質をコードする遺伝子が同定され、ヘイムダル、ロキ、オーディン古細菌のユビキチン-ESCRTタンパク質の相互作用解析の結果、一部のアスガルド古細菌がユビキチンと協調して機能するESCRTシステムを持つことが示された。 アスガルド古細菌のプロフィリンの結晶構造は真核生物と似ており、アクチンの結合機能に適した構造をしている。真核生物のプロフィリンとの相違点は、真核生物アクチンが集まる際に利用されるプロリンに富む領域が存在しない点と、脂質PIP2存在下で反応性が極めて低い点であるとされてきたが、ヘイムダル古細菌のプロフィリン(heimProfilin)はPIP2と相互作用し、ポリプロリンモチーフによって制御されていることが判明した。実際に、プロフィリン存在下でのアクチン重合反応がin vitroで観測されている。 トール古細菌のゲルソリンスーパーファミリーはアクチンフィラメントの切断、キャッピング、アニーリング、束化などの様々な活性や、ゲルソリン/コフィリン結合部位に結合することがin vitroで確認されていている。真核生物のゲルソリンスーパーファミリーは一般的に3~6個のドメインで構成されている一方で、アスガルド古細菌のゲルソリンスーパーファミリーは、シングルドメインおよびダブルドメインであることから、ゲルソリンスーパーファミリーは初期の真核生物で遺伝子重複が起きた可能性が示唆された。 小胞融合プロセスの中心的な役割を果たしているSNAREタンパク質がヘイムダル古細菌にコードされていることが判明しており、実際に真核生物のSNAREタンパク質と相互作用することが観測されている。 この他、ユビキチンや他の古細菌には見られない真核型リボソームタンパク質(L22e、L28e)、系統によってはチューブリンに相当する遺伝子も見つかっている(オーディン古細菌)。 2019年にロドプシンファミリーとしてType-1ロドプシン、ヘリオロドプシンに加えて、これまでにないタイプのロドプシン、シゾロドプシン(Schizorhodopsins)が発見された。2020年にシゾロドプシンは光エネルギーを使って細胞内へ水素イオンを取り込む機能を持つことが判明した。アスガルド古細菌は光や酸素の無い海底や湖底の泥の中に棲息していることから、どのようにして多くの真核生物が棲む、光や酸素のある環境に進出できたのか、その進化的なプロセスが不明であったが、シゾロドプシンの機能解明に伴い、太陽光と酸素のある環境へ進出する際に、この独自の光駆動型の内向き水素イオンポンプを持つようになったことが示された。 2020年にロキ古細菌とヘイムダル古細菌が、古細菌で初めて大型のrRNAの拡張セグメント(真核生物に特異的なrRNA領域、ES)を保有することが判明した。ロキ古細菌とヘイムダル古細菌のLSU rRNAは2つの真核生物ES(ES9とES39)に由来することが示され、真核生物のrRNAの拡張は段階的かつ反復的におこなわれてきたとするリボソームの進化モデル「accretion model」と一致する結果が示唆された。 真核生物にはないアスガルド古細菌特有の特徴として、CRISPR-Cas関連システムの多様性が発見されている。
※この「真核生物との関係」の解説は、「アスガルド古細菌」の解説の一部です。
「真核生物との関係」を含む「アスガルド古細菌」の記事については、「アスガルド古細菌」の概要を参照ください。
- 真核生物との関係のページへのリンク