白骨温泉の噴湯丘とは? わかりやすく解説

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白骨温泉

(白骨温泉の噴湯丘 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/27 13:28 UTC 版)

白骨温泉
共同野天風呂
温泉情報
所在地 長野県松本市安曇
交通 鉄道:アルピコ交通上高地線新島々駅よりバスで約60分
泉質 単純硫化水素泉炭酸水素塩泉
宿泊施設数 12
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白骨温泉(しらほねおんせん)は、長野県松本市安曇(旧国信濃国)にある温泉である。北アルプス乗鞍岳の山麓(標高1400メートルほど)の中部山岳国立公園区域内にあり、国民保養温泉地にも指定されている[1][2]

泉質

胃腸病、神経症、婦人病、慢性疲労などに効能があり、その昔「白骨の湯に三日入ると三年は風邪をひかない」と言われた。
硫化水素泉であり、1981年に書かれた『乗鞍岳麓 湯の里白骨(白船)』(横山篤美)には、「湯は無色透明で微酸味を帯び、硫化水素の臭気を放つ。しかし槽中にあるものは、硫化水素の酸化によって粉状硫黄を沈殿するので白く濁っている」と紹介された[2]。「乳白色の湯」として知られているが、湧出時には無色透明であり、時間の経過によって白濁する[3]。白濁の要因は、温泉水中に含まれている硫化水素から硫黄粒子が析出することと、重炭酸カルシウムが分解し炭酸カルシウムに変化することである。浴槽の淵などに白い炭酸カルシウムの固形物が付着している。

温泉街

上高地乗鞍林道より見下ろす温泉街
旅館・泡の湯

飛騨山脈(北アルプス)の、乗鞍岳、十石岳、霞沢岳の麓に位置する山峡にあり、近くには、上高地乗鞍高原がある。白骨温泉の目の前に鎮座する十石山は、十石山を愛する地元有志により整備されており、標高差の大きい健脚行程ながら、静かな山歩きの楽しみと山頂台地からの眺望が素晴らしい。[4]

県道白骨温泉線の終点付近にある観光案内所周辺が温泉地の中心部であり、梓川のせせらぎ以外に音はなく、夜には星が美しい。10軒強の宿のほかには共同野天風呂と食事処・土産物店などが2-3軒あるのみのひっそりとした佇まいであり、「温泉街」と呼ぶほどのにぎわいはない。付近には「竜神の滝」や「冠水渓」、特別天然記念物「噴湯丘」など観光名所もあるが、観光地と言えるほどの華はない[2]。その他、1kmほど南に下った、上高地乗鞍スーパー林道B線の起点付近にも数軒の旅館がある。

温泉地の「白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石」は、1922年に国の天然記念物、1952年には国の特別天然記念物に指定されている[1]

歴史

鎌倉時代には既に湧出していたと伝えられ、戦国時代には武田信玄湯治に使っていたと伝わる。江戸時代元禄年間)、齋藤孫左衛門により、温泉宿として本格的に開かれた。地理的に閉鎖的な環境ゆえに、今なお、齋藤姓が多く、地縁血縁による独特の閉鎖性を形作っている[2]

「白骨」(しらほね)とも、「白船」(しらふね)とも呼称されたが、大正時代中里介山の長編小説『大菩薩峠』の中で白骨温泉として紹介されて以降、この名称に落ち着いた。中里介山以外にも、明治以降、河東碧梧桐若山牧水斎藤茂吉与謝野晶子三好達治など多くの文人らが滞在。白骨(はっこつ)を連想させる名称が、人々に強烈な印象を与え続け、秘湯として突出した存在になる[5][6]

1974年3月30日、国民保養温泉地に指定。

入浴剤の添加事件

2004年平成16年)7月、小学館週刊誌週刊ポスト』の報道で、日帰り共同浴場の「野天風呂」と「つるや旅館」「白船グランドホテル」で、入浴剤を混ぜて白濁に着色し偽装をしていることが発覚した[5][7]

長野県庁に寄せられた“情報”にもとづき、長野県知事田中康夫と県職員らがビデオカメラを片手に抜き打ちで踏み込んだ様子が報道され、納戸に隠してあった入浴剤を、従業員がこっそり持ち出そうとした瞬間を、“偶然”県職員が発見し、ビデオカメラに一部始終が撮られた[8][7]

その中には、安曇村村長の筒木千俊が経営している「つるや旅館」も含まれていたことから、筒木千俊は責任を取って安曇村村長を2004年7月31日に辞職した[9]。この騒動をきっかけに、日本中で温泉表示についての問題が発覚し、一連の温泉偽装問題として、大きくニュースで報道された[5][10][11][12][13][14][15]

入浴剤混入の動機は、1996年(平成8年)頃より、十数か所ある源泉の一部において、白濁が薄くなったためである[16][17][18]。偽装発覚以降、日帰り共同浴場の「野天風呂」は閉鎖されていたが、2005年(平成17年)4月28日に営業を再開した。一連の温泉偽装問題への対応として、長野県庁では「温泉の信頼回復」を図るために「安心・安全・正直」な信州の温泉表示認証制度を、2004年(平成16年)11月に創設した[19][20]

アクセス

脚注

  1. ^ a b 白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石”. 松本市教育委員会. 2018年3月7日閲覧。
  2. ^ a b c d “入浴剤投入”発覚から4年――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(前編)嶋田淑之”. ITmediaビジネス (2008年4月25日). 2021年11月1日閲覧。
  3. ^ 白骨温泉の特性”. 白骨温泉観光案内所. 2018年3月10日閲覧。
  4. ^ 登山ルート・山旅スポット. “山のいで湯 白骨温泉・近隣の登山道”. 山旅旅. 2020年10月14日閲覧。
  5. ^ a b c 嶋田淑之 (2008年4月25日). “白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」”. ITmedia ビジネスオンライン. 2018年3月7日閲覧。
  6. ^ 赤羽治郎. “名湯百選 温泉療法医がすすめる温泉 白骨温泉”. NPO法人 健康と温泉フォーラム. 2018年3月10日閲覧。
  7. ^ a b 白骨温泉の入浴剤着色、さらに1旅館判明」『読売新聞読売新聞社、2004年7月23日。オリジナルの2004年7月24日時点におけるアーカイブ。2025年3月27日閲覧。
  8. ^ 田中康夫県知事が踏み込んだ、その時――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(中編)” (2008年5月3日). 2021年11月1日閲覧。
  9. ^ 白骨温泉の入浴剤着色で引責、安曇村長が辞任表明」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月23日。オリジナルの2004年7月24日時点におけるアーカイブ。2024年11月6日閲覧。
  10. ^ 入浴剤使用、環境省が全国調査へ 2万2千カ所の温泉で」『朝日新聞朝日新聞社、2004年8月5日。オリジナルの2004年8月9日時点におけるアーカイブ。2024年11月6日閲覧。
  11. ^ 入浴剤問題で全温泉調査へ 環境省」『東京新聞中日新聞東京本社、2004年8月5日。オリジナルの2004年8月16日時点におけるアーカイブ。2025年3月6日閲覧。
  12. ^ 水道水沸かした湯を「温泉」表示 群馬・伊香保温泉」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年8月9日。オリジナルの2004年8月11日時点におけるアーカイブ。2024年11月6日閲覧。
  13. ^ 群馬・水上温泉でも…4軒湯沸かし」『読売新聞』読売新聞社、2004年8月10日。オリジナルの2004年8月17日時点におけるアーカイブ。2024年11月6日閲覧。
  14. ^ 鳥取・三朝温泉のホテル、9割の“水増し”で営業」『読売新聞』読売新聞社、2004年8月19日。オリジナルの2004年8月20日時点におけるアーカイブ。2024年11月6日閲覧。
  15. ^ 箱根町の温泉でも不適切表示 町は是正求める」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年8月19日。オリジナルの2004年8月21日時点におけるアーカイブ。2025年3月27日閲覧。
  16. ^ 長野・白骨温泉、8年前から入浴剤で湯を着色」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月12日。オリジナルの2004年7月12日時点におけるアーカイブ。2025年3月27日閲覧。
  17. ^ 長野・白骨温泉「白濁のイメージ守る」と入浴剤で」『朝日新聞』朝日新聞社、2004年7月12日。オリジナルの2004年7月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月27日閲覧。
  18. ^ 白骨温泉 入浴剤で着色 野天風呂など」『東京新聞』中日新聞東京本社、2004年7月12日。オリジナルの2004年7月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月27日閲覧。
  19. ^ 県温泉協会が表示基準検討 加水状況や湯の殺菌方法など」『東京新聞』中日新聞東京本社、2004年7月30日。オリジナルの2004年8月17日時点におけるアーカイブ。2025年3月27日閲覧。
  20. ^ 「安心、安全、正直」な信州の温泉表示認定制度”. 2021年11月1日閲覧。

関連項目

外部リンク




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