比較生産費説とは? わかりやすく解説

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ひかくせいさんひ‐せつ【比較生産費説】

読み方:ひかくせいさんひせつ

リカードによって提唱され外国貿易および国際分業に関する基礎理論一国における各商品生産費の比を他国のそれと比較し優位商品輸出して劣位商品輸入すれば双方利益得て国際分業が行われるという説。比較優位説

[補説] 労働量1単位で、A国パン4個か毛布2枚B国パン3個か毛布1枚生産可能とした場合どちらもA国のほうが効率的だが、B国では毛布1枚諦めればパン3個が生産できるため、パン機会費用少ない。A国毛布B国パン特化し貿易を行うほうがよい。


比較優位

(比較生産費説 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/21 07:40 UTC 版)

比較優位(ひかくゆうい、: comparative advantage)とは、経済学者であったデヴィッド・リカードが提唱した概念で、比較生産費説リカード理論と呼ばれる学説・理論の柱となる、貿易理論における最も基本的な概念である。アダム・スミスが提唱した絶対優位(absolute advantage)の概念を柱とする学説・理論を修正する形で提唱された。

これは、自由貿易において各経済主体が(複数あり得る自身の優位分野の中から)自身の最も優位な分野(より機会費用の少ない、自身の利益・収益性を最大化できる生産)に特化・集中することで、それぞれの労働生産性が増大され、互いにより高品質の財やサービスと高い利益・収益を享受・獲得できるようになることを説明する概念である。

アダム・スミスの絶対優位は、各分野における経済主体間の単純な優劣を表現するに留まるため、自由貿易と分業の利点や実態が限定的にしか表現できていないのに対し、リカードの比較優位は、各経済主体内において複数あり得る優位分野間の時間的な収益性・効率性の比較とその選択・集中にまで踏み込むため、より精度の高い自由貿易・分業の説明・擁護に成功している。

  • 比較優位における労働生産性とは一人当たりの実質付加価値高を意味する。
  • 比較優位の解説に際しては、国家による統制を核としている重商主義に対する批判から始まった歴史的な経緯もあって、国家間の貿易がよく引き合いにされるが、地方公共団体及び企業や個人などのあらゆる経済主体においても同様である。

概念

18世紀アダム・スミストーマス・マンが提唱した重商主義を批判した。重商主義に基づき貨幣などの金融資産の蓄積を目的として、保護貿易や貿易相手からの搾取を行っても、植民地維持の費用増大を招き、自国内で権力者のみが富むだけで、その経済主体全体の生活水準の向上には結びつかないからである。

そして、アダム・スミスは1776年自由貿易の重要性と社会的分業による労働生産性の向上を説いた。これは絶対優位にもとづいていたが、これでは交換の利益を説明しきれていなかった。なぜならば、絶対優位においては労働量資本力を重視し他の経済主体よりも得意な分野に特化するので、絶対優位にある経済主体と絶対劣位にあるそれとでは、前者が一方的に利益を得て後者が一方的に損害をこうむる。しかし、これは貿易による現実とは相容れない。

デヴィッド・リカードは1817年に彼の理論を拡張して比較優位の概念を発表した。ここでいう比較とは、労働生産性の各経済主体間の比較ではなく、ある経済主体内での各産業間での比較を意味する[1]。その各産業間での生産性格差[注釈 1]を他の経済主体のそれと比較すること、つまり、経済主体内での相対的有利さを経済主体ごとに比較したときにどちらが優位であるかという二重の相対比較が比較優位である。絶対優位であっても、両方に比較優位はあり得ない。

さらに、労働力なども含めた資源は有限であり、あらゆる産業において絶対劣位にある経済主体でも比較優位な産業は存在する。仮に資源が無限にあれば、絶対優位のある経済主体のみで生産を行うことが最適となるが、現実には資源は有限であるためにある財の生産を行う場合には他の財の生産を諦めるという機会費用が発生する。直接的な費用だけではなく、この機会費用まで含めて考えれば、絶対優位にあるからといってその財を生産することが最適とは限らなくなる。

絶対優位と比較優位の比較
視点 絶対優位 比較優位
提唱者 アダム・スミス デヴィッド・リカード
生産要素 労働量資本力 労働生産性
生産要素を誰と比較するか 他者 他者
他の経済主体と何を比較するか 労働生産性(最大化) [生産性⇔機会費用]
何に特化するか 他の経済主体より得意な分野 機会費用の低いもの(生産性の高い方)

単純化された例

ポール・サミュエルソンは、比較優位を「弁護士と秘書」の例で以下のように説明している[2]

有能な弁護士Aは、弁護士の仕事だけでなく、タイプを打つ仕事も得意だったとする。秘書は、弁護士・タイプの仕事において、弁護士Aより不得意である。更に、秘書はタイプはそこそこできるが弁護士の仕事はほとんどできない。しかし相対的な比較として各自の弁護士の仕事の能力を基準にすれば、秘書のタイピング能力は弁護士Aより優位であると見ることができる。このような場合、弁護士Aは弁護士の仕事に特化し、秘書にタイプの仕事を任せる。それが、弁護士・タイプの仕事が最も効率よくできるからである。

弁護士がタイプを打つと、弁護士報酬という機会費用を捨てることになる。弁護士がタイプを打つのは、恐ろしい機会費用がかかっていることになる。秘書がタイプを打っても、機会費用は低い。無駄な事をしない=何がトクかを常に考える(時間でも費用でも)ことが、「比較優位」を実践していることになる。

具体例

比較優位の提唱者であるデヴィッド・リカードのメシュエン条約の引用例に従って、グレートブリテン王国(以降「イギリス」)とポルトガル王国(以降「ポルトガル」)の2国及び毛織物ワインの2財をモデルにする。

今、イギリスの全労働者が1単位時間分だけ働いた場合の生産量を、毛織物なら

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。 記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。2015年1月

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