新々貿易理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 00:09 UTC 版)
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新々貿易理論(しんしんぼうえきりろん、英:The new new trade theory)は、マーク・メリッツの異質的企業の貿易モデルに基づいた貿易理論体系のこと[1]。新貿易理論のモデルに生産性が異質的な企業を導入したモデルに基づいた理論であることから、新貿易理論にさらに「新」をつけて「新々」貿易理論と呼ばれる[2][3][注 1]。この理論体系のコアとなっている理論モデルはメリッツ・モデル(英: The Melitz model)、または異質的企業の貿易モデル(英: The heterogenous firm model)と呼ばれる[1][5]。
起源
新貿易理論に基づく貿易モデルではすべての企業が同質的で、閉鎖経済から開放経済に移行するとすべての企業が輸出を開始するという理論的予測が得られる[6]。しかし、1992年のアメリカの製造業のデータを観察すると、輸出企業は21%のみで残りの79%は輸出をしていないことが指摘された[7]。さらに、1984-1992年のアメリカの製造業のデータからは輸出企業は非輸出企業よりも平均して20%-45%多くの労働者を雇い、労働生産性も7-8%高いことも指摘された[8]。マーク・メリッツは、こうした実証的事実に整合的な理論モデルとして、ポール・クルーグマンの独占的競争市場の貿易モデルにヒューゴ・ホーペンハインの異質的企業を導入し、異質的企業の貿易モデルを提示した[9][10]。メリッツの論文が出版された2003年前後以降から2010年代半ばまで盛んに研究され、現在でも継続して研究されている分野である。
概要
メリッツの2003年のモデルでは、独占的競争市場の産業が1つあり、対称的な国が任意の数だけ存在する経済を考えている。固定費用の存在が企業レベルの規模の経済を生み出し、消費者はCES型効用関数を持ち外国のバラエティを購入するインセンティブを持つ。このことから、産業が1つしかないにもかかわらず産業内貿易が発生する。
開放経済に移行すると、輸出に必要な固定費用を賄える生産性の高い企業のみが輸出を開始する。これによって、生産性の高い一部の企業しか輸出をしないという実証的事実を説明できる。氷塊型貿易費用が自国と外国において双方向的に減少すると、輸出企業の規模が増大し、さらにより多くの企業が輸出を開始する。一方で、外国企業が自国市場に参入することから自国市場での競争は激しくなり、生産性の低い企業は市場から退出する。これによって産業の平均生産性が上昇する。
学術研究への影響
新しい貿易の利益
メリッツ・モデルは、開放経済への移行によって資源(労働)が生産性の低い企業から高い企業に再配分されることを予測する。この産業内資源再配分によって産業全体の生産性が改善する経路は、新しい貿易の利益の源泉として注目を浴びた[11][12][13]。実際、北米自由貿易協定(NAFTA)によってカナダでの輸入が増加したことで、輸出をしていない企業の退出が促進され、産業の総生産性が上昇したことが示されている[14]。
イェール大学のコスタス・アルコラキスらは、異質的企業の貿易モデルでは、
貿易の利益
新々貿易理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:41 UTC 版)
クルーグマンらの理論は、産業内の諸企業に同一の生産費関数を仮定するものであった。これに対し、2000年代に入ると、同一産業内の企業の違いに注目するメリッツらの実証研究・理論研究が現れるようになった。これは、新貿易理論に対比して、「新新貿易理論」あるいは「新々貿易理論」と呼ばれている。 企業の異質性が企業の輸出に差異をもたらすことに理論的基礎を与えたのは Melitz [2003] である。Helpman, Melitz and Yeaple [2004] は、輸出企業と非輸出企業に関する分析を発展させ、国内企業、輸出企業、FDI 企業の国際化モードの差異が生産性における企業の異質性によるものであること明らかにした。しかし、Melitz [2003] や Helpman, Melitz and Yeaple [2004] による理論モデルは、各企業は「くじ引き」を引くようにしてランダムに格差の与えられた生産技術を用いて、差別化された財を供給する独占的競争モデルである。
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