死後の出版
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トールキンの死の数年後、息子のクリストファー・トールキンは『シルマリルリオン』の物語の編集作業に着手した。彼は可能な限り晩年に書かれた遺稿を使用し、作品に一貫性を(加えて『指輪物語』との一貫性も)持たせようとしたようだが、一方で完璧な一貫性を持たせるのは不可能だったと後に認めている。『中つ国の歴史』で説明されているように、彼は膨大な量の草稿の中からできる限り『指輪物語』の後に書かれたものに依拠しようとしたが、結局、トールキンが意図したものの結局書かれなかった箇所については1917年の『失われた物語の書』にさかのぼって間を埋めることになった。たとえば、『クウェンタ・シルマリルリオン』後半の章である「ドリアスの滅亡のこと」(第22章)は、1930年代初期に最後に手を付けたまま放置されており、クリストファーは断片から物語を創りださなければならなかった。最終的にできあがったものは、系図や地図、索引、初出のエルフ語の単語集を付けられ、1977年に出版された。 (『中つ国の歴史』で明らかにされた)出版に至るまでについての経緯が問題となり、『シルマリルの物語』の大部分は読者の議論の的になってきた。クリストファーが直面した問題が非常に困難なものだったということは、一般に受け入れられている。トールキンが死去したときの原稿の状態は、とても錯綜していたからである。重要なテキストのいくつかはすでにトールキン家の所有ではなくなっており、クリストファーは様々な資料を渉猟しなければならなかった。『中つ国の歴史』の後半の巻で、出版されたバージョンとは異なる様々なアイデアがトールキンの遺稿に存在することが明らかになった。もしもっと時間があってすべてのテキストに触れることができたなら、出版された作品はもっと違ったものになっていただろうと彼はのちに述べている。しかし、彼はできるだけ早く出版可能なものを生み出すよう、出版社や読者からの圧力と要求に晒されていたのである。読者の中には、『シルマリルの物語』は父の作品というより息子の作品だと主張するものがおり、いくつかの文学サークルではこの作品の「中つ国の正典」における立ち位置が熱心に議論されている。 1996年10月、クリストファーはカナダのイラストレーターのテッド・ネイスミス(英語版)に『シルマリルの物語』の全ページフルカラーのアートワークの制作を依頼した。それが収録されたバージョン(イラストレイテッド・エディション)は1998年に出版された。このイラスト版は、2004年にネイスミスのイラストをさらに追加し、いくつかの修正を施した第2版が出版された。 1980年代から1990年代にかけて、クリストファーは父の中つ国に関する遺稿のほとんどを『中つ国の歴史』12巻として公刊した。『指輪物語』の初期の草稿に加え、このシリーズは『シルマリルの物語』として出版された物語のもととなった素材を大量に含んでおり、『シルマリルの物語』と異なっているものが多くある。さらに、『中つ国の歴史』は『シルマリルリオン』の後期のバージョンがどのような状態で未完に終わったかを明らかにしている。『失われた物語の書』のときに書かれたきり、二度と書き直されることのなかった部分がいくつも存在するのである。
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死後の出版
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/05 06:16 UTC 版)
ウルフの生前に出版された作品は全体の半分も無く、死後多くの未出版原稿が残された。出版社に完成済で未出版の小説を2冊残して亡くなったのは、アメリカの作家でウルフが初めてだった。この2冊は、ハーパー&ブラザーズ(英語版)のエドワード・アズウェル(英語版)が編集した後、『くもの巣と岩(英語版)』・『汝再び故郷に帰れず(英語版)』として出版された。それぞれ700ページ近くある2作には、「今まで書かれた単巻物小説の中で最長の2冊」との批評も付けられた。作中で、ウルフは自己投影した登場人物の名前を、それまでのユージーン・ガントからジョージ・ウェバー(英: George Webber)へ変更している。 『天使よ故郷を見よ(英語版)』の「作家版」("author's cut") である、オリジナルの『失われしもの』"O Lost" は、F・スコット・フィッツジェラルドの研究者であるマシュー・J・ブルッコリ(英語版)によって再構成され、ウルフの生誕100年を記念した2000年に出版された。ブルッコリは、パーキンズは有能な編集者だったものの、『天使よ故郷を見よ』は完全版の『失われしもの』に見劣りし、完全版の小説の刊行は「文学の正典へ名作を復活させるも同然だ」(英: [the publication of the complete novel] "marks nothing less than the restoration of a masterpiece to the literary canon.")と述べている。
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