歴史的仮名遣の現在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 04:48 UTC 版)
現代仮名遣いは制定後比較的速やかに社会に定着し、1970年代以降は公的文書、新聞はもとより、ノンフィクションや小説に至るまでほとんどが原文の仮名遣いの何如に関わらず現代仮名遣いで出版されるようになった。(ただし詩歌については、原文の表記を尊重したものが概ね出版されている。) その一方で、その後も仮名遣いの見直しを含む国語改革への批判と歴史的仮名遣の復権を主張して歴史的仮名遣での出版を続けた個人は少なくなかった。文学者では、石川淳、阿川弘之、福田恆存、丸谷才一、三島由紀夫、大岡信、谷崎潤一郎、川端康成、金子光晴、塚本邦雄、吉田健一、内田百閒、森茉莉、円地文子、尾崎一雄、福永武彦、小沼丹、安岡章太郎、結城信一、高井有一、齋藤磯雄、入澤康夫、須永朝彦、吉岡實、吉原幸子等、研究者では、小泉信三、田中美知太郎、山岸徳平、宇野精一、木内信胤、森銑三、岡崎正継、小堀桂一郎、中村粲、長谷川三千子、高森明勅等がいる。作曲家の山田泉も生前に発表した文章に歴史的仮名遣を使用していた。さらに、井上ひさし や山崎正和、小西甚一、大野晋、大岡昇平等にも歴史的仮名遣によって公刊された著作がある。また定期刊行物としては「神社新報」が、現代仮名遣いは文法的に考えて欠陥が多いとして現在でも歴史的仮名遣での発行を続けている。 ワードプロセッサやコンピュータで文章を書くという作業が現出した当初は、すべてのインプットメソッドが現代仮名遣いを当然の前提としていたことから、歴史的仮名遣で文章を書くことの困難は避けられなかった。その後、歴史的仮名遣を扱うインプットメソッド(『契冲』や『ATOK』文語モード)が出現し、さらにはシェアの大きいMS-IMEやOSを問わず使用可能なGoogle 日本語入力向けにフリーの変換辞書(『快適仮名遣ひ』)が提供され、字音仮名遣を除く一般的な歴史的仮名遣の文章入力が比較的手軽なものとなった結果、インターネット上の一部では歴史的仮名遣が根強く行われている。 なお、「現代仮名遣い」は「主として現代文のうち口語体のものに適用する」とし、「科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼ」さないとしたことにより、文語文法によって作品を書く俳句や短歌の世界においては歴史的仮名遣も一般的である。また固有名詞においては、現代でも以下のように歴史的仮名遣が使用されている場合がある。 アヲハタ株式会社 ヱビスビール (東京都渋谷区の地名「恵比寿」の由来、ローマ字表記はYEBISU) ヰセキ(井関農機のブランド) ニッカウヰスキー株式会社 京都ゑびす神社 日色ともゑ すゑひろがりず 住井すゑ 私屋カヲル 眞鍋かをり 安曇野市(あづみのし) 新党きづな 智頭町(ちづちょう)(字音仮名遣の例) よゐこ(歴史的仮名遣に擬した冗談表記)
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