おうりょう‐ざい〔ワウリヤウ‐〕【横領罪】
横領罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/18 13:42 UTC 版)
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| 横領罪 | |
|---|---|
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| 法律・条文 | 刑法252条-254条 |
| 保護法益 | 物に対する所有権 |
| 主体 | 他人の物を占有する者(真正身分犯) |
| 客体 | 自己の占有する他人の物、公務所から保管を命じられた物 |
| 実行行為 | 横領行為 |
| 主観 | 故意犯 |
| 結果 | 結果犯、侵害犯 |
| 実行の着手 | - |
| 既遂時期 | 不法領得の意思を実現しようとする行為が行われた時点 |
| 法定刑 | 各類型による |
| 未遂・予備 | なし |
| 日本の刑法 |
|---|
| 刑事法 |
| 刑法 |
| 刑法学 ・ 犯罪 ・ 刑罰 |
| 罪刑法定主義 |
| 犯罪論 |
| 構成要件 ・ 実行行為 ・ 不作為犯 |
| 間接正犯 ・ 未遂 ・ 既遂 ・ 中止犯 |
| 不能犯 ・ 因果関係 |
| 違法性 ・ 違法性阻却事由 |
| 正当行為 ・ 正当防衛 ・ 緊急避難 |
| 責任 ・ 責任主義 |
| 責任能力 ・ 心神喪失 ・ 心神耗弱 |
| 故意 ・ 故意犯 ・ 錯誤 |
| 過失 ・ 過失犯 |
| 期待可能性 |
| 誤想防衛 ・ 過剰防衛 |
| 共犯 ・ 正犯 ・ 共同正犯 |
| 共謀共同正犯 ・ 教唆犯 ・ 幇助犯 |
| 罪数 |
| 観念的競合 ・ 牽連犯 ・ 併合罪 |
| 刑罰論 |
| 死刑 ・ 拘禁刑 |
| 罰金 ・ 拘留 ・ 科料 ・ 没収 |
| 法定刑 ・ 処断刑 ・ 宣告刑 |
| 自首 ・ 酌量減軽 ・ 執行猶予 |
| 刑事訴訟法 ・ 刑事政策 |
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横領罪(おうりょうざい)は、自己の占有する他人の物を横領する罪である。
広義の横領罪は、刑法第二編「罪」- 第三十八章「横領の罪」(252条〜255条)に規定された全ての罪を指し、狭義の横領罪は、刑法252条1項に規定される罪(単純横領罪)のみをいう[1]。
また、自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合にこれを横領したときには、横領罪が成立する(刑法252条2項)[1]。
条文
- 単純横領罪
- 業務上横領罪
- 遺失物等横領罪
保護法益
本罪は、物の委託者と受託者の委託信任関係を保護するものであるとされる。近時は委託信任関係と併せて委託者の所有権も保護法益とする見解が有力である。
犯罪の類型
単純横領罪
自己の占有する他人の物を横領すると、(狭義の)横領罪が成立する(刑法第252条1項)[1]。業務上横領罪との比較から単純横領罪と呼ばれることもある。他人の物を委託関係に基づいて占有する者のみが犯し得る身分犯である(真正身分犯)。
業務上横領罪
業務上占有する他人の物を横領すると、業務上横領罪が成立する(刑法第253条)[1][2][3]。占有が業務であることで刑が加重される身分犯であり(不真正身分犯)、基本犯である単純横領罪が真正身分犯であることから、真正身分犯・不真正身分犯両方の性質を有する複合的身分犯である。
法定刑は10年以下の拘禁刑である[1]。
遺失物等横領罪
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領すると、遺失物等横領罪が成立する(刑法第254条)[1][4][5]。拾得物横領罪・占有離脱物横領罪とも言う[6]。所有者との間に委託信任関係がない点で、狭義の横領罪と異なる。
道路や河川その他の場所にゴミとして放置された塵芥、空き缶空き瓶空きボトル、ビニル、タバコの吸い殻など明らかに経済的価値がなく財物性が無いかまたは極めて乏しく、かつゴミとして不法投棄された事が明白な場合、本罪は成立しない[6]。一方で、正規の方法で自治体が収集するために道端などに出されたゴミは、住民の所有権は無くなる一方で自治体の占有に服するとされ、これを無断で取得すると本罪ではなく窃盗罪が成立する[6]。
法定刑は、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料である[1]。
委託物横領罪
遺失物等横領罪と対比して、狭義の横領罪と業務上横領罪とを包括し委託物横領罪と呼ぶ。
行為
行為の客体
単純横領罪の客体は「自己の占有する他人の物」、業務上横領罪の客体は「業務上自己の占有する他人の物」、遺失物等横領罪の客体は「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」である[7][8]。なお、自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられたものについては、単純横領罪の客体となる(刑法第252条2項)[1]。
占有の意義
窃盗罪のケースと違い、事実的な所持だけでなく法律的な支配も占有に含まれる。預金に対する預金者、既登記建物の登記名義人にも占有が認められる[9]。
すなわち、ここでいう占有とは、横領罪の主体としての地位を基礎付けるものであり、横領行為をなしうる立場にあることを意味する[10][11]。
例えば、不動産所有権の登記名義人である者は、たとえ実体として他人に帰属する物であっても、他人に売却して所有権移転登記手続をすることができる。したがって、不動産所有権の登記名義人はその不動産について占有をしていると評価することができるのである。
行為の内容
本罪の実行行為たる横領とは、通説によると、不法領得の意思の発現行為一切をいうとされる[12]。ここで「不法領得の意思」とは、通説的な説明によれば、所有者を排除する意思とその物の効用を享受する意思の総体をいうとされる。そして、横領罪における不法領得の意思は、「委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいう」(最判昭和24年3月8日刑集3巻3号276頁)。したがって、窃盗罪などとは異なり、毀棄隠匿の意思であってもこれに含まれると解しうる。
既遂時期
領得が始まれば、完了しなくても既遂に達する[13]。すなわち、既遂時期と着手時期が同一ということである[14][15]。そのため、横領罪には未遂を処罰する規定が存在しない。
他罪との関係
- 背任罪との区別
他人の物を本人の委託に基づいて占有する者が、図利加害目的で任務に背き本人に財産上の損害を与えた場合、横領罪と背任罪のいずれが成立するのかという問題が生じる[16][12]。両罪の区別については、越権の有無で区別する見解や、領得行為の有無で区別する見解などがある[12]。また、最近は横領罪は背任罪に対して特別法の関係に立つとして、横領罪の成否によって区別することが必要であり、かつ、それで十分であるとする見解が有力である[12]。
親族間の特例
窃盗罪の親族相盗例の規定が横領罪にも準用される(刑法255条、244条)[1]。なお、成年後見人、未成年後見人による被後見人財産の横領のケースでは、親族であろうと準用されないとするのが判例である(成年後見人につき最決平成24年10月9日、未成年後見人につき最決平成20年2月18日)。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j “刑法”. e-Gov法令検索. 2025年12月18日閲覧。
- ^ 「耐火物協会元専務理事を横領で逮捕、6千万円着服か」『読売新聞』読売新聞社、2004年6月4日。オリジナルの2004年6月4日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「仙台銀行員7人が着服、客の預金など1億8100万円」『読売新聞』読売新聞社、2004年12月18日。オリジナルの2004年12月18日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「拾得物の5000円、警官が横領容疑 埼玉県警が書類送検」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2010年12月11日。オリジナルの2025年12月16日時点におけるアーカイブ。2025年12月16日閲覧。
- ^ 「大阪市、河川清掃着服問題で職員6人懲戒免職」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2010年12月23日。オリジナルの2025年12月16日時点におけるアーカイブ。2025年12月16日閲覧。
- ^ a b c “占有離脱物横領罪とは? 放置自転車を拾った場合も有罪になるのか”. ベリーベスト法律事務所 堺オフィス (2025年3月17日). 2025年12月18日閲覧。
- ^ 「業務上横領容疑で企業の元部長逮捕 愛知」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年1月4日。オリジナルの2006年1月6日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「親族名義口座にも年1500万円 飛鳥会横領事件」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年5月9日。オリジナルの2006年5月11日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「自治労島根県本部の元書記ら2人逮捕 1億円横領の容疑」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年6月12日。オリジナルの2006年6月24日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「西日本シティ銀、また着服3億6千万円 改善命令の直後」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年1月13日。オリジナルの2006年1月15日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「みずほ銀元行員が13億円流用、週明けにも逮捕へ」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年1月14日。オリジナルの2006年1月16日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ a b c d “横領・背任罪で逮捕されたらどうなる?”. ベリーベスト法律事務所. 2025年12月18日閲覧。
- ^ 「顧客の預金4千万円横領容疑で逮捕 旧都民信組の元職員」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年5月9日。オリジナルの2006年5月11日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「裏金800万円、自分の口座に…静岡県職員逮捕」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月2日。オリジナルの2004年7月3日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「「青い羽根募金」女性元職員と交際男性、7千万円横領」『読売新聞』読売新聞社、2004年7月26日。オリジナルの2004年7月30日時点におけるアーカイブ。2025年12月8日閲覧。
- ^ 「イトマン事件:許永中被告に懲役7年6月罰金5億円 大阪地裁」『毎日新聞』毎日新聞社、2001年3月29日。オリジナルの2001年6月30日時点におけるアーカイブ。2025年12月18日閲覧。
関連項目
「横領罪」の例文・使い方・用例・文例
- 横領罪という罪
- 業務上横領罪という罪
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