望ましい食生活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/02 20:59 UTC 版)
このため方針の転換がなされ、米あまりによる食管会計の赤字に苦しんでいた農林水産省は、1980年(昭和55年)の農政審議会『80年代の農政の基本方向』にて、欧米諸国とは異なる日本型食生活ともいうべき食事パターンがあり、米を主食とした伝統的な食習慣が大きな影響を与えたものだとみられる、ということが報告された。農政審議会報告1982年(昭和57年)「80年代の農政の基本方向の推進について」の中で「多様性がありかつ栄養バランスのとれた健康的で豊かな食生活」と定義された。さらに農林水産省は、医学や栄養学などの26名の専門家からなる「食生活懇談会」をもうけた。5回の食生活懇談会が開催された。栄養過剰である方向へと進みつつあること、食生活の乱れは生活習慣病につながるのでそれを防ぎ、食生活の欧米化が輸入依存度を高めるため日本型食生活の維持は安全保障上からも望ましいとされた。 そして、1983年(昭和58年)に提言をとりまとめ、米を中心とし多種多様な食品を摂ることによって動物性脂肪や砂糖の摂りすぎを避けるという「日本型食生活」を提唱した。 日本人は米を主食とすることで、当時までは栄養過剰になりすぎずに来ており、それはパンと冷やっこのような組み合わせは考え難く、おかずから食べる洋食のようにではなく、ご飯と副食を交互に食べることで栄養バランスが保たれてきたことも挙げられる。日本の食文化は四季折々、地域性に応じて工夫し、「いただきます」「ごちそうさま」と感謝の気持ちを保ってきたことも評価される。牛乳に含まれる飽和脂肪酸については、健康上の懸念からバターの消費も激減しており、当時は問題が大きくなっていないが、もし問題が生じてきたら低脂肪牛乳で対処することも可能だと判断された。 主食では、米について精製しすぎないものが望ましいということを折り込もうともしたが、問題ないのではといった意見がもあり最終的な提言には盛り込まれなかった。 日本に栄養学を創設した佐伯矩の長女、佐伯芳子は1986年にこう述べる。確かにアメリカ自身が問題とする食習慣を取り入れてしまい今日の食生活の欠点が作られているが、日本型の議論は、佐伯矩が1937年に国際連盟の会議で提唱し決議された7分搗き米を用いるという栄養学見地に立つことが忘れられてしまって、白米は良くないということで、一足飛びに話が玄米にまで飛んでしまっている。その後、欧米各国の食生活指針は、主食について科学的証拠の蓄積により全粒穀物を推奨してきた。 2016年の食生活指針を抜粋する。 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランス、を。 ごはんなどの穀類をしっかりと。 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。 食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう。 日本の食文化や地域の産物を活かし、郷土の味の継承を。
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