月の重力の効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 06:20 UTC 版)
月の質量は地球に比して相応のもので(約81分の1)、この両者は衛星を伴った惑星というより二重惑星として捉えられる。惑星を巡る衛星に観られるように、地球の自転軸と直角に交わる面(赤道)よりも、月の軌道面は地球が太陽を巡る軌道面(黄道面)に接近している。地球に潮汐を引き起こすためには月の質量は充分に大きく、また充分に近い。大洋の水の膨らみは月に面した側と、反対側にできる。平均的な潮汐の膨らみは月の軌道に同期しており、地球はこの膨らみの下で1日に1回自転している。ここで、地球の自転は潮汐の膨らみを月の直下から前に引き摺る。その結果、地球と月の中心を結ぶ線より離れた所に相当量の膨らみの質量が存在する。この偏りによって、地球の潮汐の膨らみと月との間の引力が、地球と月を結ぶ線から離れ、これにより地球と月の間にトルクが生ずる。これが月の周回を加速する一方で地球の自転を遅くする。 このプロセスの結果、平均太陽日は通常86,400秒であるが、実際に正確な原子時計に基づく国際単位系における秒で測定すると長くなっている(国際単位系の秒は採用時に既に平均太陽時による秒に比して僅かに短かかった)。この僅かな差は蓄積していき、いずれは我々の時計(世界時)と、一方で、原子時計や暦表時とのずれが大きくなっていく:ΔTを参照。これは1972年の閏秒の導入による時間の基準の差の補償につながる。 潮汐の効果に加えて、地球の地殻の屈曲による潮汐加速もある。ただし、熱の放散にかかる説明によって引き起こされる効果の僅か4%程にしか過ぎない。 もし他の効果を無視するならば、潮汐加速は地球の自転と月の公転周期が一致するまで続くだろう。その時には月は地球の頭上の一点に常に固定されるだろう。この様な状況は冥王星–カロン系で既に見られる。とはいえ、潮汐加速の効果が続く早期のうちに地球の自転が1か月にまで延びる事はない。21億年後には、増加しつつある太陽の放射が大洋を蒸発させてしまい、膨らみによる潮汐摩擦も潮汐加速も取り除いてしまう。あるいはこの効果を除外しても、45億年後に太陽が赤色巨星と化して地球と月を破壊するまでに至っても地球の自転は1か月には延びていない。 潮汐加速はいわゆる永年摂動を受ける太陽系軌道の力学の一つである。永年摂動とは、時間の経過と共に増大する、周期的ではない摂動を指す。限られた高次元まで近似する場合において、大きな惑星と小さな惑星の間における重力相互作用が及ぼす場合に限り軌道に周期的な変化がみられ、パラメータが最大値と最小値の間で振動する。潮力効果では方程式に二次元の項が現れ、これが無限に拡大していく。天体暦の基礎を形作る惑星軌道の数学理論において、二次元とそれより高次の項が生じるが、これらは非常に長い周期の項のテイラー展開である。潮汐効果が異なる理由は、長距離の重力の摂動ではなく、摩擦が潮汐加速の重要な要素であり、力学系において永続的なエネルギーロスが熱になるからである。ここではハミルトニアンを含まない。[要出典]
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