新体詩抄とは? わかりやすく解説

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しんたいししょう〔シンタイシセウ〕【新体詩抄】

読み方:しんたいししょう

外山正一矢田部良吉井上哲次郎共著詩集明治15年(1882)刊。創作詩5編、シェークスピア・テニソンなどの訳詩14からなり新体詩始まりとされる


新体詩抄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/21 14:26 UTC 版)

新体詩抄(しんたいししょう)とは、外山正一(ヽ山仙士)・矢田部良吉(尚今居士)・井上哲次郎(巽軒居士)による新体詩集。3人の撰者による序文と、訳詩14編、創作詩5編を収める。出版社は「丸屋善七」(現・丸善)であり、1882年明治15年)8月に初編が出版された[注釈 1]。近代詩論の先駆け、日本で最初の近代詩集とされる。

それまで「詩」と言えば漢詩を指していた(「詩」の訓読みも〈からうた〉であった)ところ、西洋の「詩」に影響を受けて、日本語での詩表現を目指した。西洋の韻律を持ち込むために、七五調を採用した。

概説

『新体詩抄』は、明治維新を経て欧化主義が鼓吹される時代において、西洋の詩を参考にして日本語による詩を作る詩歌の革新という明確な意識の下に、「詩集」という西洋式の形態を日本に初めて実現させたものである[2]

「初編」とあるように、第2編を出版する予定であったと考えられるが、第2編の出版はされていない[3]。外山正一は、中村秋香、上田萬年阪正臣と共に『新体詩歌集』を1895年(明治28年)9月に出版している[3][注釈 2]

竹内隆信(竹内節)によって『新体詩抄』を中心に編まれた『新体詩歌』が1882年(明治15年)10月10日に出版される[5]。第5集まで発行されたこの『新体詩歌』がまた全国各地で発行されることにより、新体詩は全国に広められていった[5]

和歌集でも漢詩集でもない近代詩集の出現となる『新体詩抄』の刊行は、後の新体詩による詩集へ影響を及ぼし、湯浅吉郎の『十二の石塚』、北村透谷の『楚囚之詩』、宮崎湖処子の『湖処子詩集』、国木田独歩の『独歩吟』の序文・凡例などで『新体詩抄』に言及されている[6]

明治十七八年の交、外山、井上、谷田部等の大學教授熾んに新體詩の著作を唱導す、然れども今や人も詩も寂として文界に聞ゆる無し矣、獨り小生涯の詩人宮崎湖處子の詩歌其後を承けて最も今日の文界に行はる。 — 「凡例」(編者識)、『湖処子詩集』(右文社、1893年〈明治26年〉)[7]
斯る時、井上外山兩博士の主唱編輯にかゝはる「新體詩抄」出づ。嘲笑は四方より起りき。而も此覺束なき小册子は草間をくゞりて流るる水の如く、何時の間にか山村の校舍にまで普及し、『われは官軍わが敵は』てふ沒趣味の軍歌すら到る處の小學校生徒をして足並み揃へて高唱せしめき。又た其のグレーの「チヤルチヤード」の飜譯の如きは日本に珍らしき清爽高潔なる情想を以てして幾多の少年に吹き込みたり。斯くて文界の長老等が思ひもかけぬ感化を此小册子が全國の少年に及ぼしたる事は、當時一少年なりし余の如き者ならでは知り難き現象なりとす。夫れ斯の如くなりしと雖も爾來文學界は新體詩なる者を决して歡迎せざりき。こは皆な世人の知る處。文界尚ほ新體詩を眼中に入れざる輩少なからざるを以て知るべし。 — 『独歩吟』「序」(著者)、『抒情詩』(民友社、1897年〈明治30年〉)[8]

また、西洋の詩を移植しようとする試みへの反感、詩の表現の拙劣さへの批評、新体詩そのものへの批判など、様々な批判も現れた[9]

構成

  • 『新体詩抄序』(井上哲次郎
  • 『新体詩抄序』(矢田部良吉
  • 『新体詩抄序』(外山正一
  • 『凡例』(編者)
  • 目次
  • 『ブルウムフヰールド氏兵士帰郷の詩』(ヽ山仙士)
  • 『カムプベル氏英国海軍の詩』(尚今居士)
  • 『テニソン氏軽騎隊進撃ノ詩』(ヽ山仙士)
  • 『グレー氏墳上感懐の詩』(尚今居士)
  • 『ロングフェルロー氏人生の詩』(ヽ山仙士)
  • 『玉の緒の歌(一名人生の詩)』(巽軒居士)
  • 『テニソン氏船将の詩(英国海軍の古譚)』(尚今居士)
  • 『抜刀隊』(ヽ山仙士)
  • 『勧学の歌』(尚今居士)
  • 『チヤールス、キングスレー氏悲歌』(ヽ山仙士)
  • 『鎌倉の大仏に詣でゝ感あり』(尚今居士)
  • 『高僧ウルゼーの詩』(ヽ山仙士)
  • 『シャール、ドレアン氏春の詩』(尚今居士)
  • 『社会学の原理に題す』(ヽ山仙士)
  • 『ロングフェロー氏児童の詩』(尚今居士)
  • 『シェーキスピール氏ヘンリー第四世中の一段』(ヽ山仙士)
  • 『シェークスピール氏ハムレッツト中の一段』(尚今居士)
  • 『シェーキスピール氏ハムレツト中の一段』(ヽ山仙士)
  • 『春夏秋冬』(尚今居士)
  • 『跋[注釈 3]』(水屋主人)
  • 正誤[注釈 4]
  • 奥付

書誌情報

脚注

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注釈

  1. ^ 7月に板権免許を受けており、本の扉には「明治十五年七月刊行」と記載されているが、出版広告文に8月16日、奥付に8月出版と記されたように、実際には8月に出版された[1]
  2. ^ 外山は、序文の中で自身が新体詩という文学ジャンルを確立したことの自負と自信を記している[4]
  3. ^ 実際には表題は附せられていない。
  4. ^ 再版に正誤はない[10]

出典

  1. ^ 西田 1994, p. 33.
  2. ^ 西田 1994, p. 12.
  3. ^ a b 西田 1994, p. 433.
  4. ^ 西田 1994, p. 436.
  5. ^ a b 西田 1994, p. 425.
  6. ^ 西田 1994, p. 438.
  7. ^ 湖処子詩集 - 国文学研究資料館近代書誌・近代画像データベース
  8. ^ 独歩吟 - 国文学研究資料館近代書誌・近代画像データベース
  9. ^ 西田 1994, p. 442.
  10. ^ 西田 1994, p. 421.

参考文献

外部リンク


新体詩抄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/15 15:58 UTC 版)

新体詩」の記事における「新体詩抄」の解説

幕末維新志士都々逸などの俗謡倣い自由な詩を作っており、明治初期には西洋の詩が漢詩の形式和訳され中村敬宇『嶽南集』(1870年)ではオリヴァー・ゴールドスミス僻村牧師歌」、ロングフェロー打鉄匠歌」などを、末松謙澄シェリー雲雀の詩」を訳出している。また1877年明治10年前後翻訳されキリスト教賛美歌は、七五調プロテスタント系)や三十一文字カトリック系)の詩型用いられた。 矢田部良吉外山正一は、アメリカでダーウィンスペンサーの社会進化論学び文学改良運動の一つとしてアルフレッド・テニスンなどの訳詩や、外山ゝ山(とやまちゅざん)の創作社会学原理題す」などによる『新体詩抄』を1882年刊行した。『新体詩抄』の作品は、従来日本詩歌花鳥風月叙情離れて思想的抽象的な内容取り入れ律格七五調であるが、スタンザ形式押韻リフレイン取り入れたのだった作品としては「駄作の偶集にすぎなかった」(日夏耿之介明治大正詩史』)とも後年評されるが、七五調という以外に何の規定も無いことで、これを再編増補した竹内隆信編『新体詩歌』とも当時若者多く影響与えた湯浅半月同志社大学在学中に、英語教師山崎為徳によりジョン・ミルトン影響を受け、旧約聖書故事素材にした五七調689行の叙事詩十二石塚』を作っており、製作時期は『新体詩抄』以前であり、またこの長詩は「朗々吟ずるに足る出来栄えであって日本近代詩出発とするにふさわしい」(由良君美)と評されている。続いて小室屈山自由の歌」や、硯友社系の文学者丸岡九華山田美妙なども作品発表し植木枝盛当時自由民権思想盛り込んだ作品作った。 「新体詩新體詩)」という名前は、井上発案よるもので、「在来長歌若しくは短歌等とは異なった一種新体の詩なるがゆえ」「昔より在り来り詩歌異なりたる詩的の作は皆之を称して新体詩と謂わむとするのが我々の考えありました」と述べられている。新体詩呼び名は1907、8年頃まで使われ、やがて短歌対する「長詩」と呼ばれその後単に「詩」となった

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