政治家などによる口利きと献金への関与
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「帝京大学医学部裏口入学事件」の記事における「政治家などによる口利きと献金への関与」の解説
文部科学省やマスコミによる帝京大学への追求が途切れてしまった理由に、帝京大学と政治家、マスコミとの癒着が指摘されてきた。国会で取り上げられたのはまず当時の厚生労働副大臣の宮路和明氏であった。宮路副大臣は冲永総長とは親しい間柄であることを自ら証言しており、しかも「受験生の口利きを繰り返していたこと、今回の事件の後援会関係者の医療法人から5年間で百数十万円の政治献金を受けていたことを素直に認めた。」という。それに対して帝京大は調査報告書や文科省による事情聴取の中で、「総長は、まったく心当たりがないといっている」とし、宮路氏との関係を全面否定した。 しかし宮路副大臣は、自らの地元の後援会長である医療法人代表者親族の帝京大学医学部入学への口利きによって献金を受けていたことが、これらの記事に先立つ2002年7月11日の参議院厚生労働委員会で追及されていた。これは宮路副大臣が献金を受けていたか否かという点にとどまらず、冲永総長自身xが裏口入学に直接関与していた証拠にもなり得る点で注目を集めた。 この日の厚生労働委員会では、帝京大冲永総長が帝京大医学部を受験した医療法人親族の受験番号を宮路事務所に電話で問い合わせてきた事実を示すというメモがその証拠とされた。このメモは、電話応対した宮路事務所の北山秘書が書き取ったものであった。そのメモを宮路副大臣自身が会議中に読んでいたところ、メモ内容を撮影され、それが証拠として呈示されたのだった。 この後、宮路副大臣は7月15日に、「帝京大医学部入試口利き問題の責任を取り辞任する考えを表明、小泉純一郎首相あての辞表を提出した」。帝京大総長による宮路副大臣との関与の否定には変化がなかったが、「それならば宮路氏は何のために厚労省副大臣を辞めたのか」という記事も書かれた。 さらに2002年8月7日の衆議院文部科学委員会第17号では、上記の宮路副大臣の北山秘書が書いたメモにある「一月三十一日」「受験番号を至急御連絡ください」「帝京大学冲永総長」という文言ついて質疑があった。それは、帝京側が主張するように口利きの窓口はすべて横田前事務局長ならば、宮路事務所宛ての連絡があった(2002年)1月31日に横田氏が大学に出勤していなければおかしいので、この日の横田氏の出勤の有無を問い質すものだった。しかしこの時期、横田前事務局長は肝臓がん闘病中で、自宅からほとんど出られない状態であり、同年3月8日に亡くなった。 これに対する工藤高等教育局長の答えは、1月31日に横田氏は出勤していたというものだった。だが出勤簿を確認しておらず、帝京側からの説明による、とのことだった。つまり工藤高等教育局長は、帝京大の前田憲正氏からの説明をそのまま8月7日の文部科学委員会で報告していたのだった。 1月31日、宮路事務所の北山秘書に受験番号を尋ねた電話が横田氏からのものでなかったとすれば、「帝京大学冲永総長より」とメモに残されたこの電話を宮路事務所にかけた人物は誰か、ということになる。 また、帝京大学への裏口入学には直接関係しないまでも、帝京大学首脳部から献金を受けた複数の政治家については、2002年7月23日の参議院厚生労働委員会などで確認されていた。 読売新聞は2002年12月10日、帝京大学グループの関連会社「帝京サービス」(東京都板橋区)が、自民党の松島みどり衆院議員が議員に当選するまでの時期、松島氏と社員契約を結んだように装い、1996年から4年間に計約3000万円を給与名目で支払ったと報道した。松島氏には同社への勤務実態がなく、東京国税局はこの3000万円が会社の経費扱いになる「人件費」には当たらず架空経費の計上に当たるとした。東京国税局は松島議員の件を含め、2000年9月期まで「帝京サービス」に約5000万円の申告漏れがあったとして、約400万円の追徴課税を命じたことが2001年12月10日判明したという。「帝京サービス」は帝京大学が出資する関連会社であり、大学関連会社が不正経理に関わる事実が見られるものだった。 2002年2月15日の衆議院予算委員会の時点ですでに、「私が調査したところ、松島議員は勤務実態がほとんどないんです。とすれば、これは架空給与ではないのか。」とも指摘されていた。 2008年7月22日、亀井郁夫参議院議員は広島のクリニック院長の妻に、帝京大医学部入学への息子の口利き料として約2億円を詐取されたとして返還を訴えられた。そして同年の週刊新潮8月7日号が、この告訴を記事として掲載した。 それを受けて亀井郁夫議員は新潮社などに対して謝罪広告の掲載と1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こし、広島地裁は2013年5月29日、「裏口入学させることを約束して金銭を交付させたことを推認させる具体的な事実は認められない」として新潮社に330万円の支払いを命じた。だが謝罪広告の掲載は棄却した。また返還を求めた院長の妻の請求は東京地裁によって棄却された。
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