放射線健康リスク管理アドバイザー就任前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 05:59 UTC 版)
「山下俊一」の記事における「放射線健康リスク管理アドバイザー就任前」の解説
福島第一原子力発電所事故発生後の3月13日、文部科学省からの要請で長崎大学病院国際ヒバクシャ医療センター所属の医師らをまず放射線医学総合研究所に派遣し、3月15日に福島県立医科大学を拠点として緊急被ばく医療活動を行った。山下によれば、送り出したのは長崎大学の精鋭なので十分にやれると考えており、福島県にすぐに行く気はなかったと話している。 3月12日の読売新聞の取材では、原発周辺で観測された毎時1015マイクロ・シーベルトの放射線量が「人間が1年間で浴びる量の半分」であると指摘し、「10ミリ・シーベルト以上を浴びないと、人体に影響はほとんど出ない」発言するとともに、がんを発症して原爆症認定訴訟を戦った被爆者の被曝線量が10~100ミリ・シーベルトであると語っている。 3月17日に福島県知事佐藤雄平からの専門的情報の提供についての協力要請を受け、山下の福島県への派遣が決定した。また、福島県立医科大学理事長菊地臣一は17日夕方に山下の携帯電話に連絡し、福島県に来るようにと依頼した。 福島県立医科大学では当初、県内の妊婦や子どもたちを避難させた方がいいのではないかという話し合いが持たれ、そこに呼ばれた長崎大学のメンバーに対して、「ヨウ素剤をみんなにすぐに飲ませた方がいいのではないか」「すぐに避難を」という意見が相次いでいた。派遣されたメンバーの一人である熊谷敦史は「きちんとコントロールできる人が必要」だと考え、そして大津留晶が山下に「福島県立医大が浮き足立っている、先生方がパニックになっている」と報告した。 その後3月18日に自衛隊のヘリコプターで現地入りし、夕方に福島県立医科大学の教職員に講演。講演で山下は「安定ヨウ素剤で甲状腺がんが防げるという誤解が広がっているが、『ヨウ素剤信仰』にすぎない。日本人が放射性ヨウ素を取り込む率は15~25%。4、5割を取り込むベラルーシとはわけがちがう」、20キロ圏、30キロ圏以西の被曝(ひばく)量はおそらく1ミリシーベルト以下。チェルノブイリと比べて被曝量が微量なので、日本政府も安定ヨウ素剤服用の指示を出さない」、「服用マニュアルは数々の欠点がある。使われないことを祈る」と不要論を展開。最後に「ぜひ逃げ出すことのないように。事故による被曝は地震国で原発立国を進めてきた日本の宿命です」と話した。 同日夜、山下はNPO法人環境市民のラジオ番組に電話でインタビューに応じた。放射線に関する報道について、「CTとレントゲンはけっこうな被曝量があるが、とったほうが患者のためになるためなので、限度を設けないのが基準。しかし、今回の自然災害、原子力災害では、一般の公衆があびる値は決まっているので安全な領域を越さないという別のレベルで考えるべき」と話し、放射性物質への対策として、「ヨウ素131の甲状腺への被曝線量をおさえることが有効であり、甲状腺への被曝線量が24時間で50ミリシーベルトになると予想された場合に安定ヨウ素剤を投与する」と答えた。 また、外部被曝と内部被曝について、「外から放射線として浴びるとき、汚染から浴びる場合を外部被爆。内部被爆は、大気中の空気をすったり、汚染されたものを食べたりすることで体の中から被爆することをいう」と回答し、防護策として「マスクをして物質を避けたり、外にでないようにする、甲状腺が入ってくるのは、汚染されたものを食べることなので、20キロ内で流通された食べ物を食べないなど。心配ならば、ヨウ素の量が多い、わかめ、昆布のスープを飲んでおけば、普通の人ができる甲状腺のブロックになる。日頃からたべることも効果的な予防策。大事なことは、食物の安全に敏感なので、汚染されたものを市場にださないこと、厚生労働省の安全基準をチェックして、それにかなったものを食べることが大事」と語った。
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