携帯電話向けバッテリーでの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 22:46 UTC 版)
「リチウムイオン二次電池の異常発熱問題」の記事における「携帯電話向けバッテリーでの問題」の解説
2006年8月、SED製バッテリーの問題発覚と時期を同じくしてNTTドコモの携帯電話に採用されている電池パックが膨れて、ひどいものでは電話機本体に装着できないほど変形する(装着されたままの場合、携帯電話本体諸共変形する)という報告も12機種の携帯電話で発生している。交換対象は数百万台から1000万台と膨大である。新聞報道ではNTTは不具合ではなく、アフターサービスによる交換対象と発表を行っている。これらの電池の大半は、三洋電機および三洋GSソフトエナジー製のものであり、充電電圧を従来の4.2Vから4.3〜4.4Vへと高くすることで高容量化を行っていたが、膨れの原因となるガスが発生しやすく従来の電池と比較して寿命が短い、また充電時に電池が高温になりやけどするなどのクレームがあった。NTTドコモは、今後充電電圧を4.3V以上とした電池を採用しないよう、携帯電話メーカーに働きかけている。実際2006年11月に発売された903iシリーズでは、一部の機種で充電電圧が4.2Vに戻されているが、これにより902iSの電池と比較してエネルギー密度は減少し、電池重量および携帯電話本体の重量の増加につながっている。 なお同時期にKDDI (au) では、W42Kにおいて、ソフトウェア制御不具合による電池パック不良報告(電池パックそのものは良品)を9000件以上も受けていたにも拘らず、年末商戦をはさみ2007年3月までの5ヶ月間放置した。対象機種は約65万台に上り、その多くはソフトウェア修正で解消できるものの、既に電池パックが膨らんで使用不能となった場合のみ交換に応じると発表した。なお、その後数度の回収対象を拡大していた矢先に、解約・機種変更後に時計として利用しているユーザーの事故が発生したことから、2011年になってから再度告知となり、ユーザ情報の確認ができない顧客からの申告を受け付ける形で全回収となっている。 2006年12月8日、NTTドコモは、三洋電機製バッテリーパック(三洋ジーエスソフトエナジー製)を使用する三菱電機製携帯電話端末(FOMA D903i及びD902i)の販売を中止し、既に販売された130万台を回収すると発表した。新聞掲載の記事・図解によれば負極電極(-電位)終端の銅箔部が、製造装置の欠陥により折れ曲がり、充電による膨張、更に電池パック外部から加わる衝撃、外力、変形等により絶縁膜のセパレータを突き破り、電池外装缶(+電位)との間で短絡を起こし過熱・発火、場合により破裂に至ると説明されている。利用者の火傷、じゅうたん・衣類の焼損など2005年11月の発売から2006年5月までに11件の事故が報告され、2006年8月以降も18件の異常加熱、破裂の事故報告があった。メーカーは不具合に気づき、2006年5月に問題の製造装置の改修と電池内部を二重絶縁にする対策を講じたが、個別に要求のあった顧客の電池交換に応じたのみで問題の公表や回収を行わなかった。 SEDのPCバッテリー問題での異常発生率は1-2ppm程度と考えられるが、本事故の三菱電機・三洋電機における異常発生率は20ppmを超える異常な高率のトラブル発生となった段階でようやく回収が行われることになった。しかし根本原因は2006年8月にあった異常膨張トラブルが原因の一つになっていると考えられる。放充電の過負荷による電池の膨れ(膨張)を担保していない事が問題と考えられるが、2006年5月の製造装置の改修以降、この異常な膨れに対する基本的な対策が講じられなかったため今回の問題発生・拡大につながったと推定される。なお、発生率数値は新聞発表分の事項報告件数による計算値である。2006年5月と2006年8月のトラブルは共に膨れによる同質のトラブルである。ちなみに風船のように膨れた電池パックの写真が掲載された。 また、「携帯を誤って床の上などに落とすということはよくあることだが、本件の問題発生確認のシミュレーション時に外部から加わる衝撃・変形・応力を想定していなかったため回収の判断に至らなかった」と発表を行っている。同12月9日では本事故の発生・報道にかかわる三洋電機の縦割り組織の弊害も指摘されており、事業再編中でバッテリービジネスを中核事業に位置づける三洋電機、FA機器が好調だが今期赤字が見込まれる三菱電機に大きなダメージを与え、損害の補填を三洋電機側に求めると発表した。 このほか、NECトーキンが製造した電池を採用した、ウィルコム(当時)のAH-J3003SおよびWX220J(前者は、一部は旧DDIポケット時代のものを含む)向け電池パックも回収となっている(上述のW42KおよびA101Kの電池パックも、NECトーキンが製造していた)。
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