控訴審・福岡高裁判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 09:33 UTC 版)
久間は死刑判決を不服として福岡高等裁判所へ控訴したが、福岡高裁第2刑事部(小出錞一裁判長)は2001年(平成13年)10月10日、原判決を支持して久間の控訴を棄却する判決を言い渡した(参照)。判決理由で福岡高裁は以下の通り、第一審で認められた状況証拠を同様に評価したほか、 久間所有車内の血痕が新たなDNA型鑑定法によって検出可能になったところ、そのTH01型・PM型が、「鼻血がかなりの量出た」方の被害者のものと合致したことを新たに認め、「その血痕がA子に由来するものであることを更に補強しているものと認めるのが相当である」 Tの目撃証言が詳細すぎることから警察の誘導があったという久間側の主張に対しては、Tは森林組合勤務で現場付近の山中につき知識・経験があるところ、冬季に現場を通行する車両は珍しく通行の妨げになる所に不審車両が停車していたことや、そばにいた者が手をついて倒れて目が合うのを避けるようにしていたこと、翌日に遺体発見をラジオで知って不審車両を同僚Jに話していたなどの事情に照らすと、「証言に現れた程度の内容を観察し記憶にとどめ続けることは十分可能である」。そして、そのTの同僚Jによる公判での「証言によると、Tの供述内容は、既に事件の翌日にJらが聞いていたものと同じであること」から、「警察官の誘導により得られたことはうかがわれない」なお、心理学者の嚴島行雄日本大学教授による実験に基づく鑑定は、車の往来の激しい桜開花時に行われて約30秒に1台の割合で対向車両が存在していたことや、目撃車両とは異なり前後輪のタイヤの大きさが同じでダブルタイヤに気付きにくい状態でなされていたことなどから、「その結果は到底採用できないものといわなければならない」とされた。 WとXの目撃証言に警察官の誘導があるとの久間側の主張に対しては、車両についての聞き取りは事件の数か月後であったが、両名は事件発生後間もなく警察官から被害者について聞かれたことで「事件との関係を念頭にその場所における体験を繰り返し想起していることが考えられ」、くわえて、Xは「目撃したその車両に接触されそうになったという強い心理的緊張、強烈な体験を伴った記憶として、その車両についての具体的な記憶を保持している」、Wは「Xから、『今、ひかれそうになった。』と訴えられてその車両が疾走していくのを30メートル程度前方に見たというのであるから、大まかな特徴を記憶にとどめているのは決して不自然ではない」このうちWは、新聞社の取材に対して、「ダブルタイヤで人気があった車なので、車種を覚えていた。8時30分に知人と通学路で待ち合わせしており、日付も時間も間違いない」と述べている。 久間のアリバイ供述について、女児2名が久間のまさに通行する場所で行方不明となり遅くとも翌日には捜索・検問となったことで、久間にとって「前日の自分の行動がどうであったか否応なく思い返さざるを得ない心理状態にあった」のにくわえて、数年前の女児行方不明の最終目撃者として自身が疑われかねない経験があったのであるから、「今回の事件でも本件の発生状況を知った際、直ちに犯行時刻ころの自分の行動につき確かめ、その主張するようなアリバイに当たる事実があれば、これで自分は疑われなくて済む、という安堵を伴う強烈な印象をもってその事実を再確認し、脳裏に焼き付けることになったはず」であるから、「被告人は当日の行動につき十分な記憶を有しているにもかかわらず、信用できないアリバイ主張をしていることになる」 本件は、被害者2名が同時に誘拐されて犯人車両に容易に乗車したと見られるため、「被害者と顔見知りの者による犯行と推認されるところ」、久間は日中長男の友達を含む子供らと遊ぶなどして知られており、「被害者らとは顔見知りになっていたことがうかがわれる」 との新たな判示をした。そして一連の証拠について、「これらの情況事実は、いずれも犯人と犯行とを結びつける情況として重要かつ特異的であり、一つ一つの情況がそれぞれに相当大きな確率で犯人を絞り込むという性質を有するものであり、これらは相互に独立した要素であるから、その結果、犯人である確率は幾何級数的に高まっていることが明らかである」として、死刑判決を維持した。
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