排除から統合へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 08:14 UTC 版)
エストニアは1995年11月に欧州連合 (EU) へ加盟申請を行い、1997年12月にはルクセンブルク欧州理事会での加盟交渉開始決定候補国入りを果たした。しかし、同時に「ロシア系無国籍者の社会統合促進を目的とした国籍取得加速化のための方策の必要性」が指摘され、これに対しエストニアは12月9日の国籍法改定案承認を以て応えた。この国籍法緩和が外圧によるものであることは、当時の人口・民族問題担当相も認めている。 しかし、同様の問題を抱えるラトビアが国際社会からの圧力を黙殺したのとは対照的に、エストニアでは祖国連合(英語版)以外のほとんどの賛成によって、1998年12月には改定国籍法が成立した。1998年国籍法では、親が国内に5年以上居住する無国籍者であり、1992年2月26日以降に国内で出生した15歳以下の子供に対し、親権者の届出によって国籍付与が認められるようになった。 2003年12月までに3237人の子供たちが無条件の帰化を認められたこの改定により、血統主義のみを採っていた国籍法に出生地主義の要素が加味され、エストニアはロシア系住民の統合へと明確に方針を転換した。また、この法改定によってエストニア語能力試験を免除された国民の増加が確実となったため、同時期の言語法改定により、エストニア語の優位性の確保が図られた。 1998年2月に政府は文書「非エストニア人のエストニア社会への統合――エストニア国家統合政策の基本」を承認し、その中で無国籍者の国籍取得の必要性とともに、エストニア人とロシア人の相互理解による社会統合を訴えた。翌3月には「非エストニア人統合基金」が設立され、その支出額は1999年の570万クローンから2002年には850万クローンにまで拡大している。2000年3月にはエストニア語教育の拡充に基づく国籍取得政策が打ち出され、国家プログラム「エストニアの社会統合2000-2007」が議会で承認されている。 2003年3月31日には国連自由権規約人権委員会が再度の所見を決定し、エストニアでの無国籍者に対する帰化者の少なさを指摘した。そして所見は、とりわけ子供の無国籍者を減らす(保護者に帰化を呼びかける・学校で帰化促進キャンペーンを行う)よう勧告した。また、政党加入に対して設けられた国籍条項に関しても、自由権規約第22条に基づき、その締結国には非市民の政党加入可能性を考慮する義務がある、とも指摘している。 2008年12月の時点で、エストニアの住民構成はエストニア国籍者83.9パーセント、無国籍者7.8パーセント、外国籍者8.3パーセントであり、かつて人口の30パーセント超を占めた無国籍者数は大幅に減少している。とはいえ、1992年から2007年までのエストニアへの帰化者が14万7230人である一方、同時期にロシアへ帰化したエストニア在住者も14万7659人存在するなど、ロシア人の社会統合が順調であるとは即断できない状況でもある(2007年4月にはタリンで両民族の衝突事件(青銅の夜)も発生している)。 各国籍者の出生地(2006年) エストニア国籍者 エストニア (71%) ロシア (22%) ウクライナ (3%) ベラルーシ (2%) ラトビア・リトアニア (1%) その他(1%) ロシア国籍者 ロシア (65%) エストニア (21%) ウクライナ (6%) ベラルーシ (6%) ラトビア・リトアニア (1%) その他(1%) その他の国籍者 ウクライナ (45%) ベラルーシ (15%) エストニア (15%) ラトビア・リトアニア (15%) ロシア (5%) その他(5%) 無国籍者 エストニア (53%) ロシア (29%) ウクライナ (11%) ベラルーシ (3%) ラトビア・リトアニア (1%) その他(3%) 各国籍者の祖国 (kodumaa) 認識(2006年) エストニア国籍者 エストニア市民 (71%) 旧ソ連市民 (13%) ロシア市民 (12%) ウクライナ市民 (1%) ベラルーシ市民 (1%) その他(2%) ロシア国籍者 ロシア市民 (40%) エストニア市民 (31%) 旧ソ連市民 (22%) ウクライナ市民 (5%) その他(2%) その他の国籍者 ウクライナ市民 (33%) エストニア市民 (20%) ベラルーシ市民 (15%) 旧ソ連市民 (8%) ロシア市民 (5%) その他(19%) 無国籍者 エストニア市民 (51%) ロシア市民 (22%) 旧ソ連市民 (15%) ウクライナ市民 (6%) ベラルーシ市民 (1%) その他(5%)
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