捕獲(犬のみ)・引き取り・収容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 21:13 UTC 版)
「殺処分」の記事における「捕獲(犬のみ)・引き取り・収容」の解説
各自治体の保健所、もしくは各都道府県や政令指定都市が管理運営する動物愛護施設(自治体により名称は異なる)が行う。公共施設であるため従事者はその自治体の職員(=公務員)であり、現場での捕獲等に従事する現業職員のほか、動物の健康管理に従事する獣医師により構成される。 2013年9月、動物愛護法の改正により、相当の理由がない限り自治体は引き取りを拒否できるようになったため、各自治体は飼い主に新たな飼い主を探すよう指導している。自治体が引き取りを拒否できる項目は以下のとおり。 犬猫等販売業者から引取りを求められた場合 引取りを繰り返し求められた場合 繁殖制限のための指導に従わず子犬・子猫の引取りを求められた場合 犬猫の老齢・疾病を理由として引取りを求められた場合 飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合 譲渡先を見つけるための取組を行っていない場合 となっている。 改正法の施行後、所有者不明の猫の引取りについて、拒否する運用をしている自治体も多い。特に野良猫については、自活できないもの(離乳期前の子猫等)を除いて一切の引取りを拒否するケースが増えている。このような実態について、所有者不明の猫による継続的な生活環境被害を受けている住民等からは、自治体が所有者不明の猫を引き取らないのは明確な法律違反であるとの指摘が多数寄せられている。 殺処分がなくなることを目指して譲渡の促進に努める旨の規定が追加されたことから、自治体は引き取った犬猫の譲渡活動を一層促進。近年の急速な譲渡の促進(殺処分率の低下)の要因としては、一般飼い主に加え、動物愛護団体への団体譲渡の寄与するところも大きい。その一方で、自治体によっては、殺処分がなくなることを最優先とした結果、譲渡適性のない個体を譲渡したことによる咬傷事故の発生や、団体譲渡した動物愛護団体のシェルターが過密飼育となっており動物の健康安全の確保の観点から問題が生じているのではないかとの指摘がある。 動物の保護・譲渡活動は、海外(イギリス、ドイツ)では、民間団体が寄付金等の自己資金を用いて実施。これらの国では、野良犬や野良猫がほとんど存在せず、シェルターに収容される動物の多くは飼い主が所有放棄したものが多いという。一方、日本の場合は、北関東や西日本を中心に野良犬の収容が多く、全国的に野良猫の数も多いことから、保護収容した個体のうち人間との社会化ができておらず、馴化が困難で飼養に適さないものも多い。 日本国内においても、大都市部においては、過去の捕獲の努力や適正飼養の徹底の結果、野良犬がいなくなり、野良猫についても多くの愛護団体の協力が得られるため地域猫として管理できるケースが増えている。他方、西日本等の地域では、温暖で餌も豊富なため、多くの野良犬や野良猫が生息・繁殖しやすく、依然として自治体の収容数が多い。このように自治体の置かれた状況が大きく異なる中で、大都市部と同様の動物愛護管理手法について、それ以外の地域に要求することは困難な状況である。 自治体は、動物の引取り・譲渡等の活動の他に、多岐にわたる業務を担っている(動物愛護管理推進計画の策定・推進、一般飼い主に対する適正飼養の普及啓発や指導、多頭飼育者に対する指導・勧告・命令、動物取扱業の登録制度の運用、特定動物の許可制の運用、動物虐待事案への対応等。)。また、動物保護管理法制定当時から、公衆衛生の確保など動物の管理(動物による生命・身体・財産の侵害の防止、前回改正時からは動物による生活環境被害の防止)の観点からの施策が行政機関としての基本であり、保護法益に鑑みても優先事項とすべきである。しかしながら、近年では、動物の愛護を優先する結果、動物の管理に係る施策を十分に講じることが難しい環境に置かれる自治体もあるのではないかとの指摘もある。 そうした中で、法において動物愛護管理行政が自治事務とされた趣旨に照らし、引取りや譲渡のあり方を含め、動物愛護行政のあり方については、各自治体の実情に応じ、地域に根ざす住民や愛護団体のニーズやリソース等を踏まえて、限られた人的・物的行政リソース(人員と予算)の効率的・効果的な活用方法について、各自治体ごとに検討することが必要となっている。 なお、令和3年度の環境省の統計資料によると、引き取られた全ての犬猫の内、飼い主からの引き取りは犬が約9.8%(2,701頭)、猫が約23.4%(10,479頭)である。
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