手話の再評価と現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 10:02 UTC 版)
1960年にギャローデット大学の言語学者、ウィリアム・ストーキー(William Stokoe)は『手話の構造』を発表した。手話は劣った言語ではなく、音声言語と変わらない、独自の文法を持つ独立言語であるという内容だった。これをきっかけにして1970年代以降、手話を言語学としての研究対象とする学者が増えた。この時期に自然発生したニカラグア手話は「最も新しく発生した言語」と評価されている。現在では、言語学者の間で「手話が言語である」というのは常識になっている。 同時期に、当時の聴覚補償技術の限界もあり、口話法での教育の行き詰まりも各地で報告されるようになっていた。また、北欧で発生していったバイリンガルろう教育が刺激となり、手話法の見直しがなされた。現在の教育機関では程度はあれど、手話法を取り入れるところが増えている(日本聾話学校のように口話法のところもあるが、多くは口話法とも手話法とも決められない)。 アメリカで提唱されたろう文化(Deaf Culture)という考えがきっかけとなり、手話はろう者の言語であるということをろう者自身が認識していくようになった。一方で同じ聴覚障害者である難聴者や中途失聴者も次第に手話を使用するようになるが、ろう者の側からは「対応手話は手話ではない」といった偏見が生まれている。 日本では1995年、日本テレビ系列で放映されたテレビドラマ『星の金貨』がきっかけとなって、手話の存在が広く知られるようになった。これ以降、「君の手がささやいている」「愛していると言ってくれ」「オレンジデイズ」など、手話話者が登場するドラマ(手話ドラマ)が増えていった。 東京ディズニーシーでは、ショーの中にパフォーマンスの形で手話を取り入れることがあり、ミッキーマウスやディズニーの仲間たちが歌詞に合わせて手話を披露することもある。 歌手が自分の持ち歌の中で歌唱しながら手話を同時に行う例がある。有名なところでは前述の『星の金貨』の主題歌を歌うときの酒井法子、THE虎舞竜の「ロード」の高橋ジョージ、夏川りみが一部のテレビ番組で行うなどである。 2006年に採択された国連障害者権利条約に、2010年に手話が言語である旨明記された。ニュージーランドでは2006年に、パプアニューギニアと韓国では2015年に手話が公用語として認められているほか、フィンランドでは手話を使用する権利を憲法で保障するなど、手話を一つの言語として認める動きが世界的に広がりつつある。 富士通は1995年12月13日にパソコンで手話を勉強できるWindows対応のCD-ROMソフト「君の手がささやいている」を発売した。社会福祉法人トット基金(黒柳徹子理事長)の付帯劇団である日本ろう者劇団の米内山明宏代表が監修し、女優の西村知美が友情出演している。 上述ソフトウェアの一般向けに製品動態展示が行われたビジネスショウでは、日立による、CGキャラクタにより手話を表示するソフトウェアの実演展示も行われた。初出展時はプリセットされた表現のみの動作で、後に入力インタフェースからユーザーが入力した言葉に対応する手話を表現可能にアップデートされた。 2013年4月、KDDIが提供するauスマートパスで、手話サービスを提供開始。 2022年2月、マイクロソフトが発売するXbox One・Xbox Series X/S・Windows用レースゲーム「Forza Horizon 5」においてイベントシーンに手話通訳機能(アメリカ手話・イギリス手話のみ)の追加を行った。
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