広義の用法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:18 UTC 版)
コミンテルンの用法 「ファシズム」という用語は、単なる全体主義や軍国主義の意味で使われたり、特に社会主義の立場からの政治的なレッテル貼りにも多く使われた。たとえばドイツのナチスは「国家社会主義」を自称し、「ファシスト」「ファシズム」とは自称しなかったが、敵対する共産主義勢力のトロツキーやコミンテルンなどが、イタリアのファシズムを「イタリア・ファシズム」、ドイツのナチズムを「ドイツ・ファシズム」と呼び、更にスペインのフランコ政権なども対象として「反ファシズムの人民戦線」を組織した。このコミンテルンの用法に加えて、主として社会主義国や社会主義者の立場から、日独伊三国軍事同盟に参加した戦前の日本や、各国の軍事独裁政権なども「ファシズム(勢力、陣営)」などと呼ばれる事もある。中国共産党は2014年現在でも日本との戦争(日中戦争)に対して「反ファシズム戦争の勝利」と位置付けている。一方で、多くの歴史学者はファシズムをヨーロッパにおける共産主義や社会主義の台頭への反動とみている。多くの保守主義者に共産主義者の革命が避けられないとの恐れを与えた左翼による騒動の懸念から政権を得た。ヨーロッパ中で、資本主義者や個人主義者だけではなく、多くの貴族や保守主義者や知識人が、ファシストの運動に援助を与えた。 侮蔑語として 第二次世界大戦勃発までは、ファシズム自体が批判的に扱われることは少なく、一部を除いては悪口としては使用されなかった。第二次世界大戦中になると、連合国ではファシズム・ファシストを厳密な意味ではなく、枢軸国とその国民に対する一般的な悪口や蔑称として使用されるようになった。ジョージ・オーウェルは1944年に「"ファシズム" という語は、ほとんど全く意味が無い。ほとんどのイギリス人は "ファシスト" という語を "bully" (いじめっ子、ガキ大将)の同義語として受け入れている」と書いた。 第二次世界大戦で枢軸国が敗北すると、「ファシスト」を悪口や蔑称(ファシスト (侮蔑語))として扱う風潮は世界的なものとなった。そしてしばしば、政治運動に対して政治的スペクトルをまたがって幅広く呼ばれるようになった。政治学の論文では「ファシスト」とは通常は権威主義的な傾向を意味するが、政治的な左翼や右翼の両方の信奉者が敵対者を中傷するための軽蔑的な悪口としても使われている。リチャード・グリフィスは2005年に「ファシズム」の用語が「我々の時代に最も誤用され、過剰使用された」と述べた。戦前のファシズムは枢軸国の敗北とともにほぼ消滅したが、戦後もファシズムを再評価する組織や思想が登場しており、これらについて一般的な学術用語としては「ネオ・ファシズム」と呼ばれる。(ネオナチも参照)。 批判的な意味での派生語や造語には、イスラム原理主義への批判語であるイスラムファシズム、急進的なエコロジー運動への批判語であるエコファシズム、急進的な禁煙運動への批判語である禁煙ファシズム、あるいは類似のものでは急進的なフェミニズムへの批判語であるフェミナチなどがあるが、これらは必ずしも定着した用語ではない。
※この「広義の用法」の解説は、「ファシズム」の解説の一部です。
「広義の用法」を含む「ファシズム」の記事については、「ファシズム」の概要を参照ください。
- 広義の用法のページへのリンク