安全保障と地政学的課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 15:11 UTC 版)
「北極評議会」の記事における「安全保障と地政学的課題」の解説
「北極圏の地政学(英語版)」も参照 北極圏が加盟国やオブザーバーにとって特有の権益を持ち始めてから、北極評議会は時として安全保障および地政学的課題の只中にある。1996年に設立された際は、平和と安全の懸念は評議会の管轄外であった。しかし、北極圏の環境や評議会の加盟国における変化により地政学的諸問題と評議会の役割の関係性の再検討がなされた。 気候変動や北極圏の海氷融解のため、より多くのエネルギー資源と航路に今やアクセス出来るようになりつつある。北極圏内には石油やガス、鉱物などの多くの埋蔵量があり、こうした環境要因は加盟国間の領土問題を引き起こした。国際海洋法は、大陸棚が200海里を越えて広がっていることをその沿岸国が証明できれば、当該国にその(資源開発権を有する)排他的経済水域を広げることを認めている。各国は海岸線から最大限の距離でその経済水域を主張しており、グリーンランドとカナダの間に位置するいくつかの岩やハンス島とリンカーン海、米露の間にあるベーリング海とチュクチ海をめぐった論争がある。それに加えてある世論調査は、アメリカ人のわずか1割に比べて、カナダの回答者の半数がカナダはボーフォート海でのその完全な主権を主張しようとするべきだとした。北極圏を横断する新たな商用航路はもうひとつの対立要因となりうる。世論調査は、他国が北西航路を国際水路として認識している一方で、カナダ人はその航路を彼らの内部カナダの水路として認識していることを明らかにした。 常任オブザーバー数の増加は他の安全保障上の問題を生み出した。オブザーバーは北極圏への関心を示しており、中国はグリーンランドの天然資源を採掘したいという願望を明確に表明した。最終的に評議会加盟国の存在感を弱める可能性のある他の利益は何らかの手段で隠されている。軍事的インフラもまた考慮される点であり、アメリカを除いたカナダ、デンマーク、ノルウェー、そしてロシアの防衛責任は軍事的プレゼンスやインフラ建設により急速に高まっている。 しかし、加盟国間で起こりうる衝突にも関わらず、評議会は安定性を促進すると主張する声もある。ノルウェー海軍のHaakon Bruun-Hanssen(英語版)提督は北極圏について「おそらく世界で最も安定した地域である。」と述べた。関連法は充分に成立され守られていると言われており、加盟国は各国間の協力や良好な関係による北極圏の商用航路開発や研究などの分担費用が全ての国にとって有益だと考えている。 これらふたつの異なる観点から、北極評議会は平和と安全保障の問題を議題として含めることで、その役割を拡大すべきだと提案する者もいる。北欧諸国の3分の2の有権者が非核兵器地帯(としての北極)の諸問題にかなり協力的であることをある調査は実証している。ロシア人の8割以上は評議会が平和構築の課題を扱うことに賛成しており、彼らは評議会において安全保障上の課題を解決することは国際連合によるものよりも大幅に時間を短縮するだろうと考えている。しかし2014年6月現在、軍事安全保障問題は時として避けられている。科学調査と資源の保護・管理に重点を置くことが、地政学的および安全保障問題により希薄化または緊迫化しうる優先事項としてみなされている。
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