大阪市「インターネット赤ちゃんポスト」不許可に
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 00:50 UTC 版)
「赤ちゃんポスト」の記事における「大阪市「インターネット赤ちゃんポスト」不許可に」の解説
大阪府大阪市阿倍野区阪南町のNPO法人全国おやこ福祉支援センターが運営していた「インターネット赤ちゃんポスト」について、大阪市は営利目的であるとして2019年3月19日付で特別養子縁組あっせん事業の不許可を決定した。2018年4月の「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」(通称「養子縁組あっせん法」)施行により、養子縁組斡旋事業は自治体への届出制から許可制に変更されたが、民間あっせん事業が不許可とされたのはこれが初となる。 「インターネット赤ちゃんポスト」は「赤ちゃんマッチング コウノトリ」として、実母が要求する生活費などの条件を詳述して養親を募集し、養親希望者は月額利用料3000円のマッチングアプリを見て子供を探すシステムで、養親が払う金額はおよそ150万円から250万円程度であった。出産前から実母の生活費を養親希望者に負担させ、また実親が養子に出すのをやめた場合は支払われた生活費の返金を求めて撤回させにくくしていることから、「金銭で子供が手に入るシステム」「まるで人身売買」と専門家から問題視されてきた。同法では営利目的の養子縁組斡旋は認めず、民間事業者が養親希望者から徴収できる費用も法で定めており、実親の生活費を養親希望者に負担させることは違法となる。 同NPO法人は2018年9月21日付で大阪市こども青少年局子育て支援部こども家庭課に養子縁組あっせん事業許可を申請したが、市が実態を審査した結果、同NPO代表者が株主である「日本おやこ福祉支援機構株式会社」と一体で行う営利事業であること、無許可で全国各地の実態のない「支部」が事業を行っていることなどから事業を不許可とした。これにより、同NPO法人は2019年3月19日から養子縁組あっせん事業を休止した。 これに対しNPO法人は「大阪市の事実誤認と悪質なこじつけ」「不許可決定に対する不服申立を行い、裁判で争う準備を進めている」としている。だが裁判には時間がかかることから「特別養子縁組斡旋団体 開業新設フルサポート&100万円無利息融資しますの公募」として、公式サイトには「当団体は今後新たに特別養子縁組あっせん事業を行う個人や法人様にノウハウの提供や資金的援助、運営コンサルティングとして社会貢献をしていく方針を固めました。以下の条件で公募いたしますので、ご希望の方はこのページ下部の申し込みフォームよりお申込みください」などと記述されている。 また「インターネット赤ちゃんポスト」および同NPO法人に対しては、2015年に慈恵病院の公式サイトに「『赤ちゃんポスト』を語って特別養子縁組を募るサイトがあります。慈恵病院や「こうのとりのゆりかご」とは無関係です。」という記事が掲載され、無関係であるばかりか活動内容にも大きく隔たりがあることを厳しく指摘していた。 第1に同NPO法人が「中絶を考えられている方へ『産んでくれたら最大200万円相当の援助』があります」と謳っていることに対し、「赤ちゃんの命は大切ですが、当院の電話相談の際にお金を交換条件として提示する事はありません。」と反論している。第2にマッチングアプリという安易な方法で営利目的の養子あっせんを行っている点を挙げ、 ・実親さんは無料で登録されるが、養親候補さんには毎月課金される。・マッチングが成立すると50万円の負担金が養親候補さんにかかる。・広告を購入すれば養親候補の検索順位が上がるオプションも検討中。・このシステムにより年間に億単位の収益が見込まれる。なお、厚生労働省は営利目的のあっせんを禁止していますが、億単位の収益事業計画がそれに反していないか、議論されるべきだと思います。 — 「赤ちゃんポスト」を語って特別養子縁組を募るサイトがあります。慈恵病院や「こうのとりのゆりかご」とは無関係です。、医療法人聖粒会 慈恵病院公式サイト として批判している。第3に「代表者が3年程度で事業を売却予定とホームページで公言している」点も無責任であるとし、「今後不審なサイトを発見なさったときには情報をいただければ幸いです。」と結んでいる。 これに対して同年11月13日に同NPO法人の公式サイトに「熊本 慈恵病院の告知について」と題する反論が掲載されたが、現実には大阪市による養子縁組あっせん事業不許可による事業停止と、その後の丸投げ的な「開業フルサポート公募」なる展開により、慈恵病院の懸念と批判が現実化した形になってしまった。認定NPO法人フローレンス代表理事で内閣府「子ども・子育て会議」委員の駒崎弘樹は「このような不適切な事業を取り締まるための法律が正しく運用された」として、大阪市の不許可決定を高く評価している。
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