大量発生による被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 22:21 UTC 版)
「エチゼンクラゲ」の記事における「大量発生による被害」の解説
昭和時代より、定期的に大発生を繰り返して問題となっている。東シナ海や日本海で大発生しても、日本沿岸には海流の関係で流れてこない年もあるが、日本沿岸に流れてきた場合、巨大な群が漁網に充満するなど、底曳き網や定置網といった、クラゲ漁を目的としない漁業を著しく妨害する。2000年代以降では、2005年、2006年、2007年、2009年、2021年に大発生している。 エチゼンクラゲの毒は魚の皮膚で防御され、可食部には到達しないため、エチゼンクラゲに刺された魚を人間が食べても問題ないが、魚の皮膚に傷がついたり、巨大なエチゼンクラゲに圧迫された魚が網の中で死んだりして、このクラゲと一緒に捕らえられた本来の漁獲の目的となる魚介類の商品価値を著しく下げてしまう被害も出ている。また、人間が多少エチゼンクラゲに刺されても皮膚が多少ピリピリする程度で大した影響はないが、漁網に充満したエチゼンクラゲの巨大な群を毎日扱う漁業関係者などは毎日何度も刺されるため、皮膚がかなり痒くなったり腫れたりする。顔などのデリケートなところを刺されると痛い。 1958年、エチゼンクラゲが津軽海峡まで漂い、太平洋戦争時に設置された浮遊機雷と誤認されて青函連絡船が運行停止になったことがあった。 また、クラゲの大量発生により発電所での電力供給が制限される事態が頻繁に起きている。古くからクラゲ漁を行っていない地域では、販路の確保や将来の漁獲の安定の見込みもないままにクラゲ漁用の漁具や加工設備を膨大な投資を行って整備するわけにもいかず、苦慮している。 2000年代には毎年のように大量発生しており、その原因として、産卵地である黄海沿岸の開発進行による富栄養化、地球温暖化による海水温上昇、日本近海の沿岸開発による自然海岸の喪失でクラゲに適した環境になった、などの説が挙げられていた。特に、中国が1993年より開発を進めている三峡ダムが原因ではないかという仮説が立てられ、2006年より国立環境研究所などが検証を進めていた。また、魚類の乱獲によって動物性プランクトンが余ってしまい、それをエサとするエチゼンクラゲが大量発生、さらにはエチゼンクラゲの高密度個体群によって魚の卵や稚魚が食害されて、さらに魚類が減るという悪循環のメカニズムになっているのではないかとの指摘があった。2010年以降は逆にエチゼンクラゲが激減し、2011年には「東日本大震災で日本の原発が停止した余波」と言う説も出た。いずれも仮説の域を出ておらず、今後の研究の進展が待たれる(要するに、定期的に大発生したり、激減したりするが、人間の活動と関係があるのかどうかもよく解っていない)。 なお、オスのズワイガニを地域の誇りとして「越前がに」と呼ぶように地理的表示保護制度で登録している福井県では、「エチゼンクラゲ」は逆に名称が報道される度に福井県産の海産物のイメージダウンになることを危惧して「大型クラゲ」などと言い換えをするように報道各社に要望している。日本でエチゼンクラゲの監視に当たる漁業情報サービスセンターや水産総合研究センターなどでは、ビゼンクラゲ(スナイロクラゲ)とエチゼンクラゲを特に区別せずに「大型クラゲ」と呼称しているが、ビゼンクラゲの方は2010年代より高級食材として中国向けの輸出が増大し、乱獲によって有明海では2016年より漁獲規制が行われているほどであるため、大量発生して漁業に被害を与える大型クラゲは普通はエチゼンクラゲの方である。
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