大根島における溶岩洞成因の考察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 09:56 UTC 版)
「大根島の熔岩隧道」の記事における「大根島における溶岩洞成因の考察」の解説
大根島の火山は粘性に乏しい玄武岩質の流動性に富んだマグマであり、本洞は横幅があるわりに天井が低い、横断面が扁平な蒲鉾型(かまぼこがた)と呼ばれるタイプの溶岩洞である。 大根島中央にある同島最高標高点の大塚山(標高42.2メートル)は、噴火活動の最末期に火山灰を噴き上げてできたスコリア丘であるが、大根島の火山は活動期間中の排出物はマグマが主体で、火山灰や火山礫はほとんど見られなかったため、本洞を構成する岩盤には脆弱で崩れやすいスコリア質の部分を局部的にも全く持たず、そればかりか節理などによるクラックの発達も小さい。ただし詳細な目視調査により旧洞の「背擦り」と呼ばれる付近の天井部において、開口幅1センチから2センチ程度のごく小さいクラックを伴った剥離状の浮盤(ハンマーで叩くと乾いた音があり空洞の存在が疑われる個所)が6個所確認された。しかしこれらは周囲の岩盤と連続しているため安定が保たれており、落盤等の危険性は低いと考えられた。 本洞の防災面で問題となるのは洞内に常時滞った滞水で、前述したとおり今回の調査に先立ち排水が行われたものの、水位が下がった状態の水深は旧洞では30センチから40センチ、新洞はそれより深い50センチから80センチほどであった。この水の水位は近くにある遅江港の潮位と連動していることから、洞内の一部が中海の海底と連結している可能性が考えられている。 洞内の滞水中には、洞口から長年の間に流入した土砂などによるヘドロが、平均して15センチから20センチほど堆積しており、洞内壁面下部や底面の調査は不可能であった。 報告書には入洞者がこのヘドロに足をとられる危険性を指摘しており、ヘドロの浚渫の検討が必要であるものの、浚渫には多額の経費がかかるため、特に浸水の激しい新洞については当面の間、立ち入り禁止の措置をとることが望ましいと提言しており、仮に一般に公開する場合でも、水位を必要以上に下げる(過剰に排水する)ことは、これまで長期間にわたり水と接触してきた洞内環境を変えることになり、洞窟の強度に影響を与える可能性も否定できないとし、公開に当たっては、一般の入洞は許可制にし、安全確保のためガイドの同伴、ゴムボート等の使用を検討すべきであるとしている。 また、かつて本洞にはミミズハゼの一種であるドウクツミミズハゼ Luciogobius albus 通称「目無し魚」と呼ばれる洞窟性魚類が生息していたが、1952年(昭和27年)8月に確認されたのを最後に見られなくなり、2003年(平成15年)の富士山火山洞窟研究会の調査の時点でも確認することは出来ず、島根県の作成したレッドデータブックによれば絶滅に分類されている。 洞内の計測は水位と天井の低さから正確さに欠けるものの、一般的な火山洞窟簡易測量として設定した基線を中心に、左右上下の計測数値を元に簡易平面図、横断面図および縦断面図が作成された。その結果、環状(ループ状)の旧洞も直線状の新洞も、床面の構造がほぼ水平で斜度もほとんどなく、旧洞の「迷い路」と呼ばれる先端部のみに溶岩流入の痕跡が確認された。新旧の洞窟は2つの支洞で連結しているが、いずれも洞口付近で合流した高圧ガスが溶岩表層の下にガス溜まりと思われる形状をしており、新旧の洞窟は一体のものと考えらえる。冒頭に記した総延長206.6メートルはこの基線を元にした値である。一方、洞口付近には溶岩流の内部で発生したガスが集結して、一旦は固まった溶岩の殻を突き破って大気に放出された痕跡が多く残されており、本溶岩洞窟形成時の状況を知るうえで貴重なものであり、保存の必要性を指摘している。 これらのことから、大根島の熔岩隧道の成因は、ガス圧力で表層溶岩層を持ち上げて形成されたガス溜まりによる空洞であると結論付けられた。
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