南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説の意味・解説 

南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 12:35 UTC 版)

百済」の記事における「南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説」の解説

上にあげた『宋書』『梁書』や、『南史』などの歴代南朝正史百済遼西地方領土持っていたと記す。『南斉書』には該当する記述がないが、これは『南斉書』百済伝」の前半部が現存しないためであり、元来同一記述があったと推定される。ただし、『南斉書』には、北魏大軍をもって百済攻め百済東城王がこれを撃退したという記事がある。なお南朝最後の『陳書』は外国伝が全く欠けているため、陳で知られていた百済についての情報不明である。一方で『晋書』その後北朝側の記録にはこれに該当する記述一切登場しない一般的には北朝勢力及んでいた遼西地方を、朝鮮半島南西部根拠地持った百済高句麗領土挟んで支配するのは不可能と思われる。既に唐代以来中国学者はこの記述解釈悩んでおり、現代においても「奇怪な」説として史実とは見なされないこの伝承の形成について東洋史学者和田博徳は、南朝歓心を買おうとした百済北朝対す戦い事実捏造したことに端を発するという池内宏見解支持している。朝鮮史学者井上秀雄は、高句麗との対立のため遼西地方の政治勢力海路通じて連携したものであろうし、また可能性としては371年の対高句麗戦の余勢駆った百済が、前燕崩壊時の混乱乗じて一時的に遼西地方侵略することは十分にありうるともする。そして南朝側では、北朝への対抗上これをことさら誇張して記録したものと推定している。同じく朝鮮史研究者矢木毅は、和田主張するような百済による虚構宣伝によるというより、夫余百済混同した南朝修史官たちの杜撰によるとする韓国学者余昊奎らの研究が妥当であるとする。 矢木指摘によれば南朝から唐代にかけての中国史書には夫余百済混同した考えられるものがしばしば見られる。これは百済が「南扶余」を国号としたという『三国史記』、『三国遺事』記録とも関連している。矢木は自らの国号に「南」などの方角含める意味はないことから、これは百済自称ではなく後世から見た他称であり、元来百済使用した国号は単に「扶余であった考えられるとし、このため後世この両者歴史書の記述の中でしばしば混同されるようになったとする。事実として『梁書』新羅伝」には「新羅は、百済東南五千余里にある。」とあるが、実際の距離としては著しく過大である。つまりこれは、吉林省農安根拠地とした夫余北扶余)と百済(南扶余)を混同したのである考えられる。また『新唐書』百済伝」はその最後で「百済の地は、すでに新羅渤海靺鞨分割されており、百済はついに絶えた。」と記しているが、百済領が渤海分割され事実無論なく、これも実際に渤海分割された「百済の地」とは百済(南扶余ではなく夫余北扶余)を指していると考えられる矢木はこの混同こそが遼西領有説の土台となったのであるとする。吉林省位置した夫余国は285年鮮卑首長慕容廆攻撃受けて一時滅亡しその後西晋支援受けて四平周辺復興したが、346年に再び鮮卑慕容皝攻撃を受け、五万余口が慕容氏根拠地であった遼西地方強制移住させられている。遼西地方その後しばしば登場する余氏(餘氏)の勢力は、この時強制移住させられ夫余人々の子孫であると想定される。この遼西地方夫余存在こそが、その後百済(南扶余王族扶余ないし余を姓として用いた)との混同によって「百済遼西領有説」を生み出していったと考えられる。更にこの夫余百済混同は、百済が海を済って南下した夫余によって建国されたという『隋書』記録源流であるとも考えられる。 この混同中国の正史記録されたことで「史実」の中に組み込まれ後の時代中国朝鮮学者にも受け継がれることになった考えられる

※この「南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説」の解説は、「百済」の解説の一部です。
「南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説」を含む「百済」の記事については、「百済」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説」の関連用語

1
6% |||||

南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



南朝正史の記録と遼西領有説・渡海説のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの百済 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS