北朝鮮側の対応
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「北朝鮮による日本人拉致問題」の記事における「北朝鮮側の対応」の解説
この一連の拉致事件は長い間謎とされて来た。冷戦末期の1987年に発生した大韓航空機爆破事件の際の工作員金賢姫の証言から疑惑が浮上したが、国会においては1997年までは国交正常化等の議題になった際に懸案として出る程度であった。 1991年(平成3年)以来、日本政府は北朝鮮に対し拉致事件を提起していたが、北朝鮮側は否定し続けた。 日本では1977年に拉致された中学生横田めぐみ等に関する実名報道があってから、国会で取り上げられるなど、報道の頻度が爆発的に増えた。1997年には拉致被害者の救出を求める議員連盟が発足し、政府が7件10人の拉致被害者を認めた。北朝鮮側は「拉致は捏造」と主張し、北朝鮮系の在日朝鮮人の団体である朝鮮総連なども同様の主張をしていた。 2002年(平成14年)9月17日、小泉純一郎首相らが訪朝し日朝首脳会談を行った際に、金正日総書記は北朝鮮の一部の特殊機関の者たちが「現地請負業者」(土台人とみられる)と共謀して、日本人を拉致した事実を認め、口頭で謝罪した。これにより、5人の拉致被害者が日本に一時帰国し、間もなく本人たちの意思で日本に残ることとなった。 2004年(平成16年)5月22日、小泉の2度目の訪朝により、先に帰国していた拉致被害者の夫や、子供が日本への帰国を果たした。 しかし、2002年の首脳会談の席で、金正日は「部下が勝手にやったことだ」と北朝鮮が日本人拉致を初めて認め謝罪し、すでに拉致実行組織を解体、拉致を指揮した者を処分したと伝えたが、拉致の実行犯が現在でも英雄扱いされているなど、実際に処分等は行われていない。北朝鮮は、日本人拉致事件は解決していると主張している。 北朝鮮は「日本が解決済みの拉致問題を意図的に歪曲し誇張するのは、日本軍が過去に朝鮮人民に働いた犯罪を覆い隠す為の政略的目的に悪用する為だ」と主張している。一方で「日本が誠意を示せば、何人かは帰す」とも主張している。 北朝鮮は、日本政府が認定した拉致被害者17人のうち、残り12人について「死亡」あるいは「入境せず」として、「拉致問題は解決済み」と説明し、その後の協力を拒んでいるが、日本政府は「拉致問題の解決なしに国交正常化はありえない」との方針により、解決を目指して交渉を続けている。 「北朝鮮による日本人拉致事件」については、マスメディア・更に日本政府内でも、すべて「拉致」と総称しているが、刑法学上はすべて「拐取(海外移送目的拐取)」である。北朝鮮による日本人拉致においては、刑法上の「略取」に当たる事案(加害者による暴力行為を手段として、強制力により被害者の身体を拘束の上で移送した事案)と、「誘拐」に当たる事案(偽計を手段として被害者を騙す等によりその同意を得つつ、身柄を加害者の実力的支配内に置いた上で移送した事案)、国外移送時の状況が不明な事案に分けられる。少女拉致事案・アベック拉致事案・母娘拉致事案・鳥取女性拉致容疑事案は「略取」であり、欧州における日本人男女拉致容疑事案は「誘拐」である。宇出津事件・李恩恵拉致事案・辛光洙事件・元飲食店店員拉致容疑事案など土台人を介したものと見られる拉致事案については「誘拐」の可能性が高いが、国外移送から北朝鮮入国に至る状況の詳細は不明である。
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