利用制度とサービス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 15:09 UTC 版)
客は席まで案内される際に、おしぼりが手渡される。客は目当てのホストを指名すれば、そのホストによる接待を受けることができる。指名するホストは男メニューとも呼ばれる、ホストが掲載された一覧から選択することができる。接客中に他の客からホストが指名を受けると、その客のテーブルにまわる。その間は《ヘルプ》と呼ばれるホストが元々接待を受けていた客に接待を行う。同時間帯に同一ホストを指名する客を《卓被り》と称す。ホストを指名していない場合、接待役のホストは一定時間で交代する。接待は客とホストの1対1で行われるわけではなく、客と話すホスト、酒を消費するホスト、客にホストクラブで使うに十分な金を稼ぐことができる仕事を斡旋するホストなどが連携して、指名したホストと客の空間を盛り上げる。2022年1月7日に放送されたねほりんぱほりん(NHK)では、指名されたホストとヘルプがLINEで連携して客に金を使わせる様子が説明された。客はホストからは名刺をもらう。精算後は《送り指名》という、見送りを行うホストを選択して退出する。サービスを定額で一通りまとめた《クイック》と呼ばれる制度も存在する。 ホストクラブでは銀座のクラブにてみられる、《永久指名制》と呼ばれる制度を採用している。この制度により、一度指名したホスト(以下、担当)を変更することができない。これはホストの給与が基本的に歩合制で、ホスト自身が自営業者として店舗に場所代を払う形を取っていることによる。例外として、トラブルを起こした時と、指名したホストが離職した場合は変更が可能となる。こういった《指名替え》の場合、店舗はホストへの事実確認と、指名変更が行われる場合はわだかまりの残らないよう配慮が必要となる。店舗次第では《ヘルプ指名》、《場内指名》といったシステムを採用している店舗も存在する。ホストを指名していない客を《フリー》と称す。場内指名はフリーで付いたホストを客が気に入り、次のヘルプのホストへの変更を防ぐための指名で、本指名より指名料が廉価に設定されている。武岡はこの永久指名制がホスト側に接客の主導権を与え、客が売上によってホストの関心を買おうとする逆転現象の起因であると述べている。また、こうした仕組みと関連して《オラオラ系》と呼ばれる接客スタイルについても触れている。木島はホストクラブでは日常生活に見られる男性と女性の関係が捻じれて表出すると述べている。女性が男性を金で買うことから、決定権は女性客が保持している。その一方で、女性客が男性に対する金銭的奉仕を楽しむように、強い男性と弱い女性が誇張して表現されている。これはホストクラブ側では意図的に行われているものとなっている。2010年の実践女子短期大学の飯野智子のインタビューでは、ホストクラブでは女性客を楽しませるほか、冷静な判断力を失わせるよう制御する必要があるとされている。また、ホストの優位を絶対に崩さないことが必要ともされている。佐々木はホストクラブへ向かう目的が、サービスではなく指名するホストにあったと述べている。 担当を持つ客の中でも最も支払額が多い客は《エース》と呼ばれ、店舗の中で最も支払額が多い客は《店エース》と呼ばれる。エースはホストから優遇され、また同じホストを指名する客から嫉妬と羨望の対象となる。なお担当の離席中であっても、客の注文の売上は担当のものとして計上される。ヘルプは担当の離席中に客を楽しませるほか、注文を取って売上を伸ばすことが求められる。 客がホストを応援するという仕組みは、《シャンパンコール》や、《シャンパンタワー》に象徴される。ホストクラブでの販売価格が数万円から数十万円ほどかかるシャンパンを一瞬で消費することで、シャンパンを注文した客は、同じホストを指名する他の客より自分が多額の金額を払って担当を応援していることを誇示できる。武岡は、恫喝染みた接客やシャンパンコール、シャンパンタワーは風俗産業の閉鎖性を示し、接待サービスの根幹をなすものとなっている。 月末最終営業日は《締め日》と呼ばれ、その月で一番売上を達成したナンバー1が決まる。2022年5月7日放送の『カンニング竹山の土曜The NIGHT』ではラストオーダーまでのカウントダウンが表示される演出やシャンパンコールが次々に行われる様が放送された。 客による消費を促すため、ホストクラブでは大まかに4種類のイベントが開催される。 種類具体例個人の祝い事 生誕祭、昇格祭 季節の行事 クリスマス、バレンタインデー 店舗の祝い事 周年祭 企画 コスプレデー、浴衣デー 2021年に5億2,000万円の年間個人売上を達成したホストの降矢まさきは、1日の最高売上が達成されたのはバースデーイベントでの6,300万円で、12月に一人の女性客によって支払われたと述べている。バースデーイベントはシャンパンタワーなどで祝うため、ホストにとって稼ぎ時となっている。イベントは実際の誕生日と異なるタイミングで実施し、それとは別に実際の誕生日も祝われるため、二度売上を伸ばすチャンスが存在する。 それ以外には、《ラストソング》と呼ばれる一日の終わりにホストが歌うカラオケが存在する。一日あたり最高金額を売り上げたホストが、そのホストに一番金を支払った客の隣でカラオケを歌う。佐々木はラストソングによって普段売上でトップの座の争奪に参加できないホストや客の承認欲求が満たせると述べている。
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