他の心理療法との類似性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 05:26 UTC 版)
「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」の記事における「他の心理療法との類似性」の解説
ACTの他にも、弁証法的行動療法、機能分析精神療法、マインドフルネス認知行動療法など、アクセプタンスやマインドフルネスを基礎にしたアプローチはしばしば「第三世代認知行動療法」と呼ばれる。第一世代の認知行動療法、すなわち行動療法は、1920年代にパブロフによって発見されたレスポンデント条件づけやオペラント条件づけを基礎にして、行動が強化される過程に介入する治療法のことを指す。また、第二世代は1970年代に誕生し、行動療法のアプローチに認知療法を加え、非合理的な信念や非機能的な習慣、気分を落ち込ませる環境を変えていく治療法のことを指す。 スティーブン・ヘイズは1980年代末に第二世代認知行動療法の限界と哲学的な誤解に気づきACTを考案した。ACTでは、ふつうではない行動は内容や形態そのものではなく、行動が含まれる文脈において捉えられる。例えば、ACTは「個人が自分の問題を解決しようと決意して使う感情制御の多くはむしろひとをより大きな苦しみに巻き込んでいく」というようなことを示す。自分自身についてあまりに厳格な考えを持ったり、自分の人生に大事であることに焦点を合わせられなかったり、感じ方や考え方を変えようともがくことは、それ自体疲れることであり、その上、より大きな悩みを作り出す。 ヘイズはアメリカ行動認知療法学会の会長挨拶において第三世代の認知行動療法について次のように述べた。 実証的で原理的なアプローチに基づいて、第三世代の認知行動療法は、心理的事象を、それだけを取り出して捉えるのではなく、文脈や機能のなかで捉えることにとりわけ敏感になった。それゆえ、より指示的で教示的な戦略と比べて、文脈的な変化や体験的な変化を強調する傾向がある。これらの治療法が目指すことは、小さく狭められた問題に対して消去的な戦略をとるのではなく、より広く・柔軟で・効果的な行動のレパートリーを増やすことであり、さらにまた検討されている課題はクライアントと同様に臨床家自身にも関係があるということを強調する。第三世代はそれまでの世代の認知行動療法を再定式化し統合する。そして、より深い理解とよりよいアウトカムが得られることを期待して、従来対象外であった問題や課題に取り組む。 WilsonとヘイズとByrdはACTと依存症に対する12ステップアプローチの互換性について検討した。彼らによると、他の多くの心理療法と異なり、両者のアプローチは多くの共通点をもち、明示的にせよそうでないにせよ統合することが可能である。 共通点として、まず、どちらのアプローチも、生産的ではないコントロール戦略の代わりにアクセプタンスを推奨することがあげられる。ACTは心的体験に対する非効果的なコントロール戦略に頼ることに対する絶望感を強調するが、これは12ステップアプローチの依存症に対する無力感の受容と類似している。第二の共通点として、どちらのアプローチも、物質使用の消去という課題に問題を狭めるのではなく、人生全体にわたる方針変更を促し、クライアント自身の価値観に則った意味ある人生を長期的なプロジェクトとして築いていくことに大きな重点を置く。さらに第三の共通点として、どちらの治療法も、非伝統的で個人化されたスピリチュアリティの範囲内で、超越的な自己やハイヤーパワーといったものに対する感覚を養うことの有用性を強調する。最後に、どちらのアプローチも、受容が変化のために必要であるというパラドキシカルな事態を率直に認めることと、人間が考えられることには限界があるということを遊び心をもって自覚することを勧める。
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