介入戦略
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 08:57 UTC 版)
詳細は「アルツハイマー病の研究(英語版)」を参照 アルツハイマー病の研究者は、アミロイドに対する可能な介入戦略をいくつか発見している。 β-セクレターゼ阻害剤: これらは細胞内の小胞体でのAPPの最初の切断を防ぐ。 γ-セクレターゼ阻害剤 (セマガセスタット(英語版)など): これらは細胞膜でのAPPの2番目の切断を防ぎ、その後のAβと毒性断片の形成を止める。 選択的Aβ42低下薬剤 (タレンフルルビル(英語版)など): これらはγ-セクレターゼを調節し、Aβ42の産生を減少させて他の (より短い) Aβ断片の産生が起こりやすくする。 β-セクレターゼとγ-セクレターゼはAPPの細胞内ドメインからAβの産生を担うため、これらの活性を部分的に阻害する化合物が熱心に探し求められている。β-セクレターゼとγ-セクレターゼの部分的阻害を開始するためには、化合物はアスパラギン酸プロテアーゼの巨大な活性部位をブロックする必要があるが、それと同時に血液脳関門を通過する必要もある。 免疫療法: これはAβを認識して攻撃するよう、またはアミロイド斑の蓄積を防ぐかアミロイド斑やAβオリゴマーの除去を促進するよう、宿主の免疫系を刺激するものである。オリゴマー化は、個々の分子が有限個の分子からなる鎖へと変換される化学的過程である。Aβのオリゴマー化の防止は、能動的また受動的なAβに対する免疫化の一例である。この過程では、Aβに対する抗体は脳のアミロイド斑のレベルを低下させるために用いられる。アミロイドレベルの低下はミクログリアによる除去、またはペプチドを脳から体循環への再分配の促進によって行われる。現在臨床試験が行われているAβを標的とする抗体には、アデュカヌマブ、バピネウズマブ、クレネズマブ(英語版)、ガンテネルマブ、ソラネズマブ(英語版)などがある。 このうちアデュカヌマブはP3中止が発表された。CAD106やUB-311などのAβワクチンも現在臨床試験が行われている。しかしながら、文献レビューでは免疫療法の有効性に疑問が投げかけられている。10種類の抗Aβ42抗体を調査した研究では、各試験では最小限の認知保護効果しか得られていないことが示されており、試験が行われた時点では症状が進行し過ぎていたためであると考えられる。無症候性の患者に適用し疾患の進行の早期における有効性を評価するためには、さらなる開発が依然として必要である。 抗凝集薬剤 (アポモルヒネ、カルベノキソロン(英語版)など): カルベノキソロンは消化性潰瘍の治療によく用いられているが、神経保護効果も示し、言語流暢性や記憶固定といった認知機能を改善することが示されている。Aβ42断片に主に水素結合を介して強い親和性で結合することで、カルベノキソロンはペプチドが凝集する前に捕捉して不活性状態にし、また既に形成された凝集体を不安定化してそれらの除去を助ける。これは抗凝集薬剤に大まかに共通の作用機構である。 スタチンなどのコレステロール低下薬の長期使用はアルツハイマー病の発症率の低下と関連していることが示されている。APPが遺伝学的に改変されたマウスでは、コレステロール低下薬は病理の全体的に抑制することが示されている。その機構はあまり解明されていないが、コレステロール低下薬はAPPのプロセシングに直接的な影響を与えているようである。 ノルバリンはアルツハイマー病治療薬の候補となる薬剤である。ノルバリンはアルギナーゼ阻害剤であり、血液脳関門を容易に通過し、脳におけるアルギニンの喪失を低減させる。Aβの蓄積は、L-アルギニンの不足と神経変性とに関連している。ノルバリンを投与されたマウスは、空間記憶が改善し、神経可塑性関連タンパク質が増加し、Aβが減少した。 エルゴチオネインはトランスポーターOCTN1を介して血液脳関門を通過する水溶性アミノ酸である。エルゴチオネインにAβの蓄積阻害作用があることが示唆された。
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