インターネット・リサーチ・エージェンシーとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > インターネット・リサーチ・エージェンシーの意味・解説 

インターネット・リサーチ・エージェンシー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/08 07:43 UTC 版)

インターネット・リサーチ・エージェンシー英語: Internet Research Agencyロシア語: Агентство интернет-исследований)とはロシアの企業。略称IRAロシア政府に近いとされ、ロシアによるSNSを用いた世論操作を行った「オリギノのトロール工場」としても知られる。通称・グラヴセット(Glavset)。

概要

IRAは2013年7月ごろに設立された[1]。300 - 400人が年中無休の24時間体制で活動しており、ロシア語のほか、英語やウクライナ語など複数の言語で発信する部隊がある[2]

2014年4月ごろには「翻訳プロジェクト」と呼ばれる米国を標的とした部署を設けた。翌5月には米大統領選への介入戦略を掲げて、「候補者や政治システム全般への不信感を拡散させる」ことを目指した、とされる。米国を含む対外戦略などに当てる同社の予算額は、2016年9月には月額7300万ルーブルにのぼっていたという。「翻訳プロジェクト」と呼ばれる対米部署のスタッフは90人あまりで、月給は8万 - 12万ルーブルだったという[1]

IRAは偽のアカウントを取得するため、実在の米国市民の社会保障番号などを用いてなりすましを行い、PayPalに口座を開き、Facebookに政治広告を掲載していた。また選挙の前後に米国のアクティビティストを使って政治集会を開く、不正投票に関するフェイクニュースを流すなどしていた[1]

IRAの攻撃対象は、民主党候補のヒラリー・クリントン[3]、共和党の候補者争いをしたテット・クルーズマルコ・ルビオ[1]、元大統領のバラク・オバマ[4]などであった。

2018年、アメリカ大陪審によってロシア国籍をもつ13人とIRAを含む3団体が起訴された[5]

事務所

サンクトペテルブルク

2013年: サンクトペテルブルク、オリギノ、プリモルスカエ道131

北緯59度59分42.7秒 東経30度07分49.7秒 / 北緯59.995194度 東経30.130472度 / 59.995194; 30.130472

ノーヴァヤ・ガゼータによると、2013年8月末に、SNS上に次のメッセージが出回った:

「インターネットを操作する人募集! オリギノ(ストラヤ・デレブニア通り)のお洒落なオフィス!!! 月給は25960[ルーブル](2013年のレートで780USD)。業務:インターネット上のプロフィールサイトにコメントを投稿、ブログ・SNSにテーマの投稿を書く。 スクリーンショットで報告。一人で出来るスケジュール[…]シフト毎に1180[ルーブル]を毎週支払い(8時から16時、10時半から18時半、14時から22時)。毎週支払いで食事無料!! 職業安定所か(随意に)契約に応じて。指導可能。」[6]

報道と元従業員によれば、オリギノの事務所は2013年9月から存在し、活動していた。白い小屋の中にあり[7]、地下鉄ストラヤ・デレブニア駅から15分のところ、オリギノ駅の反対のところにあるという[6]トロール活動を行なっていた仕事場は地下室にあった[8][9][10][11][12][13]

2014年: サンクトペテルブルク、サヴシュキナ通り55

北緯59度59分03.5秒 東経30度16分19.1秒 / 北緯59.984306度 東経30.271972度 / 59.984306; 30.271972

ロシアのオンライン紙 DP.ruによると、2014年10月前の数ヶ月、オリギノからサブシュキナ通りのオフィスに移転した[14][15]。ジャーナリストによれば、建物は公式には未完成で、おおよそ2015年3月までその状態だったという[16][17][18]

ニューヨークタイムズの調査報道の記者によれば、インターネット・リサーチ・エージェンシーの略称はインターネット・リサーチであり、2015年6月には「建物全体に悪評が広まった」という理由でサブシュキナ通りのオフィスを「数ヶ月前に」立ち退くように言われた。もしかするとIRAの関連組織のFAN(Federal News Agency)がこのビルに入っていたかもしれない。ニューヨークタイムズの記事には、サヴシュキナ通りのオフィスにいたIRAの元従業員が伝える、様々な体験が掲載されている。また「コロンビアの化学工場が爆発した」虚報のような、アメリカやヨーロッパで混乱を起こすような虚報は、IRAや似たようなロシアの団体によって引き起こされているかもしれない[19]

その他の都市

ノーヴァヤ・ガゼータによれば、オリギノのオフィスの所長のアレクセイ・ソスコヴェツは、北西サービス局(North-Western Service Agency)は2013年に、似たような業務のためにモスクワや他の都市で従業員を雇ったと発言している[20]

脚注

  1. ^ a b c d ロシアの「フェイクニュース工場」は米大統領選にどう介入したのか”. ハフポスト (2018年2月20日). 2019年2月21日閲覧。
  2. ^ ロシア、SNS工作拡大か 欧州社会分断あおる”. 日本経済新聞 電子版. 2019年2月21日閲覧。
  3. ^ 山下竜大,ITmedia (2022年10月18日). “ハイブリッド戦争は日本にとっても他人ごとではない――慶應義塾大学 廣瀬陽子教授”. ITmedia エグゼクティブ (アイティメディア株式会社): p. 2. https://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/2210/18/news017_2.html 2022年10月26日閲覧. "最も大きな成功を収めたのは、IRAが2016年の米国大統領選挙で行った反クリントンキャンペーンである。このとき1人10個以上のアカウントを持ち、書き込みを継続した。これにより、次第に一般人も拡散を始め、結果としてクリントンが敗北した。" 
  4. ^ 平, 和博 (2017年9月11日). “ロシア「フェイク工場」が工作、フェイスブックへの1000万円広告の影響度”. ハフポスト. 2019年2月21日閲覧。
  5. ^ 米大陪審、ロシア人13人・3団体を起訴 大統領選干渉疑惑で」『Reuters』2018年2月16日。2019年2月21日閲覧。
  6. ^ a b Где живут тролли. Как работают интернет-провокаторы в Санкт-Петербурге и кто ими заправляет” (ロシア語). Новая газета - Novayagazeta.ru (2013年9月9日). 2019年2月21日閲覧。
  7. ^ СМИ: Под Петербургом за умеренную плату ругали Навального”. ЛенИздат.ru. 2019年2月21日閲覧。
  8. ^ “Тролль из Ольгино: Над Лукашенко отрывались как могли [Troll from Olgino: After Lukashenko, came out as best as they could]” (ロシア語). Khartyia'97. (9 September 2014). http://www.charter97.org/ru/news/2014/9/9/114920/ 12 June 2016閲覧。 
  9. ^ Де живуть тролі у РФ: як працюють інтернет-провокатори в Санкт-Петербурзі і хто ними заправляє (ウクライナ語). finance.ua. 5 March 2014
  10. ^ Где живут тролли. Как работают интернет-провокаторы и кто ими заправляет (ロシア語). TsenzorNet. 10 September 2013
  11. ^ Где живут тролли. Как работают интернет-провокаторы в Санкт-Петербурге и кто ими заправляет (ロシア語). Novaya Gazeta. 9 September 2013
  12. ^ Американці розпочали полювання на проплачених Кремлем інтернет-тролів (ウクライナ語). zik.ua. 5 June 2014
  13. ^ De är Putins soldater på nätet (スウェーデン語). DN.se. 5 February 2015
  14. ^ Sofia Korzova (28 October 2014). “СМИ: "Ольгинские тролли" стали "савушкинскими" ['Trolls from Olgino' have become 'savushkinskimi']” (ロシア語). Lentizdat. https://lenizdat.ru/articles/1124598/ 12 June 2016閲覧。 
  15. ^ “Тролли из Ольгино переехали в новый четырехэтажный офис на Савушкина [Trolls from Olgino moved to a new four-story office on Savushkina]” (ロシア語). DP.Ru. (28 October 2014). http://www.dp.ru/a/2014/10/27/Borotsja_s_omerzeniem_mo/ 12 June 2016閲覧。 
  16. ^ Diana Khachatryan (11 March 2015). “Как стать тролльхантером [How to become a troll-breaker]” (ロシア語). Novaya Gazeta 24. http://www.novayagazeta.ru/inquests/67574.html?p=10 12 June 2016閲覧。 
  17. ^ Тролли из Ольгино переехали в новый четырехэтажный офис на Савушкина (ロシア語). dp.ru. 28 October 2014
  18. ^ СМИ: «Ольгинские тролли» стали «савушкинскими» (ロシア語). Lentizdat.ru. 28 October 2014
  19. ^ Chen, Adrian (2 June 2015). “The Agency: From a nondescript office building in St. Petersburg, Russia, an army of well-paid 'trolls' has tried to wreak havoc all around the Internet – and in real-life American communities”. The New York Times Magazine. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2015/06/07/magazine/the-agency.html 3 June 2015閲覧。 
  20. ^ Где живут тролли. Как работают интернет-провокаторы в Санкт-Петербурге и кто ими заправляет” (ロシア語). Новая газета - Novayagazeta.ru (2013年9月9日). 2019年2月21日閲覧。

関連項目


インターネット・リサーチ・エージェンシー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/27 06:41 UTC 版)

エフゲニー・プリゴジン」の記事における「インターネット・リサーチ・エージェンシー」の解説

詳細は「インターネット・リサーチ・エージェンシー」を参照 プリゴジンはインターネット・リサーチ・エージェンシー・リミテッド(Агентство интернет-исследований)と称する会社を含む企業ネットワーク資金提供し、管理したとされる、コンコルド・マネジメント・アンド・コンサルティング・カンパニーと他の1つ関連会社含まれる。この3社は2016年のアメリカ大統領選挙ロシア国外政治イベントその他の活動いわゆる荒らし影響与えたとして告発されている。 ロシアジャーナリスト、アンドレイ・ソシニコフは、ロシア若者政治コミュニティ参加していたアレクセイ・ソスコヴェツが、オルジーノのインターネット・リサーチ事務所直接の関係があると報じた。ソスコヴェツの会社、ノースウェスタン・サービス・エージェンシーは、サンクトペテルブルク当局のために祝賀会フォーラムスポーツ大会組織するための17または18契約情報源によって異なる)を獲得した。この会社はこれらの入札半分唯一の参加者だった。2013年の夏、代理店はセリガーキャンプ(現在は連邦青年主催)の参加者貨物サービス提供するための入札獲得していた。

※この「インターネット・リサーチ・エージェンシー」の解説は、「エフゲニー・プリゴジン」の解説の一部です。
「インターネット・リサーチ・エージェンシー」を含む「エフゲニー・プリゴジン」の記事については、「エフゲニー・プリゴジン」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「インターネット・リサーチ・エージェンシー」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「インターネット・リサーチ・エージェンシー」の関連用語

インターネット・リサーチ・エージェンシーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



インターネット・リサーチ・エージェンシーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのインターネット・リサーチ・エージェンシー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのエフゲニー・プリゴジン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS