介入資金の枯渇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 04:34 UTC 版)
政府金融当局が為替介入を行っている際、信用不安や外国為替取引により自国の為替レートが急激に下落することで政府金融当局の外貨準備残高が枯渇することがある。この場合、あらかじめ定められた一定のレートにより、協定相手国の中央銀行よりドルまたは相手国の通貨を融通してもらう約束をすることによって、為替レートの一時的かつ急激な変動を阻止することが可能となる。ここで通貨防衛のために自国通貨買いの介入を行うのは、自国通貨が急落することで相手国通貨建ての債権価格が急騰してしまい、結果として借換不能によるデフォルトが発生することを阻止するのが一義的な目的である。 実際に外貨が必要な際には、自国通貨を担保として協定金額の範囲内で他国の中央銀行より外貨を借り入れることができる。借入国はこの外貨を協定で定められた範囲の国際決済や為替介入に使用することが可能となるが、これはあくまで短期的な借り入れであり、協定によって定められた短い期間内に返済が求められる。 スワップ協定は、通貨危機の際には一時的な外貨準備の増加であると捉えることが可能であるが、自国の資本を使用する外貨準備とは異なり、あくまで他国から借金をして得た一時的なものであるため、介入資金として使用してしまった場合は危険で、金融当局が為替変動によるリスクを直接負担することになる。スワップ協定ではあらかじめ定めた期限までにこれを返却する必要がある。従って、スワップ協定を使用したあとさらに自国通貨が下落した場合には、返済するために協定相手国の通貨を市場で調達する際にさらなる為替差損を蒙る可能性がある。このため、通貨スワップ協定には限度枠の一定以上(チェンマイ・イニシアティブでは30%)を超える実施の際には、国際通貨基金による融資を義務付ける条件が課されるのが通例である。 為替介入国が通貨防衛を行っている際のスワップレートは、絶好の攻撃対象となるため公開されない。またアジア通貨危機以降、外貨建て債券を防衛するための自国通貨買い介入の危険性が認識されるようになったが、金融危機が発生するたびに、資本収支黒字(借り超)国の通貨が攻撃を受ける傾向は改善されていない。 アジア通貨危機以降、自国通貨に信用の無い各国は為替安定のため、信用のある国際通貨を持つ国とのスワップ協定を成立させることによって、自国通貨の信用不安を防止しており、二国間協定や、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)などの通貨バスケットによる引出権を使った手法など、さまざまな協定を結んでいる。 2005年には、日本、中国、韓国、ASEAN諸国の間で、通貨スワップ協定が結ばれている。
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