人間との対局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 03:22 UTC 版)
詳細は「#人間との対局の歴史」および「将棋棋士とコンピュータの対局一覧」を参照 2000年代前半には、コンピュータ将棋が平手でトッププロ棋士を破る日はさほど遠くないと考えられていた。松原仁は2005年の時点で、2010年代から2020年までにプロ棋士がコンピュータ将棋に負けると予測し、また、コンピュータ将棋協会会長の瀧澤武信も、2007年の時点で10〜20年後にコンピュータがプロ棋士を上回ると予想していた。 2011年には、米長邦雄によると、1手30秒などといった早指しならプロ棋士に対しても7〜8割以上の勝率をあげるまでになっている。2012年発行の『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』では、「数年以内にトッププロ棋士に勝つ(複数回対戦し勝ち越す)」と予想された。2013年3月30日の第2回将棋電王戦において、ponanzaが佐藤慎一に勝利した。これは長い持ち時間(各四時間)・公開対局・相手が現役の女流を除いたプロ棋士という条件で初めてコンピュータが人間に勝利した事例となった。 Puella α(ボンクラーズ)開発者の伊藤英紀は第2回将棋電王戦PVでは2012年現在、既にプロ棋士を超えているとコメントした。やねうら王の開発者・磯崎元洋は2014年に「上位のソフトは事前貸出なしの条件であればとっくに羽生さんを超えていることは誰の目にも明らかである。超えているとは言ってもソフト側から見て勝率が50パーセントは超えるだろうという程度の意味で、勝率が90パーセントとか100パーセントとかではないので試合としては成立すると思うが…」と述べた。 トップ棋士の一人である渡辺明は、第2回将棋電王戦第3局に登場したツツカナについて触れ、「現役棋士約160人の半分 (80) 、いや3分の1以上 (50) に相当する力がある、という見方をせざるを得ない」との見解を示した。松原仁は2015年10月に「羽生さんとの対局が実現していないのは残念だが、数年後には人間が全く相手にならなくなるのは確実で、人間との対決を掲げたコンピューター将棋開発の時代は終わったと考えている」と述べた。 ドワンゴの川上量生は2017年に行われる第2期電王戦をもって電王戦の終了を発表した。終了について「人間とコンピュータが同じルールで真剣勝負をするという歴史的役割は終わった」としている。この第2期電王戦では佐藤天彦名人 (当時) がponanzaと対局した。結果は佐藤の2連敗となり、これはコンピュータが現役の名人位保有者に平手で勝利するという、公開対局としては史上初めての事例となった(詳細は将棋電王戦#第2期電王戦を参照)。 羽生善治は2014年に、「将棋がコンピュータによって完全解明されてしまったらどうするか」という質問に対して「そのときは桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えればいいんです」と答えた。ただし、ルールを変えてもコンピュータは進歩し続けるので、いずれは対応されてしまうという問題がある。コンピュータが人間を超えたチェスにおいて、新ルールの「アリマア」というゲームが考案されたが、2015年にコンピュータプログラム「Sharp」が7勝2敗で人間を破っている。 将棋よりも早くコンピュータが人間を超えたオセロでは、人間の戦術がコンピュータに強く依拠するようになった。強豪オセロプレイヤーの中森弘樹は、コンピュータが人間を超えたことでゲームとしてのオセロの娯楽性は大きく失われたものの、オセロのゲーム性は「最善手という真理を人間が追求する」方向から「コンピュータの弾き出す真理を人間が資源として活用する」方向へ変質したのであり、人工知能は人間同士の駆け引きを決して奪ってはいないと指摘した。一方で、将棋とオセロとでは条件が大きく異なることから、将棋でも同じことが起こるかは断言できないとした。 2017年、藤井聡太は「人間と比べるとコンピューターの能力の進化は限度がないです。そういう意味では人間とコンピューターが勝負する時代ではなくなったのかなと思います」と述べた。
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