事故発生から収束まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 04:27 UTC 版)
「北炭夕張新炭鉱ガス突出事故」の記事における「事故発生から収束まで」の解説
記載の日時はすべて日本標準時(JST)を用いている。 1981年(昭和56年)10月16日12時41分ごろ、海面下810メートル(坑口より約3000メートル)にある『北部区域北第五盤下坑道』の掘進作業現場付近で大規模なガス突出事故が発生。地上の総合事務所内にある集中監視室のメタンガスセンサーに異常値が出ていることを確認したことから、坑内の検査員と連絡をとって事故発生を確認。坑内では下請け企業の坑内員を含め838人が入坑しており、北部方面では事故が発生した北第五盤下坑道の95人をはじめ160人が一番方として作業を行っていた。会社は地上から全坑内員に退避命令を出し、近隣の北炭幌内炭鉱・北炭真谷地炭鉱へも応援を求め、計50名からなる救護隊が組織され救出作業を開始した。77人は自力脱出、または救護隊によって救出されたが、救護隊により33名が遺体で収容されたほか、坑内で10名の死亡を確認している。死亡者の多くは脱出中に坑道内で倒れていたところを救護隊によって発見された。死因はいずれもメタンガスを大量に吸ったことによる酸欠死、および粉塵による埋没死とみられた。死者の中には現職の夕張市議会議員も含まれていた。当時の北海道新聞によると、札幌鉱山保安監督局などが救出された坑内員や入坑した救護隊員などからの調査として、北第五盤下坑道後向切羽から約100メートル手前に崩落現場があり、大量の粉塵で坑道がふさがっていたうえ、ガスが走りぬけた痕跡もみられたことから、当初はこの付近が突出現場とみられていたが、18日までに突出現場を北第五盤下坑道の第一立入ゲート付近と断定。同坑道は突出警戒区に指定されていたが、事故発生前の10月16日午前10時40分に発破作業が行われていた。 16日23時30分頃、北第五盤下坑道後向切羽付近で坑内火災が発生、地上と坑内を無線で連絡していた救護隊員5名・夕張新炭鉱の保安上席係員5名、および一度は生存が確認されていた15名との無線連絡が途絶え、二次災害となった。このとき二次災害に巻き込まれた救護隊員は酸素マスクなどの防備をしていなかったことが、後に判明している。当時の北海道新聞によると、この時点で会社は「被害を最小限に食い止めるため」として坑道内への注水を検討していると報じられている。翌17日未明、会社側は注水の同意を取り付けるため労働組合や不明者の家族と話し合いを行ったが、注水は坑内にいるこれらの不明者を見殺しにする措置の為、安否不明者の家族から「人命切捨て」との猛反発を受け、会社側は注水方針を一度は撤回。再び救護隊を坑内に派遣し、新たに1人の遺体を収容した。 しかし、火災による高熱に加え大量の黒煙とガスが充満していた坑内では事故発生から3日目の18日になっても小爆発が発生しており、火災も収まる兆しがなかったことから救助活動は進展せず、会社側は18日昼で救護隊の入坑を中止。家族の了解を取り付けたうえで坑内最深部への通気を止める仮密閉を実施した。仮密閉後も救急用圧縮空気は供給されていたが、この時点で坑内に取り残されている安否不明者の生存可能性は絶望視されていた。結局仮密閉でも火災は収まらず、会社側は再び注水による鎮火の検討に入った。 事故発生から6日目の10月21日、会社は59名の安否不明者に生存の可能性はないと判断し、同日に行われた家族への説明会で当時の社長林千明ら幹部は注水への同意を要請。不明者の家族は「命をよこせというのか」と激怒したが、林は「お命を頂戴いたします」と発言。翌22日には幹部らが不明者宅を戸別訪問し、この日までに全家族から同意書を取り付けた。 10月23日は注水に先立ち9時30分に救護隊員が入坑し、注水地点の傍らに菊やグラジオラスの花束を供えた。13時30分にサイレンが吹鳴されるとともに関係者が黙祷。その後59名の安否不明者がいる坑内にペンケ真谷地川から引かれた水が流し込まれた。夕張市内でも市役所や学校などで一斉にサイレンが鳴らされ、全市民が黙祷したという。注水によりようやく鎮火した坑内では排水後に遺体の収容作業が再開されたものの、注水で資材が水没していたり坑道も歪むなど荒れ果てていたため、遺体収容・確認作業は難航。最後の遺体が収容されたのは事故から163日後の1982年(昭和57年)3月28日であった。最終的な死者数は93人にのぼった。
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