世界の有病率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 22:56 UTC 版)
国立病院機構久里浜医療センター樋口進のまとめによれば、各国のギャンブル等依存症が疑われるものの割合は以下。 オーストラリア(2001年、276,777人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い:SOGSについては下記参照)が男性2.4%、女性1.7%。 オランダ(2006年、5575人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い)1.9%。 米国(2001年、2683人対象、SOGS5点以上、「この一年」での疑い)1.9%。 香港(2003年、2004人対象、DSM-IVによる(生涯))1.8%。 フランス(2011年、529人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い)1.2%。 スイス(2008年、2803人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い)1.1%。 カナダ(2005年、4603人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い)0.9%。 英国(2000年、7680人対象、SOGS5点以上、「この一年」での疑い)0.8% 韓国(2010年、5333人対象、DSM-IVによる(生涯))0.8%。 スウェーデン(2001年、7139人対象、SOGS5点以上、「この一年」での疑い)0.6%。 スイス(2008年、2803人対象、SOGS5点以上、「この一年」での疑い)0.5%。 イタリア(2004年、1093人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い)0.4%。 ドイツ(2009年、10001人対象、SOGS5点以上、「生涯」のうちでの疑い)0.2%。 2013年5月に改訂されたDSM-5では、「この1年のギャンブル障害の有病率」は一般人口の約0.2〜0.3%、「生涯有病率」は約0.4〜1.0%。女性の生涯有病率は約0.2%、男性約0.6%。アフリカ系アメリカ人の生涯有病率は約0.9%で、白人では約0.4%、ヒスパニック系では約0.3%と表記している。 Griffithsらは、2000年以降、大人の問題または病的ギャンブリング(ギャンブル障害)を調査した研究で、問題または病的ギャンブリング(ギャンブル障害)をアセスメントする標準化された方法を用いており、500名以上が参加し、高齢者、学生といった限定的な調査ではなく全国調査と呼べるものを収集。30か国、69件の研究が選択され、その結果をまとめると以下。同じ国で複数の報告がある場合、最近の研究で代表。 生涯有病率(生涯のどこかでギャンブル障害の疑い) 12か国の報告、デンマーク(2006)0.5%~韓国(2010)3.8%。 平均1.51%、中央値1.05%。 日本の3.6%(久里浜、2017)は、12か国では2位相当、韓国、エストニア並みに高い。 ただし、ギャンブル障害を議論する場合、生涯有病率は累積的に増えるべき数字であり適当でない。 過去一年有病率(最近一年間でのギャンブル障害の疑い) 17か国の報告、オランダ(2011)0.15%~南アフリカ(2001)4.80%。 平均、0.83%、中央値0.40%。 日本の0.8%(久里浜、2017)は、17か国中で7位相当、スウェーデン、オーストリア並み、平均的もしくはやや高い。パチンコ分の補正を行うとより平均的。 回復率((生涯有病率-過去一年有病率)÷生涯有病率×100で算出) 生涯有病率、過去一年有病率がそろっていたのは7か国。 フィンランド(2007)38%~オランダ(2006)70%。 平均57%、中央値56%。 ここでいう「ギャンブル等依存症の疑い」があるとは、DSM-5(ギャンブル障害とは、を参照)でA基準が4個以上相当を指す。つまり、軽度以上が「疑い」であり以下の二基準がよく当てはまる(DSM-5)。 しばしば賭博に心を奪われている(A基準4) 失った金を“深追いする” (A基準6) しかし、「深追い」は「いわゆるギャンブル依存症の疑い」がなくても見られ(単独では「疑い」の判別力が小さく:以下同様)、また、 賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかった(A基準3) も「疑い」がなくてもよく当てはまる。同じく、 苦痛の気分(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い(A基準5) はストレス解消行動としての娯楽では当たり前に当てはまるので「疑い」がなくても当てはまる。つまり、 失った金を“深追いする” (A基準6) 賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかった(A基準3) といった、「ギャンブル等依存症の疑い」がなくても当てはまる基準に加えて、 しばしば賭博に心を奪われている(A基準4) 賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく(A基準7) の、思考のとらわれや、嘘・隠し事といった「ギャンブル等依存症の疑いがない人」ではあまり選択されない項目が加わって「(軽度以上の)ギャンブル等依存症の疑い」となる。そしてこの状態は、どのようなレジャーや娯楽、趣味でも、「のめり込んでいる」レベルで十分生じうる。このレベルを「(軽度以上の)疑い」と呼んでいる。 マスコミ等で紹介されるいわゆる「ギャンブル等依存症」の例、賭博のために対人関係や職業上の機会を危険にさらす(A基準8)、賭博で失った金を出してくれるように他人に頼む(A基準9)が繰り返し当てはまるのは、中等度から重度(主に重度)。 また「「生涯」のうちでの疑い」とはこうした基準が、生涯のどこかのある12ヶ月であてはまった、またはこの12か月であてはまっていることをいい、「「この一年」での疑い」はここ12ヶ月で当てはまる場合をいう。したがって、「「生涯」のうちでの疑い」は死亡、人口移動等がない限り増える一方であり、ギャンブル等依存症の予防対策等の効果を考える場合などでは「「この一年」での疑い」の変動で議論すべきであろう。
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