ボナヴェントゥラの思想とは? わかりやすく解説

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ボナヴェントゥラの思想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 11:38 UTC 版)

ボナヴェントゥラ」の記事における「ボナヴェントゥラの思想」の解説

ボナヴェントゥラ哲学者として姿勢同時代のもう一方の雄であるトマス・アクィナスロジャー・ベーコンとは際立った対称性示している。それはアクィナスらが、きわめて初歩的なものながら科学的思考とりいれアリストテレス思想にもとづくスコラ学完成させたのに対しボナヴェントゥラスタイル神秘主義的プラトン思考スタイルを示すということにある。これは系統的にサン・ヴィクトルのフーゴー、サン・ヴィクトルのリカルドゥスクレルヴォーのベルナルドゥスといった人々属している。彼の思想には純粋知性というものがないわけではないが、それほど重要なものでなく、それより生の力や愛情といったもののほうが重視されているのである。彼はアリストテレスへの傾倒批判的であり、異端的なものが含まれていると考えていた。実際に世界永遠性に関してアリストテレス思想の影響受けていた枢機卿たちと激しい論戦繰り広げている。だが、ここで気をつけないといけないのは、彼が影響受けたプラトン思想は、原典にもとづいたプラトン思想ではなく、あくまでアウグスティヌス理解によるプラトンであったこと、あるいはアレクサンドリア学派由来し偽ディオニシウス・アレオパギタ理解によるプラトンであったということであったボナヴェントゥラ理解したプラトン思想イデア自然物中には存在しないが、実体イデア創造者たる神の御心)にそってつくられているというものであった。他のスコラ哲学研究者たちと同様、ボナヴェントゥラはまず理性信仰の関係という問題から検討始めた。ボナヴェントゥラの思想は以下のようなのである科学というのも結局は神学還元することができるものであり、理性キリスト教思想からある程度道徳的真実見出すことができるが、基本的に神からの「照明」(照らし)がなければそこに到達できない。魂が真実にたどりつくために欠かせないこの照明を得るために、祈り、魂の鍛錬黙想によってもたらされる神との一致必要になる人生究極目標はまさにこの神との合一にある、黙想知的なもの、強い愛のうちにある神との合一、そこへたどりつくことは人生の中では困難であるが、未来への希望として残る。神のことを思う魂は三つ側面あるいは段階持っている。それはまずこの世界みられる神のしるし(Vestigia)についての経験知もたらす感覚の段階次に神に似せてつくられた魂そのもの吟味する理性段階最後に神をあおぎみる純粋知の段階である。 この三つの神との一致段階から、三種神学生まれてくる。それは象徴神学固有神学神秘神学である。おのおのの段階はさらに細分化しうるものである。それは感覚想像を超えた世界考えることで可能であり、いうなれば神のしるしによって、あるいは神のしるしのうちに神への知識にたどりつきうる。第一のものには物質存在三つ特性重さ、量、長さ含まれ被造物第二のものには物質存在超える存在、すなわち命を持ち思考持ち三位一体の神への思いにわれわれを導くものである。そのため第二段階においては理性用いた想像、あるいは純粋知性による想像うちにわれわれは神知にたどりつきうる。第一場合三つ分類、たとえば記憶理解意志、あるいはキリスト教三つの徳である信仰希望・愛のようなものが三位一体の神へとわれわれの思い導いていく。 最後段階において、われわれは純粋知性持ってそのもの観想し、非存在存在の不足であり、存在なしに成立しないという思考必然性によって第一概念である神そのもの見出すことができる。この完全存在概念はすべてにまさって完全なもので存在よりどころである。この最高段階に至って初めて魂は神の無限の善良さのうちに安らぎ見出す。この神の善良さ人間の最高の能力である「最高精神」(Apex mentis)あるいは「シンデレーシス」によって理解されるのである。 神の「照明」という概念神秘神学ではよく用いられる考え方であるが、ボナヴェントゥラは特にこの言葉キリスト教的な意味を付け加えた精神および魂がかくも完全に神にたどりつくことは恩寵なしには達成しえない。そしてこの恵み観想の中で、修得生活、観想生活の中でこそ得られる観想生活は恩寵への最高の道である。 ボナヴェントゥラの著作はすべて観想のよい手引きになりうるが、決し単なる観想家ではなかった。彼はきわめて高度な教義理解展開し普遍について、個物について、個の理論について、純粋知についてなどスコラ哲学的なテーマをよく研究し深く掘り下げている。ボナヴェントゥラ神学実践的な学問であると考えたアルベルトゥス・マグヌス共感示し彼の視点からみればそのことが愛につながるのであるボナヴェントゥラまた、自然と神性寄与するところのものについて慎重に検討し宇宙創造主たる神のみこころにそったものである結論している。そして事物個性を神から受け、神の創造力によって形成される純粋な可能性であり、イデアによってふるまうものであるため純粋知と別個に存在するものではないとらえている。このようなスコラ学的な思考法において「熾天使博士」は穏健さ巧妙さ併せ持っている。これこそが彼の最大特徴であるといえるだろう。

※この「ボナヴェントゥラの思想」の解説は、「ボナヴェントゥラ」の解説の一部です。
「ボナヴェントゥラの思想」を含む「ボナヴェントゥラ」の記事については、「ボナヴェントゥラ」の概要を参照ください。

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