ブラックホール
ブラックホールに入ったら物質は2度と外に出られなくなる
ブラックホールとは、重力が強いために光さえ脱出できない天体をいいます。太陽の8倍以上の質量をもった星では、その進化の最終段階で超新星爆発を起こし、星の外層部を吹き飛ばしますが、逆に中心核は重力収縮します。この中心核の質量が太陽の2~3倍に達しない場合は中性子星になりますが、それ以上の場合、自分自身の強い重力のために星を支えることができなくなります。そして最後には重力崩壊し、物質が外に飛び出せない領域(ブラックホール)をつくるのです。
重力バランスの崩壊がブラックホールを形成する
一般相対性理論によれば、ブラックホールは光さえも重力に引きつけられるので、外部からブラックホールそのものを見ることはできません。天体に限らず、太陽質量の10万倍以上の星間雲がそのまま収縮すれば重力崩壊します。銀河の中心核や球状星団の中心核では星が密集しているため、互いに作用する重力によってバランスが崩れ、巨大なブラックホールを形成する可能性もあります。
最初に発見したブラックホールははくちょう座X1番星
1970年、アメリカの科学者たちは強力はX線を放射する天体を突きとめるため、アフリカのケニアからウフルという名の人工衛星を打ち上げました。X線はエネルギーの高い光で、宇宙の激しい活動を表わすものですが、ウフルは数100個もX線源を発見しました。その多くは中性子星で、伴星のガスをはぎとって活動する星でした。
しかし、はくちょう座X1番星はちがいました。そのX線源と同じ位置に、太陽のおよそ30倍の重さの大きな熱い青い星があったのです。この星は、太陽の10倍の大きさの見えない天体に引っぱられており、これが多くの天文学者からブラックホールであると初めて認められました。
世界の科学者にショックを与えた「ホーキングの放射」理論
「ブラックホールは、明るく輝いたり、縮んだり、ときには爆発したりすることがある」。1974年、イギリスの科学者スティーブン・ホーキングのこの予言は、科学の世界に大きなショックを与えました。それまで、ブラックホールは宇宙の物質の究極的な吸込口であり、どんなものもそこから出ることはできないし、ガスや星を飲み込んで質量を増やし、大きくなることしかできないと思われていました。
ホーキングの理論は、一般相対性理論と量子力学を組み合わせて、さらに想像力を大きく飛躍させたものです。彼はブラックホールの周囲の重力場から、エネルギーが放射されることを発見しました。つまり、ブラックホールから質量とエネルギーがわき出ることもあるということです。この「ホーキングの放射」は、通常のブラックホールではごくわずかです。しかし、非常に小さなブラックホールはエネルギーを放射し、やがて大爆発を起こす確率が高いとされています。
宇宙にはまだまだ巨大なブラックホールがある
いまでは、ブラックホールが引き起こす宇宙現象は、大きく分けて次の5つがあります。それは、(1)見えない質量(ミッシングマス)、(2)X線など周囲の物質が落下する際の放射、(3)物質の吸い込み、(4)重力波源、(5)重力レンズです。
先ほどふれた質量が太陽の6倍もあるはくちょう座X-1やさそり座V861星、宇宙科学研究所(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA))の衛星が発見したきりん座X0331+53、大マゼラン星雲にあるLMC・X3などが大質量星のブラックホールの有力候補といわれています。また、銀河の中心核では、ハッブル宇宙望遠鏡などの観測によりアンドロメダ座のM32、おとめ座のM87などの巨大なブラックホールがあるとされ、M87については、太陽質量の26億倍という超大質量のものであるといわれています。また、国立天文台は1995年、銀河M106に太陽質量の3,600万倍の巨大ブラックホールを発見したと発表しています。
衛星あすかがガスを吸い込むブラックホールを初観測
ブラックホールは、光さえも吸い込む強力な重力場として知られていますが、実際に物質が吸い込まれるのを観測したことはありませんでした。1999年8月に日本の天文衛星「あすか」が、ガスがブラックホールに吸い込まれる様子を初めてとらえました。これは、地球から1億光年離れた銀河「NGC3516」の中心にある太陽の1,000万倍もの質量をもつブラックホールを観測したもので、銀河の出すX線を詳しく分析し、波長から速さを割り出したところ、ガスは時速1,040万kmでブラックホールに吸い込まれているとわかりました。その後、米オハイオ州立大の研究チームが、ブラックホールが強い重力によって周りのちりやガスを渦巻くように吸い込む様子の撮影に初成功しました。
これまでで最も低温、100万℃のブラックホール
1999年10月の観測では、X線天文衛星チャンドラが観測史上最も低温のブラックホールを発見しました。冷たいといっても温度は100万℃を超えますが、これまでは最低でも1,000万℃はあるとされてきたので、超低温といえます。見つかったのは、地球から約200万光年離れたアンドロメダ銀河で、太陽の3,000万倍もの質量があると考えられる超大型ブラックホールです。ここに吸い込まれるガスが摩擦で熱せられて出すX線をチャンドラがキャッチするのに成功。X線の強さからガスの温度は数100万℃とわかりました。なぜ温度が低いのか不明ですが、ブラックホールは大型になるほど温度が高いという理論を見直す必要が出てきました。
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