パイパー戦闘団の快進撃
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「バルジの戦い」の記事における「パイパー戦闘団の快進撃」の解説
詳細は「パイパー戦闘団の攻撃(イタリア語版)」を参照 南北に広く展開したドイツ軍の中で北部の侵攻を担当したのはヨーゼフ・ディートリヒSS大将が指揮する第6SS装甲軍であった。ヒトラーはヒトラー暗殺未遂事件以来、国防軍の高級将校を信頼しておらず、自分に忠誠を誓っている武装親衛隊への傾倒を強めており、ディートリヒにもっとも強力な戦力を与えて、作戦目的のアントワープに最も近距離の北部戦線の進撃を委ねていたが、そのなかでも最精鋭の第1SS装甲師団(ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー師団)の先鋒を担い、先頭に立ってミューズ川に向けて進撃したのがパイパー戦闘団(フィンランド語版)であった。戦闘団は4,800名の兵士と600両の車両から成りドイツ陸軍にあって最年少(29歳)の連隊長のヨアヒム・パイパー親衛隊中佐が率いていた。第1SS装甲師団は大規模な機械化部隊が進撃困難なアルデンヌの森林に対応するため、通常の編成とは異なる小規模な数個の戦闘団に分けられており、パイパー戦闘団が切り開いた突破口をマックス・ハンセン(イタリア語版)親衛隊大佐率いる装甲擲弾兵のハンセン戦闘団が押し広げて残敵掃討する作戦計画となっていた。 1944年12月16日、パイパー戦闘団はロースハイム(英語版)で燃料補給を受けた後、第12国民擲弾兵師団が切り開いたアメリカ軍の防衛線を突破し進撃するという計画であったが、ロースハイムに鉄道で輸送されるはずであった燃料は届いておらず、またロースハイムに通じる橋梁が落ちていたため、進路上は大渋滞となっていた。パイパーは「速やかに突進しろ、道にあるものは何でも構わないから踏みつぶせ」と命じ、自らが交通整理まで行ってどうにか夜7:30にロースハイムに到着した。補給する燃料はないので、アメリカ軍の燃料集積所から奪取することとし、パイパー戦闘団は、第3降下猟兵師団の第9降下猟兵連隊がランツェラートの戦い(英語版)により占領していたランツェラートに向かい、そこからビューリンゲンにあるアメリカ軍の燃料集積所を目指すことにした。 既に、当初の作戦計画から進撃は遅れていたため、パイパーは友軍の地雷原のある最短ルートでの進撃を命じ、5輌の戦車と5輌の軍用車両を友軍の地雷で失いながらも、16日のうちにはランツェラートに到着した。第9降下猟兵連隊は陸上戦の経験が皆無のドイツ空軍ホフマン大佐が指揮し、将兵も実戦経験がほとんどなかったため、日中の戦闘ではドイツ軍の1個降下猟兵連隊がアメリカ軍の1個小隊に苦戦するという拙戦を行っていた。パイパーはカフェに置かれた司令部を訪れると、周囲のアメリカ軍の状況を確認したが、連隊長以下誰も状況を把握しておらず偵察すらしていないことが判明した。呆れたパイパーはホフマンに1個大隊の提供を命じ、降下猟兵を戦車にタンクデサントさせてブフホルツ駅(ドイツ語版)に向けて進撃し、2個小隊のアメリカ軍歩兵を蹴散らして確保すると、休息を取ることもなく進撃を再開した。 12月17日の06:00頃、パイパー戦闘団はホンスフェルド(ドイツ語版)に到達したが、前線から退却してきたアメリカ軍第99歩兵師団(英語版)の将兵や車両であふれていた。パイパーは退却するアメリカ軍の隊列の最後尾から襲い掛かった。ホンスフェルドは、第99歩兵師団と第14騎兵連隊の一部が守っており、多数の対戦車砲も装備していたが、パイパー戦闘団の急襲に対応できずまともに抵抗もできなかった。パイパーはヒトラーより「人道主義的な抑制は無用」と命じられており、容赦のない戦闘を行った。ある建物に22人のアメリカ兵が立て籠もっていたが、パイパーは大部隊で取り囲むとティーガーⅡの88㎜砲を撃ち込ませ、建物が倒壊して生き残ったアメリカ兵が白旗を掲げて投降してくると、容赦なく全員を機銃掃射でなぎ倒している。容赦ないパイパーの攻撃でホンスフェルドのアメリカ軍は投降するか敗走し、15門の対戦車砲と50輌以上の車両が鹵獲された。パイパー戦闘団は08:00頃に目的のビューリンゲンのアメリカ軍の燃料集積所を奪取し、ここで5万ガロンの燃料を確保、自軍の車両に補給し、残りを鹵獲したトラックに積み込んで、再び西方へ進撃を開始した。ホンスフェルドから敗走したアメリカ軍はその後に進撃してきたハンセン戦闘団とポトー(フランス語版)で戦闘となり、M8装甲車など多数の装備を残して潰走している。
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