バブル金融投機経済化の防止 (生産性の上昇に等しい賃金上昇を伴わせる経済政策)
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「進歩的活用理論」の記事における「バブル金融投機経済化の防止 (生産性の上昇に等しい賃金上昇を伴わせる経済政策)」の解説
バトラは、「生産性と賃金上昇の相関」にバブル発生・崩壊のメカニズムがあると分析している。 まず、需要と供給が均衡するためには、(1)生産性の向上によって賃金が上昇するか、または、(2)賃金上昇が鈍い場合には、政府が借入金によって「人工的な購買力」による需要を創出し、その差を補う、の二つの方法しかない。これが「低賃金=需要不足=借入金経済」となり、政府や自治体の借入金はどんどん増加することになる。 この「借入金経済」に陥ることがバブルの危険信号で、労働者の購買力が低い段階で、経済が少し活況を呈してくると、企業の利益が急上昇する。企業収入が増えるが「賃金という支出」はすぐには増やすことが出来ないからである。すると、企業には資金は潤沢に集まるので、余剰資金が株式市場などにどんどん流れ込む。こうなると経済は、そこそこ活況で株にも買いが入るので、実体経済以上に株価が高騰しはじめる。これがバブルにつながり、いつかは破綻すると指摘している。 そこでバトラは「生産性に見合った賃金の上昇」がプラウト政策としても重要であると述べている。バトラは、かつて1950~1970年代前半までの日本経済はまさにこのようなプラウト的政策が採用されていたと述べ。この時期は、生産性の指標としての国内総生産(GDP)の伸びに対する税引き後の実質賃金の伸びが平均して70%程度に追いついていた。 しかし、1970年代後半~1993年までは国内総生産の伸びも鈍化する中で、税引き後の実質賃金の伸びもそれ以上にかなり鈍化し足踏み状態になっているという。この、税引き後の実質賃金の伸びに行くべき生産性(国内総生産)の伸びはどこに消えたかというと、この時期の租税負担率が約54%上昇したことによって消え、残りの約46%が資本や不動産の所有者に高い利潤と賃貸料という形を取って入ったとする。(労働者の賃金上昇に回るべき国の富の一部が、資本や不動産の所有者{資本家}に投機的投資活動を通じてその富が奪われたということを意味する) その原因として、この時期、以前のプラウト的政策はだんだんと放棄され、(特に日本のバブル経済期)は土地不動産への投機(土地転がし)は、株式の投機的運用を通して、ひとつ上の段階へとその激しさを増していき、銀行への規制は撤廃され、それが銀行のコストを押し上げ、ハイリスク・ハイリターン(危険性は高いがその見返りも高い)投機目的の貸し出しに、銀行自体手を染めざるをえなくなった。政府が金融機関に対するコントロールを緩めてしまった為に、実に多くの資本がこの時期に無駄になってしまったと言うのである。 現在の世界経済の状況は、かつての1929年の世界大恐慌に匹敵する、100年に一度の金融危機だと言われているが、「そもそも、商業銀行(普通銀行)と投資銀行(証券)業務が切り離されたのは、この世界大恐慌がきっかけだった。20世紀に入って産業と金融が発達してくる中で、金融資本は自分達の利益だけを考えた際限のない「投機」を繰り返して膨張し始め、銀行業務と証券業務が一体となることで「不正な投機的取引」が日常的に行われ、それがバブルとなって崩壊したのが1929年10月24日「暗黒の木曜日」以降の株式大暴落、世界大恐慌だった。その後、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は、金融システムの抜本的改革を行った。その手法は、投機的な証券取引を行う人々をマーケットから排除して、投機筋に代わって政府が金融の中心機能を担うというものである。それまで一体だった商業銀行と投資銀行を分離し、商業銀行は個人や企業への貸付中心の金融業務を中心に、投資銀行は証券業務を中心にと厳密に区分けした。そして証券取引法などを新たに整備し、証券取引委員会(SEC)を設立、投機的な取引が出来ないシステムを構築した。この時、厳しく分離された銀行業務と証券業務の垣根が、市場原理主義の台頭によって1970年代以降、次第に自由化され、最終的には、今回のサブプライム問題とそれに連鎖するあらゆる金融商品の矛盾の爆発によって、一気に世界の金融が崩壊した、というのが今日の状況だ」とバトラは指摘する。 プラウトは、このような金融投機経済の拡大膨張を否定する。それは、まっとうな労働による報酬としての賃金の減少とそれを供給する実体経済を縮小させ、賃金として供給されるべき富の一部が投機の資本として利用され、投機によって儲けた道徳性の無い富が拡大し、それに関わる資本家だけが裕福となって激しい貧富の差を生み、労働者が報われない道徳性の無い経済社会であるからである。
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