ナバラ王アンリと王妹マルグリットの結婚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/07 23:42 UTC 版)
「サン・バルテルミの虐殺」の記事における「ナバラ王アンリと王妹マルグリットの結婚」の解説
サン=ジェルマンの和議が成立すると母后カトリーヌは両宗派間の和平を固めるために、王女マルグリット・ド・ヴァロワとユグノー陣営の盟主アンリ・ド・ブルボンとの結婚を提案した。アンリ・ド・ブルボンの母ジャンヌ・ダルブレは二人の信仰の違いを理由に反対しており、カトリックの側でもこの結婚には反対意見が強く、教皇ピウス5世は結婚の承認を頑強に拒み、教皇特使はマルグリットは妾となり、生まれた子は私生児になるとカトリーヌを脅した。マルグリット自身にも問題があり、彼女はギーズ公アンリ(先に暗殺されたギーズ公フランソワの息子)とひそかに恋仲になっており、このことを知ったカトリーヌは激怒し、娘を寝室から連れて来させると、王とともに彼女を引っ叩き、寝間着を引き裂き、そして彼女の毛髪をひとつかみ引き抜いた。この件の為にギーズ家一門は、一時的に宮廷から退かされている。 カトリーヌはジャンヌ・ダルブレに宮廷に出仕するよう圧力をかけた。彼女はジャンヌの息子との面会を求め、決して危害を加えないと約束すると書き送った。これに対してジャンヌは「申し訳ありません。私はお手紙を読んで笑ってしまいました。なぜなら、貴女様は私がかつて感じたこともない恐怖を取り除いてくださると申されますので。私は、人々が言うように、貴女が小さな子供を食べてしまうと考えたことなどございません」と返書した。 1572年2月、結婚の交渉の為にジャンヌは宮廷に出仕するが、母后の態度への不満や宮廷の腐敗を非難する手紙を息子に書き送っている。 「 私は王様や、私を苛立たせる [me traite á la fourche] 母后様と自由にお話をすることはできません;... 彼らの主目的があなたを神と私から引き離すことであるとあなたは疑いなく悟っていることでしょう。 」 「 彼女(カトリーヌ)は事ごとに私を愚弄し、その後に私の言ったことと全く逆のことを人々に話すのです…彼女はすべてを否定して私の顔を笑います…彼女は私を屈辱的に扱い、私はグリゼルダ (Griselda) (民話上の忍耐強い女性)を越える忍耐力で辛うじて平静を保っています。 」 彼女はマルグリットをプロテスタントに改宗させようと試みたが失敗に終わった。 4月12日に結婚の契約が調印され、ブルボン枢機卿が司祭ではなく伯父として祝福を行い、花婿はミサには出席せず教会の外に留まる変則的な結婚式が取り決められた。その後、ジャンヌ・ダルブレは結婚式の準備のためにパリに滞在していたが、病に倒れ6月8日に死去してしまった。検視の結果は胸部の膿瘍と結核による死であったが、プロテスタントはカトリーヌが毒を仕込んだ手袋を使ってジャンヌ・ダルブレを暗殺したと非難した。ジャンヌ・ダルブレの死により、アンリ・ド・ブルボンがナバラ王位を継承した(ナバラ王エンリケ3世)。 7月、ナバラ王アンリが騎兵800を率いてパリに入城し、また結婚式に参列するため多数のユグノー貴族が地方からパリに集まって来た。だが、パリは強硬な反ユグノー派都市であり、熱烈なカトリックであるパリ市民はユグノー貴族たちの存在を許容できないと感じており、カトリック説教師たちに扇動されたパリ市民はフランス王族がプロテスタントと結婚することに恐怖していた。 この悪感情には凶作と重税への不満も混じり合っていた。食糧価格の値上がりと、王室結婚のための贅沢な装飾はパリ市民の反感を受けた。緊張が高まる中、カトリックの守護者と見なされていたギーズ公へのパリの民衆の期待が高まった。 プロテスタントとカトリックとの混合結婚式(mariage du mixtes)は8月18日にパリ市内のノートルダム聖堂で挙行された。取り決め通りにナバラ王は祝福のミサには出席せず、新婦のみが聖堂に入り、その間、新郎は外で待機する奇妙な形式で執り行われた。ブルボン枢機卿が結婚の同意をマルグリットに求めた際に彼女は沈黙して同意の言葉を発さず、立腹したシャルル9世が彼女のうなじを抑えて強引に同意の印とさせている。 挙式後の数日間、盛大な祝祭行事が行われたが、カトリックとプロテスタントとの関係は一層険悪化する。ギーズ家とライバル関係にあるパリ総督モンモランシー公フランソワ(英語版)は危険な情勢を察知してパリから退去してしまった。
※この「ナバラ王アンリと王妹マルグリットの結婚」の解説は、「サン・バルテルミの虐殺」の解説の一部です。
「ナバラ王アンリと王妹マルグリットの結婚」を含む「サン・バルテルミの虐殺」の記事については、「サン・バルテルミの虐殺」の概要を参照ください。
- ナバラ王アンリと王妹マルグリットの結婚のページへのリンク