デイシスとは? わかりやすく解説

デイシス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/09/19 23:06 UTC 版)

デイシスのイコン(シナイ山聖カタリナ修道院12世紀

デイシスギリシア語: δέησις, ロシア語: Деисус, 英語: Deisis)とは、ビザンティン美術および後の正教会芸術において、伝統的なイコン。尊厳あるハリストス(キリストのギリシャ語読み)、もしくは全能者ハリストスの姿を表している。

ハリストス(キリスト)は玉座に座り、聖書を持ち、傍らに生神女マリヤと前駆授洗イオアン洗礼者ヨハネ)が立った姿で描かれ、時には他の聖人天使も描かれる。マリヤとイオアン、および他の描かれた者達は、人間のために嘆願するため、ハリストスに向かって手を挙げている姿で描かれる。

ハリストスの右手は祝福する形となっており(十字の描き方#祝福時を参照)、左手には聖書がある。ハリストスが座っている玉座は最後の審判を想起させるものであり、左手の聖書は人々に神の教えに従って生きよとの神の教えを示している。右手の祝福は、教えを守りきれない人々に対する、ハリストスの憐れみを表している。デイシスの前で祈る際には、悔い改めの心をもち、マリヤとイオアンの転達(執り成し)を願い、罪の赦しを願うように祈る事が正教会で教えられている[1]

マリヤとイオアン、および他の者が描かれることは、四人の福音記者もしくはその象徴がキリストの周りに描かれる事が普通である、西方教会における「尊厳なるキリスト」像の構図と異なる点である。デイシスの構図は西方においてもみられるものであり、特にビザンティン文化の影響下にあったイタリアの一部や、ヨーロッパの残りの地域にもみられるものである。「デイシス」も「尊厳なるキリスト」像も、西方教会においては中世の間に徐々に使用されなくなっていった。

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脚注

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デイシス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 21:05 UTC 版)

ヘントの祭壇画」の記事における「デイシス」の解説

中央イエス・キリスト、その左右に聖母マリア洗礼者ヨハネ配する伝統的な構図をデイシスと呼び上段中央の三枚パネルはこのデイシスの構成となっている。玉座座した三名頭上には円光がある。左パネルには聖母マリア、右パネルには洗礼者ヨハネ描かれているが、中央パネル描かれているのがキリストなのかどうかは、研究者の間でも意見分かれている。聖職服を着用していることから「玉座キリスト」であるとする説、父なる神という説、父と子聖霊一つになった聖三位一体とする説などがある。美術史家エリザベト・ダネンスは、中央パネル人物像頭部着用している三連宝冠教皇冠だと長年わたって考えられてきたと主張している。 中央パネル人物は、鑑賞者に向かって恵み与えるように右手掲げて正面向いている。その背景銘文象徴物で埋めつくされており、着用するローブあるいはマントの裾部分には、『ヨハネの黙示録』からの引用文ギリシア語で「REX REGUM ET DOMINUS DOMINANTIUM (王の王、主の主)」と記されている。玉座かけられている金襴には、おそらくキリスト磔刑暗喩するペリカンブドウ装飾されている。ペリカンは雛を育てるときに自らの血を与えると当時信じられていたであり、キリストの血たる聖餐ワイン連想させるブドウとともに聖体秘蹟象徴となっている。足元に置かれ王冠左右ステップには2行の銘文がある。左側1行目には「VITA SINE MORTE IN CAPITE (頭上には永遠の命)」、右側1行目には「LUVENTUS SINE SENECTUTE IN FRONTE前に永遠の若さ)」、左側2行目には「GAUDIUM SINE MERORE A DEXTRIS (左には悲哀なき歓喜)」、右側2行目には「SECURITAS SINE TIMORE A SINISTRIS (右には恐怖なき平安)」と、それぞれ記されている。王冠には下段の「神の子羊」のパネルとを結ぶ役割与えられており、おそらくは下段押し寄せる群集が神に表する崇敬の念の象徴となっている。 左側マリアは緑の布で表装されガードルブック読んでいるが、ガードルブックマリア象徴するエンブレムとして使用されることはまずない。美術史家オットー・ペヒトはこのことについて、ファン・エイクロベルト・カンピンの『メロードの祭壇画』(1425年 - 1428年ごろ)の「受胎告知パネル参考にしたのではないかとしている。マリア宝冠は花と星で装飾されており、ダネンスは花嫁衣装のようだ指摘している。半円状になっているマリア玉座背もたれには「彼女は太陽よりも星々よりも美しく輝いている。彼女の輝き神の光と鏡に照らし出されている」という意味の銘文記されている。マリア同じくヨハネ自身エンブレムとは無関係な聖書を持つ姿で描かれている。『ヘントの祭壇画』には合計18冊の書物描かれている。ヨハネ自身エンブレムであるラクダ毛衣の上緑色マント羽織り、その視線中央パネル人物向けられている。中央の人物同じよう右手を上に掲げながら、神の子羊についてヨハネ語ったもっとも有名な言葉見よ神の子羊 (ECCE AGNUS DEI)」(『ヨハネによる福音書』1:29)を口にしている。人物描写には短縮遠近法使用されている。ヤンイタリア訪問経験があり、ルネサンス初期遠近法最初に導入したイタリア人芸術家であるドナテッロマサッチオ作品を目にしていたと考えられている。しかしながら美術史家スージー・ナッシュは、ヤンイタリア人芸術家先駆けて遠近法習得しており、ヤンドナテッロマサッチオの「作品がなくとも完璧に遠近法使用した絵画を描くことができた」とし、遠近法は「どちらか影響及ぼしたというよりは(イタリアフランドル両方で)同時に発生した表現技法だと主張している。

※この「デイシス」の解説は、「ヘントの祭壇画」の解説の一部です。
「デイシス」を含む「ヘントの祭壇画」の記事については、「ヘントの祭壇画」の概要を参照ください。

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