スマホ市場に割り込めず、フィーチャーフォン時代の終了とともに携帯市場から撤退(2011年)
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「ルネサスエレクトロニクス」の記事における「スマホ市場に割り込めず、フィーチャーフォン時代の終了とともに携帯市場から撤退(2011年)」の解説
2010年7月、ルネサスはノキアのワイヤレスモデム事業を買収した。2010年9月には、旧ルネサスのSH-Mobileに旧NECエレのEMMA-Mobileを組み込んだ汎用品向け(携帯型音楽プレーヤーやポータブルナビなど)の「R-Mobile A」と、SH-Mobileに旧ノキアのモデムを組み込んだ携帯電話(フィーチャーフォン)向けの「R-Mobile U」を発表し、従来の「SH-Mobile」シリーズに代わって2011年度よりこの2ライン体制で行くことを表明した(「R-Mobile A」と「R-Mobile U」は結局リリースされなかった)。また、2010年はスマホの普及率が1割を超えて「スマートフォン元年」との観測も出始めた時期であり、従来向け事業の強化のみならず伸長が著しいスマホ向けにも、ローコストなターンキープラットフォームを展開して欧州やアジア市場対応を強化することを表明した(ルネサスがフィーチャーフォン時代に行っていた、ルネサスが通信キャリアなどと共同開発したソリューションであるSH-Mobileプラットホームを採用すればどんなローカルメーカーでもすぐにマルチメディア対応の携帯電話を販売できるというシステムがスマホ時代でも通用すると想定されていた)。2010年当時のルネサスは、スマホやフィーチャーフォンなどのモバイル事業を車載と並ぶ中核事業と位置づけており、2010年12月に車載とモバイルを扱う「ルネサス モバイル」を設立した。2010年当時のルネサスにおいては、モバイルと車載で同じSHプロセッサを使うことが想定されていたことから同じ会社に統合されたが、スマホ向けではOSの動作にSH-4Aプロセッサはサポートされず、車載事業は2011年にルネサス本体に移された。 日本のドコモ向けの3G端末市場(ガラケー市場)では成功していたルネサスだが、海外市場ではそれほど成功しておらず、フィーチャーフォンの最盛期である2010年当時においても、世界の携帯電話業界におけるルネサス モバイルの市場シェアは3%だと見積もられていた。2010年当時、携帯電話用半導体業界では「Snapdragon」シリーズを展開するクアルコムが23%のシェアを占めており他を圧倒していたが、LTE市場はまだメーカーが乱立していて流動的だと見積もられており、特定の顧客から大型発注があれば情勢が変化する可能性もあった。そのため、ルネサス モバイルはLTE市場を端緒として、数年以内にクアルコムと肩を並べる見通しを立てた。 2011年、ルネサスはスマホ向けに進出するべく、スマホ・タブレット用のプロセッサの第1弾である「R-Mobile APE5R」を発表した。しかし、スマホでルネサス製SoCを採用する契約であった当時携帯電話最大手のノキアはスマホへの移行に失敗し、急速に経営が悪化したため、ルネサス製品を採用できなくなった。「R-Mobile APE5R」に「SP2531」などのモデムプラットフォームを組み合わせたモバイルプラットフォーム「MP5225」は、京セラの「HONEY BEE SoftBank 101K」や「DIGNO DUAL WX04K」などごくわずかの採用を得ただけで、ルネサスはスマホ市場に割り込めず、ルネサス モバイルは2012年末時点で450億円の赤字を計上した。2011年にはスマホの普及率が5割を超えるという急な時代の動きの中、2011年後半にスマホに初参入したほとんどの日本の携帯電話メーカーはクアルコムのSnapdragonを採用したが、それでもアップル内製のApple A5プロセッサを採用したiPhone 4Sに全くかなわず、大手通信業者が主導する「護送船団方式」のためにスマホ対応が遅れた日本の携帯メーカーにとどめを刺した。 2011年にはフィーチャーフォン用プロセッサ「SH-Mobile AG5」(1.2GHz)をリリース。2011年当時はスマホの普及が進む中、フィーチャーフォンの需要も根強いと考えるメーカーも存在し、「SH-Mobile AG5」はフィーチャーフォン向けプロセッサとして、スマホ用SoC並みの高速性を標榜していた。特に同プロセッサを採用したシャープ製「AQUOS SHOT SH-03D」(2011年発売)はタッチパネルを搭載するなどスマホ並みの高機能に加えて、日本人がこれまで慣れ親しんだドコモのサービス「iモード」も使える「全部入りケータイ」を標榜していたが、現実はスマホと言う時代の流れは抑えがたく、出遅れた国内メーカーも2011年以降はスマホ市場に参入し主軸を移したため、「SH-Mobile AG5」は「SH-Mobile」シリーズの最後の製品となった。 結局、2011年にルネサスは携帯電話の送信機などに使われるパワーアンプICの後工程を担当していた小諸工場(ルネサス東日本セミコンダクタ長野デバイス本部)とパワーアンプ事業を村田製作所に売却(現・小諸村田製作所)。「R-Mobile APE5R」に旧ノキアのベースバンドプロセッサを統合した次世代SoC「MP5232」(2012年第3四半期より量産予定)はリリースされることなく、2013年に残った資産をブロードコムに売却し、ルネサスは携帯事業から撤退した。
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